人生の分岐点はどこにあるかわからない

先日開催されたコパ・アメリカ(南米選手権)はアルゼンチンが優勝した。
メッシにとっては悲願の代表初タイトルであった。

個人的にはGKのエミリアーノ・マルティネスの活躍が嬉しい。
準決勝のコロンビアとのPK戦では3本止めるなど優勝に貢献した。
数年前にはここ1年近くの活躍やアルゼンチン代表選出ならびに正GKの座を
掴みコパ・アメリカで優勝することも予想できた人はほとんどいなかった
だろう。

悩んだ末のアーセナル加入

2009年のU-17南米選手権での活躍によりアーセナルのユースに加入。
後日のインタビューで、悩みに悩んだが、貧しい家族を支えるために
欧州挑戦を選択したと話している。
また、欧州に行って手ぶらで帰るような選手にはなりたくない。
何も成し遂げていないうちは母国に帰らないと母親に言った。
当時17歳英語も話すことができず苦労がたくさんあったようだ。

2012年に当時リーグ2(4部相当)のオックスフォード・ユナイテッドへ
初レンタル移籍も昇格を逃したためアーセナルに復帰。

しかし、その後アーセナルではほとんど出番がなく毎年のように
レンタル移籍を繰り返し計6クラブへ借り出された。
アーセナルには2020年まで約10年間所属した。

分岐点となった2020/6/20 第30節ブライトン戦

前年の2018-19シーズンもレディングへのレンタル移籍していたが
チェフの引退により復帰。ベルント・レノに次ぐ第2GKとして
ベンチを温める日々が続いた。
そんな中、分岐点となる試合が訪れる。2020/6/20 第30節ブライトン戦だ。
前半終了間際に相手選手のモペイにレノが壊された。温厚なレノも激怒する
ほどショッキングな出来事であった。しかもモペイには処分なし。
プレー続行不可となりマルティネスに出番が回ってきた。

その試合は終了間際に失点をして敗北。レノの長期離脱も濃厚。
チーム状況もそこまで良くなく、レノの活躍により保っていた部分もあった
ため一気に窮地に追い込まれた。
また、その当時はマルティネスを認識はしていたもののその後の活躍を予想するのは難しかった。(ほとんどプレーをみたことがない)

レギュラーとしてプレー~FA杯優勝

しかし、良い意味で予想を裏切られた。レノの代わりというのには
補って余りあるプレーを披露。残りの試合を全て出場し4勝2分2敗と結果も
残した。
足元の技術が高く後ろから繋ぐ志向Footballを目指すアルテタ監督の戦術との相性がよく長短のパスを使ってビルドアップでも役割を果たした。
レンタル移籍が続くという悔しい思いや苦労を重ねながらもそれに耐え
ながら成長をしていたのだと思う。
来るべきタイミングに備え、日々の努力や一つ一つの積み重ねが形として
報われたのがFA杯優勝であった。彼の活躍無しでは優勝は難しかった。
インタビューでは涙ながら「家族については言葉が出ない……」と話し
多くの人が胸を打たれた。
インタビュー

アストン・ヴィラ移籍 :全試合出場

大活躍をしたものの負傷していたレノが戻ってくるため、出場機会の
保障をすることがチーム状況として難しかった。
クラブとしては慰留したが、更なる飛躍を求めてアストン・ヴィラに移籍。
移籍金は2000万ポンド(約27億)となり、アルゼンチン選手史上最も高価なGKになった。アーセナルでの最終戦は開幕前のコミュニティシールド リヴァプール戦。PK戦で勝利。
アストン・ヴィラでは今シーズン全試合出場で大活躍、昨年の活躍が偶然で
ないことを証明。

以下、移籍に際してマルティネスのコメント。

「やっとNo.1になることができた。だけど、準備はできていたんだ。そこにたどり着くまでに10年かかったけどね。ゴールキーパーとして毎日トレーニングしていても、誰も人生の物語のための準備はできないんだ」
「4カ月間も全くプレーできなければ、このまま続けられるのか、精神的に参ってしまうのか自問自答することもある。何年もかけてもっとたくさんのことをすることができたと思うけどようやく世界が僕を見つけてくれたよ」
「自分がここまでやってきたことを誇りに思っていたんだ。アーセナルにやってきたとき、僕の前には他に9人のキーパーがいたんだ。だから、毎年自分の価値を証明し続ける必要があった。でも最後は、No.1として去ることができた。僕のアーセナルでの物語はそこで終わりを迎えたんだ」
「アーセナルのみんなを愛しているし、感謝しているよ」

アルゼンチン代表 コパ・アメリカ優勝

そしてシーズン後に開催されたコパ・アメリカに代表選出され
レギュラーして活躍、優勝に貢献した。
なお、招集はされていたがアルゼンチン代表デビューはアストン・ヴィラ
移籍後である。

これからの活躍も期待したい

アカデミー出身ではあるもののアーセナルでのプレミアでの出場機会は
10年近くでたった「15」である。
ここまで出場機会が機会が少ないにも関わらずサポーターの記憶に残って
いる選手はほとんどいないと思う。

まだ28歳と若くGKなら後10年ぐらいは活躍が期待できる。
この活躍を続けていればもしかするとビッグクラブにチャレンジできる
機会がやってくるかもしれない。

多くの苦労を重ねながら腐ることなく努力を続けた結果ようやく花が開き
ワールドクラスのGKに近づきつつあるマルティネス。

きっかけはどこにあるかわからないから面白いが、そのチャンスを掴み
ものにしたマルティネスが素晴らしい。
これからの活躍も楽しみにしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?