デイゴの花のように根の力が強く沖縄で続く助け合いコミュニティ文化
こんにちは、180°(ワンエイティー)の上仲です。
沖縄というと青い海、温暖な気候、豊かな食材、世界一の長寿国、フレンドリーな人々など連想することかと思います。最近ではテレワークの時代が後押ししてか、場所を問わずして働ける人は癒しを求め沖縄県へ長期滞在(ワーケーション)したり、移住する人々も増えてきました。
そんな沖縄県には琉球時代から古く根付く相互扶助の文化があります。これは模合(もあい)と呼ばれるもので、気が通う友人同士などで毎月1回だけ一定金額のお金を集めて、それを親となる友人の1人が毎月順番にもらえるという仕組みです。
今回は、この身近な人々を大切に思い合い応援するコミュニティ・ファンドの仕組み、模合(もあい)についてご紹介します。
なぜ、模合が生まれたのか?
模合とは沖縄県出身の人々からすると誰もが身近に知る存在で、古くから続く助け合い文化の一つなのです。月に一度、飲み会が行われることが恒例行事のようです。
内地(本島)では「無尽(むじん)」や「頼母子講(たのもしこう)」と呼ばれる制度が昔もあったそうですが、横の人間関係の繋りが薄くなってしまった現代社会では殆ど見受けられなくなりました。
模合の歴史は古く琉球王朝の尚敬王(1713年 - 1751年)
始まった時代は古いもので、当時はお金ではなく農作物を集めて皆んなで贈りあったり共有していたようです。今に続くお金を集める風習が盛んに行われるようになったのは、戦後間もないとき。
アメリカ軍統治下で経済再建が進められるなか、民間に対しては資金が回らない状態が続き復興の足かせとなっていました。そこで商売を営んでいて人たちの間で事業資金を集めることが、模合のきっかけとなりました。
だいたいの相場
おおよそ1人あたり5,000円〜30,000円を毎月出し合い、その月の「親」となる人が順番にお金を受け取ります。(落札式 / 積み立て式などいくつか方法あり)お金の集め方は直接飲み会で行われる場合や、振り込みのパターンがあるそうです。模合専用の帳簿があったり、スマートフォンアプリで管理できるものもリリースされています。
調査によると模合の全体加入率は53.9%であり、ほぼ半数以上の方々がどこかのコミュニティへ属している結果となっています。加入動機としては親睦が約半分以上であり、金銭面以上に人とのコミュニティに価値を見出してることがわかります。
目的はお金ではなくコミュニティの永続
既にお気付きの方は勘付いているように、理論上、自分の銀行口座に毎月一定額の積み立てを行えば結果的には同じ金額がプールされます。では一体なぜ、皆んなでお金を出し合うのでしょうか?
金銭的な大きなメリットを上げるとすると、まとまった大きなお金が一時的に入ってくることは事実です。冠婚葬祭や急な出費があった際には『模合があって助かった』と言った声も聞きます。また利子がそもそもつかないので多額の金額になればなるほど効果があり、担保も保証人も必要としないし、面倒な銀行の融資審査みたいに落ちる心配なども無いのです。
ただし根本的に模合をする本当の意味とは、月に1回、あるいは2~3ヶ月に1回でも模合をすることで仲の良い友人同士が集まり、顔を合わせて近況を報告し合う交流(コミュニケーション)をすることが一番の目的なのです。
沖縄県民が長寿としてあるべき姿には食べ物や気候の他に、模合がもたらす信頼し合える仲間との繋がりが大きいのではと言われています。事実、模合を楽しんでいる人とそうでない人とでは、 模合を楽しんでいる人こそ健康であるという医学的な調査報告も出ています。
模合がもたらす好循環
自立型組織(オートノミー・ベース)
模合のはじめ方は「座元」と呼ばれるコミュニティリーダーが発端となり、参加するメンバーを集めます。その後、毎月の掛け金や後ほどトラブルにいならないように話し合いの上でルールを決めて独自のコミュニティ規則を作っていきます。
これは銀行など法的・制度的に明文化されたのものではなく、参加者による自治に委ねられる参加型の自律的組織:オートノミーと言えます。
日本オートノミー協会によるところ、個人のある領域で高まった自律性はストレスを低減し、幸福感を高め、自律性と幸福感との間で好循環が形成されて長期に維持されると言われます。それらが健康的な行動の強化と相まって効果的な疾病予防が可能となるとも考えられています。
地産地消(Locavesting=Local Investing)
多くの模合は飲み会が開催されることが多く、地元の居酒屋で開催されることが多いです。これは地域的なコミュニティ内での資金の循環の側面があり、言い換えると資金の地産地消と言えます。
海外では「Locavesting」という造語が生まれ、地域創生、共創社会を実現するものとして一昔前から注目されていたり、「MOAI」と英訳されてその仕組みを紹介する記事などもあります。
不特定多数の人々からインターネット上で資金を募るクラウドファンディングに対して、模合はコミュニティファンディングとも考えられ、地域に根差した資金の使い道、そして何より顔が見える人々との相互扶助の関係を持続的に続く取り組みとして、日本が本来持っていたエコシステムが今、改めて注目されき始めています。
まとめ
お金以上に顔を見合えるコミュニティの存在、地域愛への意欲が何より価値があると思いました。また前回の記事「理想通貨」で紹介した沖縄県宮古島は、他のどの地域より模合への取り組みが積極的に行われているそうです。
斎藤幸平さんの人新生の資本論では市民主導の経済『コミュニズム』を推薦していたり、eumo代表の新井和宏さんは『共感資本主義』で気持ちが循環する通貨を作っていたりなど、ポスト資本主義に向けての議論の中では常に”コミュニティ”のワードがあります。
便利な世の中が一巡して、自然への敬意や、本来の人間らしさを皆が求める時代になってきたなと改めて思いました。
【著者プロフィール】
180株式会社(ワンエイティー)代表取締役 上仲 昌吾
Twitter @ShogoUenaka
アメリカ・カリフォルニア州・サンディエゴで4年間過ごし、あらゆる価値観に触れてきました。現在ソーシャルビジネス事業化に向け構想中です。ソーシャルグッド、サーキュラーエコノミー、ベネフィットコーポレーションを実践されている方、是非とも意見交換をさせていただければ幸いです。