「街並みの美学」を読んで

私がこの本を読むきっかけとなったのは「日本の最終講義」(出版社:KADOKAWA)に著者の芦原義信(あしはらよしのぶ)氏の講義が出ており、今までそれほど興味のなかった建築について少し理解を深めたいと思ったことでした。氏は日本の建築家で銀座ソニービルや東京芸術劇場などを手掛けております。母方の叔父は画家の藤田嗣治だそうです。

本書は1979年に岩波書店より刊行され、今から約40年以上前に書かれたものです。全5章で構成される本書は、都市景観の重要性について日本と西欧を比較しながら著述されています。

第1章の建築の空間領域では、靴を脱いで家に入る日本と履いたまま入る西欧の文化の違いについて記載されています。そしてこれは日本と西欧の、「内部」と「外部」の捉え方の差異によるものと考察されています。

例えば日本の旅館は玄関で靴をぬぎ、ロビーや廊下は「内部」でありそこを行き交う人々は浴衣姿で歩きます。偶然泊まり合わせたお客は家族の一員のようであリマスが、対する西洋式のホテルでは玄関は24時間開放され、ロビーや廊下は外部秩序の延長にあり、鍵を開けて個室に入って初めて「内部」になります。ロビーですれ違う人々は他人であるのです。

靴をはいたまま暮らす西欧的雰囲気とは、独立した個の対立による外的秩序の空間であり、靴をぬいで暮らす日本的雰囲気とは、わけへだてのない個の集合による内的秩序の空間であるということができる。(P9〜10)

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そしてこの差異は街の公園や大学にも現れていると著者は指摘します。
確かに都内にある日比谷公園は外と隔たれており、私も入り口がどこにあるのかよく分かっていません。
日本の多くの大学において、敷地内に入る時は何か大学に用事がある時がほとんどですが、西欧の大学は敷地内を一般人が通り抜けをするだけの場合もあります。

勿論そこに優劣があるわけではありません。
しかしこの「内部」と「外部」の捉え方や、夜になると日中とは同じ建物と思えないくらい煌びやかな広告が取り付けられている日本の都会のビル群、靴を脱いで生活をし床に寝る習慣に合わせて熱伝導率の低い素材を床に使用する伝統的な日本家屋など、西欧との明確な違いは大変興味深く読めました。

近年は日本でも西欧のようにオープンな建築も多くなっています。
街を歩く際には建築物に注目しながら歩くと新しい発見がありそうです😊




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