旅は非日常 だから旅館ってのは・・・

 毎度、恣意です。根拠も何もない恣意です。

旅行は非日常

 旅行は、毎日のできるものではなくって、まあ年に数回、好きな人でも月に数回。
 つまり、旅行中は『非日常』。
 だから、なんだかウキウキするし、見る物にも新鮮さを感じる。

非日常が冷める瞬間

 旅先で、電話やメールが追いかけてくると日常が追いつく。
 仕事の連絡、旅以外の話題での家族からの連絡が、それまでの『旅行する主人公』に、日常の自分が追いついて来て一気に気分が萎えてしまう。
 よほどの仕事好きか、自分は仕事であてにされているという誇大妄想狂(※)は別だろうが、私は一気に日常という下界に引き落とされる。

※実力も無いのに、毎日出社する必要も無いのに、出社する管理職や重役に多い症状。自分が居ないと仕事は回らないと誤解している。自分が仕事から離れても部下がいつも通り、いやいつも以上に仕事をこなせることを認めたがらない。部下を出社させての早朝会議や、御前会議が大好き。リモートワークを敵視し部下を見回すのが最大の楽しみの人種。

連絡以外の『日常への引き降ろし』とは?

 『日常からの連絡』以外に、日常に引き落とされるのは、『旅行者向けの者に日常が絡んでいる』状態。
 例えば、某釜飯の巨大食堂にある、片隅の修理されていない壁とか、トイレの汚れ。
 千葉にあっても東京を名乗る夢の国で、トイレが汚れているとか、トゥーンタウンのような意図的な壁の穴ではなく、明らかにメンテナンス不足のための破損や故障。
 それと、あくまでも個人的と『再度念を押す』が、夢の国の関西の雄で、周囲を見回すと垣間見える高速道路や高層ビル。
 しかし、これらは『旅行中だ気が張っている時に』に、ふと気付くものだから、何とか『旅行という非日常』に浮上することができる。

私にとっての『非日常の最大の敵』

 日常に引きずり降ろされ、なかなか浮かび上がれないのが、宿泊先での汚れや修理されていない襖・壁・床…である。
 トイレはともかく、かび臭い部屋付きの浴室。(トイレは論外)
 床の間に回り込んでみると目に付く柱の傷。
 床の間に限らず、色あせた、あるいは傷が見える柱・壁・ふすま・障子の桟、その他モロモロ。
 廊下の傷。
 大浴場の隅の黒カビ。

 ホテルであろうが旅館であろうが民泊であろうが、泊まるというのは息継ぎで気が緩む時間である。
 その時に目に入る柱の傷は強烈な『日常への引き下ろし兵器』である。

 贅沢を言うと、設備以外に、オーナーから従業員までの何気ない『日常の会話と動作』も、一瞬で気が冷める兵器である。
 私にとっては、宿泊先も夢の国であり、そこでサービスしてくれる人は全て『非日常に住む妖精(みたいな人?存在?)』である。
 それが、息子の成績や経営状態の話など、聞こえていることに気づかずに行われる会話や動作で、妖精さんから一瞬で人に戻ってしまう。

設備のメンテナンスが宿の品格をきめる

 客引きか、特徴を作るためなのか、黄金の浴槽や大規模なスパエリア、豪華なロビーに金のかかった客室が、パンフレットには列記されている。
 しかし、丁寧に雑巾掛けが続けられて現れる廊下や柱の艶。
 日々の掃除で磨き抜かれた岩風呂の感触やヒノキ風呂の艶。

 豪華に作り上げられた設備が感銘を与えるのは、せいぜい一年間だろう。
 もし、丁寧な掃除やメンテナンスがされていなければ、日常のルーティンから見逃される隅の汚れや、毎日見ている従業員には逆に気付けない塗装の衰えと細かい傷がのさばり始める。

掃除を含むメンテナンスは、経営者の姿勢を表す

 客引きのための営業に注力し、団体客勧誘に走るのも営業である。
 豪華な風呂や食事をアピールしてパンフレットを飾るのも営業である。
 業界の水準とは違う高額な料金とそれに釣り合う設備・サービスで味わえる『セレブ気分を売り物にする』のも営業である。
 しかし、掃除を含むメンテナンスの違い、オーナー・管理職・従業員教育の違いが生み出す『くすみ』は、二年目三年目から表面化し始める。
 そして、一年しか営業しないホテルや旅館はない。
 豪華な浴場への投資の回収は、一年二年では到底できない。
 だから、メンテや教育に注力していない『その場限りの頑張り』は、宿泊客の目につき、日常に引きずりおろす。

日常に引きずり降ろされた宿にはリピートしない

 『非日常の高揚感から日常に引きずりおろされた客』がリピーターになるはずがない
 リピーターが確保できないということは、一見さん(いちげんさん)だけで、あるいは団体客だけで営業することを意味する。
 団体旅行はいつまで続くのだろうか?
 一見さんが、つまり初めて泊まる客はいつまで続くのだろうか?

柱の傷が宿の寿命をきめる

 極論である。
 柱の傷、オーナーの心構え、管理職から従業員までの『妖精さんとしての接客教育』が旅館やホテル、ひいては、旅行業界全ての寿命を決める。
 なお、妖精さんといっても、見栄えのするエルフ以外に、人目に付かない所で動くドワーフや目立たないブラウニーなど、多種に及ぶ。
 接客だけではなく、経理担当や支配人・管理職・板場・掃除担当というドワーフやブラウニー的な人が対象となる。

 そして、宿の寿命を決める最大の要素は、オーナー、あるいは、女将、つまり実質的なCEOとしてのトップである。(名前だけの飾りの社長はどうでもよい)
 雇われCEOの場合は、オーナーの姿勢が問われる。
 雇われ社長は所詮は被雇用者であり、宿の経営破綻で一番痛いのはオーナーだからである。

宿の寿命に一番影響されるトップ
オーナーやオーナー社長やオーナー女将
の心がけが経営を左右し
『妖精さん』教育が決まり
設備の『くすみ具合』が決まる

 そして、

くすみ具合が宿の寿命を決める

 くすんでいる宿は、客を日常に引き下ろし、リピーターを減らし・・・

bye

ありがとー