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「風景との対話」を読んで
東山魁夷は昭和を代表する画家で、風景画においては青や緑の使い方に優れ「東山ブルー」とも呼ばれます。
本書は父親の反対を押し切り画家の道を歩む経緯を始め、代表作に込めた想いや作品にまつわる思い出、出来事などが綴られています。
私は東山魁夷の絵だけではなく文章も美しいことに感銘を受け、芸術は絵画も文章も音楽も「美」という点において、根底ではつながっているものなのだと感じました。
氏の代表作「緑響く」は、氏が題材となる風景を見た際にモーツァルトのピアノ協奏曲イ長調(k.488)の二楽章の旋律と、一頭の白い馬が湖畔の風景の中を右から左へと走り抜けていく姿が浮かび上がったそうです。
他書によると白い馬はピアノの旋律で、背景の森はオーケストラとのことです。
「生誕110年 東山魁夷展」が開催中。代表作《緑響く》《道》ほか、ヨーロッパや京都を描いた風景画も展示(京都国立近代美術館、~10月8日)https://t.co/0pq0enG0jc pic.twitter.com/Qcx495u44P
— ウェブ版美術手帖 (@bijutsutecho_) September 1, 2018
「道」も有名な代表作です。本書の中で氏の描きたかった道について述べられています。
道は、歩いてきた方を振り返ってみる時と、これから進んでいこうとする方向に立ち向かう場合がある。私はこれから歩いて行く方向の道を描きたいと思った。ゆるやかな登り坂に向かった時、私達には、これから、歩いていくという感じが起る。それに反して下り坂を見おろすと、いままで辿って来た道を振り返った感じになり易い。(P37)
東山魁夷(Higashiyama Kaii) 「道」 1950年 東京国立近代美術館 #東山魁夷 #HigashiyamaKaii pic.twitter.com/EiwXhOggiS
— 美術すき! (@fsc1234567) August 19, 2019
日本の風景画について氏は述べます。
日本の風景画には、西洋にも、中国にもない特徴の一つに、風景を大きな視野で捉えないで、自然の一隅を題材とする場合が相当多いという事がある。それは、花鳥的な風景というか、いずれにせよ、近くで見た自然の一部分だけで構成された画面である。遠景、中景、近景というような組み立てではなく、近景だけで出来上がっている特殊な構図である。これは芸術的な感覚から発しているものとも云えるが、また、一本の野の草にも大自然の生命のあらわれを見るというような、日本人の自然への愛情のしるしでもあるだろう。自然の機微をを掴む敏感な感覚の働きは、日本人独自のものであり、特有の神経の細かさにある。(P84)
小さなものの中に美を見いだす。
例えば「霧」という画は8本の直立した落葉松(からまつ)の樹幹と一つの切り株が描かれていますが、一本の幹の上に小さな一枝が見られます。その一枝に若芽をつけており、早春の兆しを表現しているのです。
このことは絵画に疎い私でも日本人としてしっくりきました。
私は機会がなくまだ行った事がないのですが、長野県の善光寺と同じ場所に東山魁夷館があります。是非いつか行ってみたいと思っています。
最後に、私のノートパソコンのデスクトップには東山魁夷の「青の風景」が設定されています。こちらの本の表紙です。
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