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【映画】ガンバレとかうるせえ【YFFFオンラインシアター】

こんばんわ初見です。みなさんは後ろ向きのボールめっちゃトラップできますか?

ヨコハマ国際フットボール映画祭という天才的なイベントがあるんですが、コロナで開催できず。なんと現在オンラインシアターとして過去の上映作品10本が見れます。600円。

ちなみに前回は『クラシコ』という、松本山雅vs長野パルセイロの北信越リーグ時代の「信州ダービー」を描いた映画を見ました。


今回見たのは佐藤快磨監督『ガンバレとかうるせぇ』(日本、2014年)です。以下、映画祭公式noteから。


映画界注目の若い才能の原点『ガンバレとかうるせぇ』
🏆YFFFアワード2014 最優秀作品賞

夏の大会をふがいない成績で終えた山王高校サッカー部。キャプテンとマネージャーは選手権予選に向けて決意を新たにするが、チームには冷めた空気が流れる。自分に言い聞かせるかのようにチームを鼓舞しようとする二人だが・・・。
若さゆえに上手くいかないもどかしさ、悔しさを正面から描いた意欲作。
ぴあフィルムフェスティバルにて映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)&観客賞受賞。

高校のサッカー部を描いてるけど、これは青春映画なんでしょうね。そんなに得意なタイプじゃない。

サッカー映画として見ると、最後まで何の成長もないんですよ。監督はキャプテンのせいにするし、キャプテンは脳筋ですぐキレるし、キレられたエースはやめちゃうし、2年生は1年生をイジメる。

試合に負けたときだけ深刻そうな顔をして、次の日からまた同じ日々が繰り返されるだけ。でも、それぞれの生徒にとっては、毎日が必死に生きている初めての世界で、だからキレちゃう。

サッカーチームとしての成長(勝利)を期待すると、最後までイライラするだけなんですが、青春とはそういう不器用さなのでしょう。知らんけど。


高校サッカー知らない人は、ピンとこない部分あるかな。最初が夏の県大会(高体連、高校総体、インターハイなどと呼ばれる)で負けるところから映画は始まるんですけど、引退するとかしないとかどういうこと?ってなる。

インターハイで負けて、次の高校サッカー選手権は秋に予選、冬に全国(正月休みにテレビやってるやつ)なので、強豪校以外では1・2年生だけで出るところも多い。大学受験とかあると続けるのしんどいので。ちなみに選手権に出ない学校もあります(ぼくのところは出てなくて、5月で引退でした)。

チームとしては出るけど、3年生の一部がやめることもある。映画のなかにも、夏でサッカー部を去るレギュラーの3年生が出てくる。

つまり、これは高校サッカーの「引退」をどう迎えるかという話なんですね。サッカーをする場所なんていくらでもある、引退じゃないぞと言いたいところですが。


映画内に『旅立ちのロッカールーム』というのが出てくる。これは日テレの『最後のロッカールーム』のことなんですけど。前年のやつ見てんのかな?高校野球でいう『熱闘甲子園』です。

全国大会で敗退してチームとしての活動は終了、3年生は引退。選手が泣いてて、監督が感動的な言葉を投げかける。「大迫ハンパないって」が生まれたのもここでした。

敗退は一見悲劇ですが、高校サッカー全体として捉えたとき、最後をロッカールームで終えられる選手は幸せです。ほとんどの学校は地方予選で敗退して、会場のどっかの学校のグラウンドの隅で股間隠しながら着替えて、顧問も次の試合の審判当たってるからミーティングは後日、今日はとりあえず解散、みたいな感じで終わります。

トーナメントで進む以上、半分の学校は初戦敗退です。8割くらいが数日で落とされてしまう。予選を勝ち抜いて、都道府県大会で芝生のグラウンドで戦えるレベルの学校はごく一部、そういう学校にはベンチにも入れない3年生がたくさんいて…とか考えると、最後をロッカールームで迎えることがいかに幸せなことかわかります。


一番の特徴は、女子マネージャーの存在です。

このサッカー部では、女子マネージャーは夏で引退して冬の選手権まで戦えないという慣習がある。マネージャーはスポーツ推薦で大学行けないし、将来のこと考えてくれということらしい。

この映画に限らず、どこの部活でも口先ではみんな「マネージャーもチームの一員」とか、「マネージャーのおかげで勝てた」とか言うじゃないですか。でも心のどこかで、勝利とは関係ない存在で、替えの利く仕事だと無意識に思っている。マネージャー自身はチームの勝利のために本気で働いているのに。そんな葛藤が描かれる。

一番大事な大会には連れて行ってもらえない。やめないことも可能だけど、やめろという雰囲気がある。キャプテンはエースがやめたときは土下座して引き留めたけど、一番仲の良かったマネージャーがやめるときはヘラヘラしちゃうんですよね。心の中でどう思っているかは別として。


これはスポーツ学の話じゃないので、ジェンダーが~とか、マネージャーの本来の役割は~とか、そういうのは無い。でも見てください。ぼくはこの人物、魅力的だと思いますよ。

ひたすらチームの勝利のために尽くしているつもりだけど、誰にも必要だと言ってもらえないマネージャーがストーリーの中心にあります。キラキラした女子マネージャーっていうよりは、本当に勝利を追求して仕事をこなそうとしてる感。

また夏が終わる。勝っても私のおかげではないし、負けて責められることもない、そんな存在。疎外感とか、虚しさとか、甲斐のなさとか、そんなものとっくに吹っ切れてる。ただ私だけ先に辞めるのが悔しいだけ。今までの日々は何だったんだろう。こんなとこでやめられない。こんなとこで。だから…

同じ方向を見ているはずなのに、マネージャーに対して「お前が必要だ」と言えないキャプテンと、キャプテンに対して「がんばれ」と言えないマネージャー。ストイックであるがゆえにチームから浮いている、不器用な2人がすれ違い続けるお話です。


「勝ちたい」「がんばる」って何なんですかね?

キャプテンすぐキレるし素走りしかしないし、サッカー映画として見ると無能なんですよ。イライラしちゃう。その1本のダッシュは何を強化するための練習なのか?大雨演出にもイライラしちゃう。青春映画、向いてないわ。

「勝ちたくねえのか?」ってキレてるけど、ぼくからすれば1年通して戦術的に計算された練習を計画的に出来ない人は勝ちたいうちに入りません。「勝ちたい」なんて言うだけなら誰でも出来るんだぞ。

これ映画の話じゃなくて、学生スポーツあるあるなんですけど、勝ちたいってよりは、頑張った感がほしくてキツイ練習してる感じはある。本当に勝ちたいやつはトレーニングのあとにフラペチーノ飲まないだろ。地下鉄で部活帰りの高校生見てると思ったりする。

でも、多くの人はスポーツでメシ食っていくわけじゃなくて、そうやって仲間と過ごした日々のほうが将来的に大きな価値をもつこともわかってて。

部活って何なんですかね?別に勝つことだけが目的じゃないので、そんな厳しいこと言わなくていいんですよ。でもやっぱり目標を勝利に置いちゃう。大抵の場合、それも口先だけなので、この映画みたいに勝利を求めて正しいことをしようとするキャプテンとマネージャーが浮いちゃう。


難しいですね。「この映画嫌いだわ」って思いながら見てたんですけど、感想まとめてるうちに共感まではいかないけど、キャプテンとマネージャーのこと理解はできるかもしれないなって思ってきました。

部活やりたいかって言われると、やりたくない。

ちなみにぼくの最後の試合は5月の高体連、初戦で普通の公立高校に0-6で負けました。ぼくは後半ロスタイムから出場、プレー関与はゼロです。今でもサッカーには関わってるけどな。

残念でした。


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