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  • 衒学館文庫「季刊《自己啓蒙のすゝめ》」

    • 6本

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シャークネード ~鎖されし円環の物語~

シャークネード?ああチェーンソーでサメぶった切るB級パニック映画でしょ?と思っている方々は、まずシリーズ6作全てに目を通していただきたい。自ずとこのシリーズが、SF超大作であると認めることになるはずだ。そう、パニック/アクションではなくSFだ。万が一、『ディープ・ブルー』の方が100倍面白い、『ジュラシック・シャーク』よりは100倍面白い、程度の感想に留まってしまった方のために、シャークネードという映画の奥深さを紐解いていこう。 ・シャークネードにおける円環構造サメ入り竜巻

    • 10は隠されている

      1 、2 、3、4、5、6、7、8、9、10 かくも巧妙に10は隠されている。 一、ニ、三、四、五、六、七、八、九、十 こちらは隠されていない。虚実織り交ぜるのは策謀家の常道だ。 ten,zehn,dix,diez,dieci 私が知る限りの十だ。しかし、世界を牛耳るのはこれらでなく圧倒的に10なのだ。十ではない、1―0が。 十進法は人間の手指だ。歪むはずはない。 事実私は両の手で十を数えられる。 しかしどうしてだろう。かくも巧妙に本来の10は隠されている。0の登

      • 原風景

        原風景という言葉を聞いて、まず私が思い浮かべるのは、山々の間に拓かれた段々畑である。足元を撫でる道草にふと見下ろせば、小岩に囲まれた遠く煌めく江に、釣り人の手漕舟が切絵のように捺されている。山頂から吹き降ろす風と、潮風とが丁度綯い交ぜになって、土気と草息を立ち昇らせる。大気と波の、二重の揺らぎの向こうに陽が落ち行くのを、ぼうっと眺めるのだ。 とはいえ、これは私の心象風景のひとつではあるのだが、やや「原風景」という語に浸りすぎな気がしてしまう。すると私は、心を

        • 雑記 牧神の午後

           バレエと聞いても、レオタードにつま先立ちで、跳んで跳んで回って回って程度の認識の私でしたが、偶然にもバレエ公演の映像を観る機会に恵まれました。それが何を隠そう「牧神の午後」です。モダンバレエに位置するというこの作品の雑感と少々の調べごとを、ついに男もすなるバレエといふものを観たり!という興奮のもと、記しておきます。  まず鑑賞に至るに、フィギュアスケート界の皇帝、かのエフゲニー・プルシェンコの「ニジンスキーに捧ぐ」という競技プログラムを度々観ていたことが契機になりました。

        シャークネード ~鎖されし円環の物語~

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