見出し画像

メイローラーメン

僕は久しぶりに一人旅をしている。

一人旅は何処に行くか何をするか、全て自分のタイミングで決められて楽だ。

ここはまだ来たことのない未開の地。

通りすがりの白髪で白髭をなびかせているお爺さんに聞いてみた。

「ここのおすすめスポットはどこですか?」

「そうじゃな。特にここに行った方がいいぞという場所はない。だが逆に、ここだけはやめとけ、という場所ならある。」

「なんていう場所ですか?」

「メイローラーメンというラーメン屋さんじゃ。」

「メイローラーメン、、。分かりました。ちなみに何故そこは行かない方がいいのですか?」

「それは行ってみてのお楽しみじゃ。」

そう言い残してお爺さんは去っていった。

なるほど。メイローラーメン。スマホにメモを残す。

この一人旅は特に計画性がないので、こうして人に聞きながら次の目的地を決めていく。

はて、ぜひおすすめのスポットが聞きたいのだが教えてくれる人はいないのだろうか。

そう考えているところで、眼鏡をかけた一つ結びの仕事の出来そうな女性がスタスタと歩いていたので話しかけた。

「こんにちは!一人旅をしているのですが、ここでのおすすめスポットってありますか?」

「こんにちは。んー、おすすめね。行かない方がいいおすすめはあるわよ。」

「それはどこですか?」

「メイローラーメンよ。」

「メイローラーメン。先ほど話をお聞きした人もそこには行かない方がいいと言っていました。一体何故行かない方がいいのですか?」

「それは、、、。行ってみたら分かるわよ。」

そう言い残して女性は去っていった。

それから色々な人に声を掛け、おすすめを聞くも全員、「メイローラーメンには行かない方がいい。」ということを言っていた。

そこまで行かない方がいいと言われると、何故行かない方がいいのか気になるのが人間というものである。

早速、マップアプリを起動させ、メイローラーメンへ向かう。

行かない方がいいと言われた割には、普通のラーメン屋の姿形をしている。

ガラガラとドアを開けて店に入る。

そこには食券販売機がポツンと佇んでいる。

僕は塩ラーメンが好きなので塩ラーメンボタンを押した。

すると食券が発券された。

食券を取ると、食券販売機の横の扉がひとりでに開いた。

その扉の上には「スタート」と書かれていた。

店員が全然いない不信感さはあったが、興味心からその扉を潜った。

道は何本にも分かれていた。

「メイローラーメン」のメイローとは迷路のことであった。なんて単純なネーミングなのだろう。

そしてこの迷路、壮大である。

このラーメン屋の外観からして、そこまで広さはないと思っていたが、一度この迷路に入って体感してみると、どこにこんなスペースがあったのかと不思議になるくらいの広さである。

何度もスタート地点に戻りながら、なんとか3時間掛けて「ゴール」という扉にたどり着くことができた。

その扉を潜ると一つの席と、ラーメンが一杯置かれていた。

お腹もぺこぺこだったので、すぐさまズルズルと胃の中に押し込めた。

そのラーメンは、こんなに伸びるのかというくらいビヨビヨに伸びており、温度も冷たかった。

こんなにまずいラーメン食べたことない。

みんなが言っていた、「行かない方がいい」というのはこういうことだったのか。

それでも空腹が勝ち、なんとか全て食べ切った。

「ご馳走様でした。」

さて、この店を出て次の目的地を決めよう。

席を立ち、「出口」と書かれた扉を潜った。

そこには壮大な迷路が広がっていた。

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?