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『シックス・センス』 20年前の傑作映画、今観ても面白いですか? 【映画感想文】

  Yahoo!ニュースにハーレイ・ジョエル・オスメントの記事が載っていました。

  アメドラが好きな私にとって、ハーレイ君は、今もドラマで時々見かける俳優さんです。雰囲気は変わったけど、演技のうまさは変わらないなーと思って応援しています。
 天才子役といえば、ハーレイとフレディ・ハイモア(『チャーリーとチョコレート工場』など)の名前が浮かんでくるほど、『シックス・センス』での演技は印象的でした。

『シックス・センス』とは?
 
ハーレイとブルース・ウィリスがダブル主演を務めた『シックス・センス』は、1999年に公開されたアメリカ映画です。死者が見えてしまう少年(ハーレイ)と彼を癒そうとする精神科医師(ブルース)の交流が描かれており、Filmarksではミステリー&ホラー映画に分類されています(ホラーといっても、怖いシーンはありません)。タイトルのシックス・センスは、少年の持つ第六感を意味します。
 99年は洋画の当たり年で、『アルマゲドン』『スターウォーズ エピソード1』『マトリックス』に次ぐ興行収入でした(5位が邦画のポケモンです)。私の周りでも映画館やレンタルビデオで鑑賞済みの人が多く、同窓会の時にこの映画の話で盛り上がったのを覚えています。全部観ても意味がわからず、「結局、どういう映画だったの?」という反応を示す人がいて、「鈍いなー」と笑われていました。といっても、私も含めて、観ている最中に話の行方を予想できた人は皆無だったのですが。
 アカデミー賞でも作品賞・監督賞・助演男優賞(ハーレイ)・助演女優賞(ハーレイの母親を演じたトニ・コレット)にノミネートされているので、かなりの衝撃作だったのだと思います。

今観ても面白い?
 
つまり、公開当時は、観客の人気も高く、批評家受けも良い作品だったのですが、「今の若い人が観ても面白いのかな?」とふと気になりました。それで、身近にいる映画好きの若い人に訊いてみたのですが、「観たことないです」との答えでした。でも、IMDbの人気映画ランキングで141位だと知って、興味がわいたとのこと。同じ140位台には、黒澤明監督の『用心棒』『羅生門』、ラッセル・クロウ主演『ビューティフル・マインド』などがあったので、『シックス・センス』も傑作に違いないと感じたそうです。
 でも、「今度観てみようかな。面白いんですよね?」と訊き返された私は、即答できなかったのです。

古典の宿命
 
「あれは難解な映画だよ」と聞いて身構えて観たら、そうでもなくて拍子抜けした経験、ありませんか? 『シックス・センス』と同じ頃に流行った『マトリックス』シリーズも、当時、非常に難解な作品だと見なされていました。私自身、特に二作目と三作目は理解できない部分が多くて、内容について友人達と議論したものです。でも、二十年経った今、『マトリックス』シリーズを難解だと感じる人はあまりいないでしょう。現実の世界でも、映画・ゲーム・小説などのフィクションの世界でも、『マトリックス』風の世界観が当たり前になったからです。
 『シックス・センス』は難解な映画ではありませんが、エッジの効いたアイデアがベースになっています。『マトリックス』と同じように、この二十年間で似たテイストの作品が増えたので、今観ると、大したエッジではないように感じるかもしれません。
 ただ、これは、古典とはそういうものなのだと思って鑑賞すればいいだけなのかもしれません。小説でも映画でも、有名な古典作品だからといって崇め奉る必要はないけれど、時代に先んじていた作品には独特の魅力がある気がします。

ブルース・ウィリスの映画 
 『シックス・センス』には、もう一つ、今の若い人に自信を持って推薦することができない理由があります。それは、この映画がブルース・ウィリスあっての作品だからです。アカデミー賞の候補になったのはハーレイとトニ・コレットですが、ブルースなしでは成り立たない作品だったと思います。
 当時、ブルース・ウィリスは日本でも人気の高い俳優でした。CMにもいくつか出ていましたし、主演作の『ダイ・ハード』シリーズは、地上波でよく放映されていました。洋画にあまり興味がない人でも知っている俳優だったのです。
 『ダイ・ハード』で演じたジョン・マクレーン刑事は、腕が立ち、頭の回転も速い優秀な刑事で、人情味あふれる優しさも兼ね備えています。一方では、感情的になったり、馬鹿なことをやらかしたり。同時期に人気があったケビン・コスナーやトム・ハンクスが優等生キャラを演じることが多かったのに対して、オフビートな言動が魅力のキャラクターでした。あまりにはまり役だったので、ブルース・ウィリス=マクレーンというイメージが出来上がっていたほどです。
 役柄が固定されるのを嫌がる俳優さんもいますが、ブルースはむしろそれを逆手に取って、マクレーンの雰囲気のまま演じられる役を選んでいた気がします。『12モンキーズ』『フィフス・エレメント』『アルマゲドン』等の作品でも、欠点はあるけれど、いざという時には誰よりも頼りになる男を演じています。
 タランティーノ監督の傑作『パルプ・フィクション』でも、ブルースはマクレーンに似た雰囲気のボクサーを演じています。監督がブルースにあてがきしただけあって、忘れがたいキャラクターです。というか、マクレーンのイメージがあるので、短い登場時間なのに、ボクサーがやってのける高潔な行為に感情移入できました。普通なら、「ちょっとお人好しすぎるのでは?」と思ってしまうことなのですが、ブルースならこうするだろうと納得してしまうのです。
 『シックス・センス』も、ブルース・ウィリス=マクレーン=心優しく、何があってもくじけない有能な男というイメージを利用した映画なのです。
 でも、今の若い人は、ブルース・ウィリスの名前ぐらいは知っているかもしれませんが、彼にまつわるイメージまでは知らないでしょう。そのイメージ抜きで『シックス・センス』を観たら、割とすぐ話の行方に気付いて‥‥楽しめないかもしれません。

 映画って、そんなものなのかもしれませんが。名作だと思っていても、公開当時の空気を知らなければ、何かが抜け落ちてしまっているのかもしれません。
 だからこそ、ネットの時代になって、公開当時に観客が抱いた感想を読めるようになったのは、素晴らしいことだと思いました。古い映画レビューを読んで、その映画がかつて纏っていたオーラを想像してみる。そんな楽しみ方ができるようになったのですから。


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