日本人研究者の英語による大学講義

NHK「宇宙をめぐる大冒険」などでもご活躍されている、素粒子物理学者の村山斉先生という方がいらっしゃいます。昨年に引き続きということですが、最近また、村山先生がカリフォルニア大学バークレー校でされているオンライン講義のアーカイブをYouTube上に公開されており、今日はその第1日目を視聴しました。
既に2日目の講義も公開されており、前回の流れからしても2日目以降は専門的な話となって行くのでしょうが、1日目は先ず、これからの講義の概要と学習する意義を述べ、また生徒たちとの顔合わせする軽い内容となっています。大学の授業のひとコマなので長いですが、もし良かったら是非、覗いてみてください。


何故この動画を見たのかと説明する時に、ひょっとしたら「村山先生のファンだから」とでも理由付けた方が正しいのかも知れませんが、私はもうかれこれ20年近く前、前々回にスーパーカミオカンデが水を抜いた時の解説で村山先生の存在を知って以来、何かと注目して拝見させていただいて来ました。ご研究されている素粒子物理学自体への興味は勿論ですが、その研究内容を広く一般に紹介される情熱と使命感に敬服しています。

ということで、元々村山斉先生が出演されている動画が有れば自分が把握してる限りは出来るだけ視聴するようにしていた、ということも有りますが、もう一つのモチベーションとして、私は「日本人の研究者が英語で講義する場合にどれくらいのコミュニケーションレベルで講義をされているのか」ということにも大へん興味が有って、両方の意味で今回のこの動画は好奇心を満たすものでした。

うちの子は変わってるので実際に大学へ進学するかどうかはその年齢になってみるまで分かりませんが、もし進学するのであれば当然英語で講義を受けられる大学に入学することになると思います。
英語圏の大学では私はアメリカは(少なくとも現状に於いては)安全面と社会モラル的にやや心配なのですが、聞くところによれば日本のいくつかの大学が近い将来を目標に一般教養の必要単位数を満たす講義を全て英語受講出来るようになる、というので、だったら学生生活的には非常に安全で息子の場合は日常会話レベルでは全く支障の無い日本の大学という選択肢はアリだなと思っていました。

ただ、最近は有名企業の社長さんなどで英語でのスピーチをされる日本人の方々が増えて来ていますが、申し訳ないけれど、よほど滅多に聞く機会が無いとでもいうのでなければ、正直なかなか聞くに堪えない方も多いのが現状です。仮に意味が通じて拍手喝采を受けていたとしても、あくまでもそれは英語が苦手な日本の偉い人が頑張ってコミカルさも出しつつ曲がりなりの英語を話したから、というケースがまま有ります。私自身そんなに英語が流暢なわけでもなく、勿論偉い人だからといって高いハードルを強いるつもりも無いですが、英語で話すことに意義が有るような場でもない限り下手な英語はパフォーマンスでしかないという苦々しさがあって、正直これが大学の講義もこんなレベルだったらかなりキツいぞ、という警戒心を持つ理由となっています。

そんな意味でも、日本人の研究者たちが完全に英語で講義されてる動画を見ることには強い興味が有って、もちろん個人差は大きいと思うから出来るだけたくさん見せていただき、将来の日本の大学に於ける英語講義のレベルを測る参考にしたいと常々思っていました。少し前にTEDというのが流行りましたが、エンターテイメントとして完成していても、英語による講義のコミュニケーション能力として完成してるかどうかはまた別問題です。「日本人が英語で講義する日本の大学」というのが、学費を払って若き日の何年間かを費やすのに値する環境なのかどうかを知りたい。

とは言え、村山斉先生自身の英語講義という意味ではこのバークレーでの講義以外にも既に何回か聞かせていただいており、とても信頼のおける、楽しい授業をされる方だなと思っています。日本語での講演も沢山聞かせていただいてるので、日本語と英語で差の無い、お人柄の出る講義だと感じています。自分の学生時代を思い出しても、むしろ楽しそうな授業だと思う。
ただ、村山先生が日本で教えてらっしゃるのは東北大学と東京大学らしいので、うちの子がそこに入れるのかというのはまた別の話だ。😬
更に言うなら、例えば今は入学してもアメリカにいらっしゃる村山先生の講義はそれこそオンラインだろうし(笑)、なんだかだんだんと有名大学に入る意味ってのも分からなくなって来ましたね。

他にも、最近では経済学者の成田悠輔さんが参加されていた英語での発表動画も拝見しました。リンク先が分からなくなってしまい、ここに貼れずすみません。🙇🏻その動画に参加されてた先生方はほとんどが日本人だったのですが、英語で発表された方が何人かいらっしゃってお一人はかなりきつかったです。成田先生は普段からイェール大学で教えてらっしゃるということで、おそらくいつもの講義ではもっと滑らかなのではないかと感じましたが、その動画では少し前の方に引きずられるような形で開始直後は辿々としてらっしゃいました。英語の訛りって感染りますよね。私も香港人ママ友とずーっと英語で話した後で、ふとイギリス人と英語で話すとき香港英語訛りになっています。
また長時間の講義である以上、英語力だけでなく、話の内容がどれほど興味持って聞ける内容であるか、また話し手の魅力やコミュニケーション能力(オンラインの場合はアプリを使いこなせる技術も)、発声の癖や声の質なども、全てが総合的に影響してくるので、例えば英語力がそこまでなくても授業はよく分かった、ということは配信が主流になるこれからは特に有りえるのかなとも思います。

そんな興味で聞いてみて、村山先生の講義は勿論満点以上なのですが、さて私自身の問題として、これ理解できてるの?という話。

結論からいうとあまり理解できてないのですが、何となく何を話してるか分かっている程度です。😅
上に書いたように、モチベーションからして邪道なので講義の内容自体を理解することにゴールを置く必要は無いのかも知れないですが、これまで息子に英語で教えるために科学用語を辞書で引き、病院に連れて行ったり学校の先生と話す為にあらかじめ英作文をして来た経験から、今は多少英語が出来るようになったのと同じで、こうやって物理学の講義を繰り返し聞いて、本を読んでればそのうち分かるようになるかも知れないと薄く期待しています。元々勉強が嫌いで物事はそのようにじわっと学んで来たので、どうしても分かってやろうという気持ちが無い。
そう言えば、村山斉先生の講義を理解したいという理由でヨビノリたくみさんという方の動画も時々見ています。沢山あり過ぎて適当なものが見つかりませんが、時々高校生向け又は中学生向け、或いは非理系向けなどで、基礎知識や学力の無い人でも理解できるように物理法則の解説をしてくれる回があります。
下記はいつもの予備校ノリ解説ではないのですが、最近見た中でとても面白かったので貼っておきます。(後編もあるのでご興味有りましたら探してみて下さい)

そう言えば上に貼った村山先生の動画でも、これまで習って来た物理学と矛盾する物理学、ということについて話されてましたね。
これこれこうだという前提だと・・ということを繰り返して理論展開し、実際に観測すると証明できたり出来なかったりするのが楽しい。
宇宙のゲームルールを解き明かしてるようで、大変にワクワクする学問です。

ほんとYouTubeは有り難いですね。
パンデミックで私が得たものの中で最大の賜物かも知れません。