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君がくれた、わたし色

これはわたしと恋人との話。

お付き合いを始めて、二か月が経った頃。
彼はわたしに、花束をプレゼントしてくれた。

彼が手渡してくれた花束の中で、彼がわたしのイメージで選んでくれたという明るい色の花々が、楽しそうに、満面の笑みで笑っていた。

春を思う存分に満喫して、夏の訪れをワクワクと待っているような、そんな雰囲気が感じられて、とても晴れやかな気分になった。

けれども、どこかでこんな話を聞いたことがある。
「花は枯れてしまうから」「なくなってしまうものだから」
プレゼントで貰ったところで、大して嬉しくないという。

でもわたしは、物質として残ることだけに意味があるとは思わないから、この考えに共感ができなかった。

花には特有の儚さと、憂いと、美しさが混在している。

だからこそ、好きなのであって。そこが、いいのであって。


ともかく。

わたしは実際に、恋人に花束をプレゼントされるというのが、人生で初めての経験だった。

だから、待ち合わせで彼が少々大きな袋を持っていたのに気づいたとき、中身は何だろうと思ったものの、まさかこんなにも可愛らしい花束を持ってきてくれているなんて。

わたしは本当にうれしくて、幸せな気持ちになったのだ。


何よりも、彼がお花屋さんを訪れて、わたしといえばなんだろう、どれだろうと考えを巡らせ、花を選び、世界でたった一つの贈り物を準備してくれたその事実こそが、愛おしくてたまらない。

「今度はひまわりを一輪だけあげたいな」

少し照れながらそう話す彼の、横顔が甘くて眩しくて、それもまた、愛おしくてたまらなかった。


花は確かに、時間を重ねるごとに、色も、形も、香りも、全て変化してしまう。終いにはなくなってしまうのも、悲しくないと言えばうそになる。

でも、

散りゆく桜も、季節が移りゆき、終わっていくことの尊さを教えてくれるから、美しいのだと思う。

花束だって、花、一輪一輪に込められた想いの深さを考えたら、
その価値に勝るものを挙げることは、きっと難しい。


だからこそ、わたしは

彼がわたしを想って紡いでくれた花と、そこに込められた想いを、

大切に守っていきたい。

永遠に枯らすことなく、守っていきたい。

あたたかい贈り物を、ありがとう。

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