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【映画】You'll never walk alone【YFFFオンラインシアター】

こんばんわ初見です。

ヨコハマ国際フットボール映画祭というのがあるんですよ。ある。今年も2月にあるはずだった。なくなりました。残念でした。そしてオンラインシアターが公開された。やったぜ。

全部見ちゃおうぜという気持ちになっていて、前回見たのは『ガンバレとかうるせぇ』という青春映画。登場人物が全員不器用で、映画を見たぼくも不器用になってしまいクソ長文です。まとめろ。


今回はアンドレ・シェーファー監督 ”You'll never walk alone”(2018年、ドイツ)です。以下、映画祭公式noteより。

あのアンセムのルーツを探る『You'll never walk alone』
第2次世界大戦前、ハンガリーで上演された一編のオペラ。それが、海を越え、時代を経て世界一有名なサッカーソングへと昇華する歴史を追いかけたドキュメンタリー。人々は、この曲にどんな想いを託し、そして何を受け取ってきたのか?
サポーターとチームを繋ぐ強力なパワーについての物語。

日本では「ユルネバ」と呼ばれているサッカーの応援歌の歴史を辿るドキュメンタリー。映画内ではWalk Aloneって呼ばれてるけど、打つのめんどいので海外のものも全部ユルネバ表記にします。

一番有名なのはイングランドのリヴァプールFC。ドイツのドルトムントでも有名で、CLで対決したときにはこんなシーンも。

日本だとFC東京で歌われてます。こんな感じ。

初めて味スタ行ったとき、ユルネバがどんな意味をもつ曲なのか知らなくて、急にスタジアムのビジョンに歌詞が出て英語の歌が始まったから、「なんだこれ」ってなった記憶。

歌詞が英語だと内容が入ってこないし、サポーターも歌いにくいから迫力にも欠けるなあっていうのが当時の印象です。あと、個人的にはチャントはサポが勝手に歌ってるっていう体であってほしいので、クラブ側から歌詞が出るみたいなのは好きじゃない(でも新規層には歌詞出たほうがいいというのもあり難しい)

そこまでいいイメージのなかったユルネバについて映画を見た感想になります。


まず、この映画、製作がドイツなんですよ。リヴァプールとFC東京しか知らないぼくは、この時点で「おっ?」ってなりました。ドルトムントなんですね。

この曲のはじまりは、1909年のハンガリーで生まれた『リリオム』というオペラにあるらしい。これがアメリカ・ニューヨークのブロードウェイでミュージカルになり、イギリスのロックバンドによってカバーされてスタジアムで流されるようになったということです。

まあ音楽はわからんし、オペラとかミュージカルとか言われても、もう全然なので、映画の前半はアハーンウフーンって感じで見てました。


話がリヴァプールになってようやく見えてきた。いまリヴァプール世界最強なのかな?わからんけど、イングランドのサッカー史においてリヴァプールFCがどういうクラブなのかを理解する必要がある。

ユルネバが採用された1960年代は、ビートルズに代表されるイギリスの大衆文化の黄金時代、リヴァプールにとっては1部に復帰してリーグタイトルも獲って(1963-64、65-66)黄金時代に向かっていこうとする時期でした。

1970-80年代は黄金時代。1972-73から1990-91までの19シーズンで、リーグ戦優勝11回、準優勝7回(5位1回)というめちゃめちゃな成績を残しています。強すぎてつまんないのでは。その間、欧州チャンピオンズカップ(現CL)では優勝3回準優勝1回、ちなみに1976-77から6シーズン連続でイングランド勢が優勝してます。

FIFAからの「栄光ある孤立」の流れで、国内サッカー重視で欧州にはクラブを派遣したくなかった時代が1950年代、その結果として1958年にマンチェスターユナイテッドの選手を乗せた航空機の事故である「ミュンヘンの悲劇」が起こり、イングランドのクラブがどんどん欧州で活躍する時代が来た、そんな感じです。ちなみにこのへんはぼくの修士の研究テーマでした。


これだけだど、ユルネバは強さの象徴に過ぎないということになってしまうんですけど、そうじゃないんですね。絶頂は続かなかった。1989年の「ヒルズボロの悲劇」です。

死者96名、負傷者766名を出したスタジアム事故。このへんは調べましょう。テラス席と呼ばれる立見席で、将棋倒しが起こりフェンスが倒壊、試合中に大勢のサポーターが亡くなったという事故です。

当時のメディアでは、フーリガンとの関係性が取りざたされたけど、調査の結果、原因はスタジアムの老朽化と警察官の誘導のまずさにあったとされました。(いわゆるテイラー・レポート)

サッカーはわが国の国技であり世界中に影響を与えてきた。しかし、老朽化したスタジアムと貧弱な設備、サポーターの暴力と過剰な飲酒、スタジアム管理に責任を負うべき者達のリーダーシップの欠如により、「観るためのスポーツ」としての価値を損ない国家のイメージそのものを貶めている。スタジアムの安全性と群集行動には密接な関連性があり、責任者はこれらを全て考慮する必要がある。

直接的な原因はフーリガンになかったとはいえ、これを文字通り読んではいけなくて、なぜ観客たちがフェンスのなかに押し込められていたかとか考えると、やっぱりそれだけ危険な行為を繰り返していたからなんですよね。

1984-85の欧州チャンピオンズカップ決勝で、リヴァプールサポが起こした事件も背景にあるはず。これでリヴァプールは欧州の舞台から締め出されていて、その最中に起こったのがヒルズボロの悲劇です。

しくじりは大事件によって表面化するけど、実際には心はずっとしくじっていて、普段から問題は起こり続けているんですね。しくじり先生に学ぼう。

この後、テラス席が廃止されたり、プレミアリーグが始まって世界を意識し始めたり、イングランドは古き良き?悪しき?フットボールから変わっていくわけです。新自由主義による労働者文化の排斥ともとれる。


そんななか、ユルネバは犠牲者の追悼で、そして事故の原因をサッカーファンに求める風潮からテイラー判決で勝利を勝ち取った(原因はファンの行動ではなく警備体制にあったと認められる)ときに歌われたそうです。

リヴァプールにとって、そしてサッカーの文化を守ろうとする人々にとって特別な歌になっていく。


FC東京のユルネバは、これを知ったサポーターの植田朝日さんが前身の東京ガス時代に持ち込んだとか。ちなみにスポナビアプリじゃないと途中までしか読めない。

今はもうただのビッグクラブの1つみたいなイメージしれないですけど、歴史を辿るとFC東京って独特なクラブなんですよ。

Jリーグができたとき、地域密着、野球の巨人みたいな存在を作らないという方針で、東京にはクラブが作られなかった。でも首都にクラブほしいよねってところから旧JFLの東京ガスにサポーターが付き始め、それがプロ化したのが現在のFC東京。

首都クラブとしてワールドスタンダードを追求する、これが東京なりの「地域性」なのかもしれない。ちなみにこの本のシリーズ、3冊あります。

その後、東京には東京なりのストーリーが作られてるはず。そこらへんはさっきのコラムとかに書いてあります。

そんなようなことを知ると、味スタで聞いたユルネバも少しは感動的になるかもしれないし、そうでもないかもしれません。

ヒルズボロの悲劇とサッカーファンたちに向けられた疑いの目、そこからの復活、そんなストーリーを知ると、この歌がリヴァプールだけのものではなく、世界中のサッカーファンたちに愛されるのも理解できるなあ、という気持ちです。

おわり。


これまで見た映画はマガジンにまとめてます。


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