強くなる為に必要なことと少しの誇張

僕が4K.Grubbyを知った時、彼は既に世界の頂点に居た。
けれども、今ほど高い位置に居たわけではなかった。



その頃のGrubbyはdeadmanというロシア人と欧州最強の座を争っていた。

deadmanという人間は一言で言うと犯罪者だ。
プロになるまでに幾度となくチートを使い、何度もBANされたという経歴を持つ、筋金入りの極悪人だ。当時から今に至るまで、世界中のWarCraft3プレイヤーから嫌われまくってきたプレイヤーであり、WarCraft3界における最大の悪人である。だから僕はdeadmanがもの凄く好きなのである。

対するGrubbyも素行不良で有名なプレイヤーだ。各地のBBSでやんちゃをしたり、チャットで自分から喧嘩を仕掛けたり、気に入らない戦略に対して人格批判という対抗策を用いたり、相手がちょっとした挨拶のつもりで言った言葉に罵詈雑言を返したりと、行儀の良い人間ではない。だから僕がGrubbyがもの凄く嫌いなのである。



当時世界の頂点にいたGrubbyとdeadmanという2人のバカは、いくつかの重要な大会の重要な試合で何度か闘った。世界中のゲーマーの、チーターに対する強い怒りと憤りから生まれた野太い声援を背に受けたGrubbyは彼らの期待に応える形で、毎回々々deadmanを粉々に粉砕し続けた。それはもう、完膚なきまでに。4K.Grubbyの伝説は、deadmanの息の根を止めた英雄として始まったのである。

それからというもの、deadmanは鈍く輝く事しか出来なくなった。deadmanがチートを使ってまで強くなり、勝ち続けることで溜め込んだ貯金を全て、Grubbyが持ち去ってしまったのである。



Grubbyの所属する4Kというチームは当時、それほど強いチームではなかった。5対5のチーム戦で行われるWarCraft3Leagueという大会において、4Kは3勝2敗という際どいスコアを繰り返し、時として2勝3敗という形であっさりと、格下のチームに敗れて負けた。

何故ならば、当時の4KはGrubbyのワンマンチームだったからだ。


それでも4Kは勝ち続けた。
いや、Grubbyは勝ち続けた。

リーグ戦ではそれなりに負けていても、プレイオフではGrubbyが絶対的な強さを発揮して、1vs21で1勝、2vs2でも1勝と、Grubby1人で2勝をあげ、残りの3試合で誰かが勝てばチームは勝利するという状況を作り出し続けた。

そして、4Kは栄光を手にし続けた。
いや、Grubbyは栄光を手にし続けた。



そんな4Kには、「Grubbyだけのチーム」という嘲りが常に付きまとっていた。

当時の2vs2におけるGrubbyのタッグパートナーは素人目に見ても明らかに、もの凄く弱いプレイヤーで、プロリーグで優勝を狙うようなチームでプレイする実力が無かった。けれども、Grubbyはその誰よりも弱いチームメイトと共に、「2vs2でも世界最強はGrubbyだと誰もが認めざるを得ない勝利を記録し続けた。誰もGrubbyを止めることは出来なかった。


ある時、チームメイトの試合をインターネットで観戦している歓談の中で、共に観戦していたプロゲーマーの1人が言った。

「4Kのメンバーは楽で良いよな」
「3試合に1勝するだけで金が稼げるんだから」

Grubbyは激怒した。本当に怒っていたのかどうかは知らない。けれどもGrubbyはしばらくの間、チームメイトをえらい剣幕で褒め続けた。僕はますますGrubbyが嫌いになった。


ある時、同じようにGrubbyがチームメイトの試合を観戦していると、共に観戦していたプロゲーマーの一人が言った。

「(2vs2のGrubbyのタッグパートナー)は、弱い」

Grubbyは即座に言い返した。
「彼は世界で最も優れた2vs2プレイヤーだ」
「証明してやるからこのあとすぐに対戦しろ」

そこには、Grubbyのタッグパートナーもいた。
僕はますますGrubbyが嫌いになった。



それからしばらくして、MaD_Frogというプレイヤーが世界の頂点に躍り出た。

韓国に招待されたMaD_Frogは、欧州よりも遙かにレベルが高い韓国の並み居る強豪を相手に奇跡的な成績を収めて欧州へと帰国した。それは文字通り、凱旋帰国だった。

誰もがMaD_Frogの時代が来たと考えた。

欧州に舞い戻ったMaD_Frogは鬼神の如き強さで勝ち続けた。当時MaD_Frogのゲームを観戦していたプロゲーマーの一人が動揺して「どうやったらMaD_Frogに勝てると思う?」と皆に問うたが、誰一人として言葉を返せず、黙り込んでしまった。まるでグロ画像のような強さだった。通夜のような重い沈黙が欧州を覆った。

MaD_Frogと対戦したプロゲーマーの一人は試合の半ばで心が折れて、「ちょっと待ってくれ、どうやったらMaD_Frogと戦うことが出来る?」とMaD_Frog本人に問いかけてしまう程だった。当時のMaD_Frogは、対戦相手に戦う事すら許さないほどの、圧倒的な純然なる暴力で満ち溢れていた。かつては世界最強を争った欧州トップのプロゲーマーを向こうに回し、コールドゲームで勝ち続け、相手の心を折り続けた。



悪夢の到来であった。

誰もが思った。
Grubbyの時代は終わった。
deadmanという巨悪を葬った英雄の時代は、
あっという間に過ぎ去ってしまったのだと。

MaD_FrogとGrubbyのどちらが強いかなんて、誰も語ろうとはしなかった。やる前から、結果は既に見えていた。MaD_Frogは圧倒的で、Grubbyはただの人だった。僕らはMaD_Frogという伝説の目撃者だった。

両者は遂に相見えた。
それも、大きな大会の決勝戦で。


試合形式は3本先取。

人々が注目したのはどちらが勝つかのかではなく、MaD_Frogがどのようにして勝つのかだった。いつものように相手にゲームをプレイさせないまま、試合として成立させずに勝ってしまうのか、Grubbyが辛うじて試合としての体裁を保つ事が出来るのか。それだけが注目されていた。MaD_Frogの優勝は約束されていた。


Grubby対MaD_Frogの幕が開けた。

MaD_Frogは圧倒的だった。
Grubbyの操るユニットは何も出来ずに片っ端から死んでいった。
Grubbyの操るヒーローは蘇る度に悲鳴と共に昇天していった。

もはやその空気は試合のものではなかった。
偉大なるヒーローの追悼イベントだった。
Grubbyは何も出来ずに一本目を失った。


2試合目もMaD_Frogは同じだった。
韓国という虎の穴を経て完成した強さは本物だった。

Grubbyは第1ゲームと全く同じように、何も出来ないままで負けた。それを見たプロゲーマーの誰もが「明日は我が身」と死に行くGrubbyの姿を怯えながら見ていた。Grubbyに煮え湯を飲まされ続けてきた欧州のトッププロ達は、MaD_Frogと同じ種族を使ってMaD_Frogのスタイルをコピーすれば、自分もGrubbyを小石のように蹴飛ばせるのかもしれないと考え始めていた。

Grubbyは何も出来ずに2本目を失った。


けれども、GrubbyはGrubbyだった。
残念なことにMaD_Frogはその他大勢でしかなかった。

2-0とMaD_Frogが優勝に王手をかけて迎えた第三ゲーム。誰もが目を疑う光景がそこにはあった。Grubbyは凱旋帰国以来、全ての対戦で相手にゲームをさせることなく連勝街道をひた走ってきたMaD_Frogにゲームをさせずに完勝した。何が起こったのかを理解している人は世界中でたった一人、4k.Grubbyだけだった。「まぐれだ」誰かが言った。世界中がそう考えた。



4試合目。
GrubbyはGrubbyだった。
世界中がとろけていった。

あのMaD_Frogが消し飛んで行く。
何も出来ずに負けてゆく。
目の前で起きてる現実を、
誰一人として理解出来なかった。



何よりもそれを理解出来ていなかったのは、MaD_Frog本人だった。負けるはずがないマッチアップ。負けるはずのない相手。事実スコアは2-0。栄光はMaD_Frogの手中にあった。

4試合目の趨勢が誰の目にも明らかになった時、MaD_Frogは言った。
「5試合目はお互いの種族を逆にしてやろうぜ」

OVER。
「なあ、5試合目はお互いの種族を逆にしてやらないか?」

全ては幻だった。
「4K.Grubby、5試合目はお互いの種族を逆にしてやってみない?」



欧州に平和が戻った。
玉座にはGrubbyがいた。
彼はみんなのヒーローとして、何度も何度も大きな大会の重要な試合でゾンビのように蘇っては復活を目指してしつこくしつこくGrubbyまで辿り着き続けていたdeadmanを、毎回ストレートで打ち破り続けた。人々は笑顔を取り戻した。deadman LoL。幸せな時代だった。

次なる悪夢が訪れるまでは。



それは、本物の悪夢だった。
誰もが目を疑った。

プロゲームというのは、過酷な世界である。
試合のリプレイが一瞬にして世界中に広まり、キーボードの細かい操作方法や、作戦の手順、あるいは傾向までが全て筒抜けになる。強いプレイヤーの作戦は世界中のプロゲーマーから研究され、穴を見つけられ、あるいはコピーされて広まる内に誰かが対策を編み出して、あっという間に過去へと飲み込まれ、一人また一人と消えて行く。けれども、Grubbyは消えなかった。それどころかその輝きを失わないままで、過酷な生存競争を生き延び続けた。彼の所属する4kというチームには少しずつ、強いプレイヤーが加わって行った。

他のチームもGrubbyの栄光を黙って見ていたわけではない。
4kというチームはその貧弱なウェブサイトと所属プレイヤーの少なさを見てもわかるように、資金力の乏しいチームだった。Grubbyがいなければ凡百の弱小チームで有り続けただろう。4kはWC3Lで勝ち続けてはいたものの、世界的な強豪プレイヤーを補強する事は出来なかった。

それでもGrubbyはチームメイトの事を「彼は強い」「彼らは強い」と言い続けた。誰もがそれに反論を試みたが、正論は結果の前では無力だった。4kはWC3Lという大舞台で勝ち続けていた。Grubbyは1vs1と2vs2の2勝を4kにもたらし続けていた。


どのような補強を行っても4kの後塵を拝し続けていたライバルチームは遂に、禁断の扉に手をかけた。韓国である。WC3Lは一夜にして韓国人の晴れ舞台と化した。山を越え、海を越え、世界中から化け物共が集結した。第5の種族sprit_moon。100戦100勝sweet。達人remind。あげればきりがない。時差の関係上あまり参加してこなかった国の強豪達も、韓国人の後を追うようにして次から次へとWC3Lに参戦しはじめた。Grubyはそれでも強かったが、4kはあっという間に埋もれ、中堅以下の弱小チームへと落ちぶれた。Grubbyは終わらないにせよ、4kは終わった。誰かが言った。


「ここからが本当のWC3Lだ」
これまでは子供のお遊戯、ここからが本物の戦いだとばかりに人々は胸を躍らせた。


彼はそんな時に訪れた。

Zacard。
Grubbyと同じオークという種族の使い手である彼は、韓国最強という称号を手にしていた。韓国最強という称号は即ち、世界最強を意味していた。そして「世界最強オーク=Grubby」という定義の崩壊を意味していた。WC3Lが欧州のリーグから世界のリーグへと変貌を遂げると同時に、1つの時代が終わろうとしていた。


誰もZacardを止められなかった。
人々はZacardをGrubby2.0だと考えた。

事実ZaqcardはGrubbyより操作量が多く、Grubbyよりも繊細で、Grubbyよりも大胆で、Grubbyよりも丁寧で、尚且つGrubbyよりもレベルの高い国でプレイし、多くの修羅場を潜ってきており、Grubbyよりも名のある相手と戦い、そして勝利し続け、それ故に韓国最強の称号を手にしていた。


「Grubbyの時代は終わっていない」
人々はそのようにGrubbyを擁護した。

欧州はGrubby、アジアはZacard。
それでいいじゃないかと、物事を丸く収めようとした。


けれども世界は1つだった。
GrubbyとZacardは同じ大会にエントリーし、同じように圧倒的な強さで勝ち進み、同じように決勝戦へと駒を進めた。オーク対オーク。欧州対韓国。欧州最強対世界最強。


結果は3-0でGrubby。

「どうしてGrubbyは勝ったのか?」世界中で論争が行われた。けれども誰一人としてそれに対する明確な答えを出せずにいた。そうして人々はその3-0という結果を理解する事を諦めた。考えるのをやめたのだ。「Grubbyだから」。他の理由は見つからなかった。他に言葉はいらなかった。

それ以降、それまでは絶対に傷のつかないプレイヤーだったZacardはチームにとって重要な試合で勝てなくなったし、格下のニューカマー相手に頻繁に星を落とすようになった。どこにでもいる凡百のトッププロへと成り下がってしまったのである。魔法は解けて、悪夢は去った。



悪夢は去ったが、4kの死は確定していた。
韓国人の草刈り場となったWC3Lで、他のチームよりも遙かに見劣りする4kの面子が勝ち続けられる可能性は無かった。何よりもエースのGrubbyですら勝ちを計算出来ない強豪プレイヤーが、大勢流入していた。4kのライバルチームは、オフラインで行われるプレイオフ(決勝大会)に韓国人を呼び寄せる事くらい簡単にできるだけの資金力を有していた。4kは終わった。



そう、4kは終わった。
誰もがそう思った。

あの頃は良かった。
人々は昔を懐かしんだ。

けれども終わったのは4kではなく、deadmanの所属するaTだった。



誰がaTを終わらせたのかって?
そんなの、言うまでもないよね。

綺羅星の如きタレントを世界中から掻き集めたaT DreamTeamを終わらせた男。それが、かの、aT.deadmanだ。


極悪人deadmanを抱えたaTは、deadmanが引き起こす数々のトラブルにより空中分解した。傷心のMaD_Frogが色欲に溺れて行方知れずとなってからも、欧州のトップ戦線で最大の悪役としての地位を保ち続け、Grubbyには相変わらず負け続けていたものの、地味な進化を続けていたdeadmanを欲しがるチームはいくつも有り、すぐに新しいチームへと移籍していった。けれども、deadmanほどの実績を持たない幾人かの同僚の所属は宙に浮いた。


韓国屈指のアンデッド使いaT.FoV。
次第に当確を現しはじめていたフランス人のaT.ToD。

そんな彼らを拾ったチームがあった。
Grubby率いる4kである。


誰も、そう、誰もFoVを止められなくなった。Grubbyとトレーニングを続けたFoVは4kに加入後、まるで別人のように強くなった。

GrubbyはToDのトッププロという肩書きをもすぐに剥がした。
ToDは世界最強ヒューマンとして名実共に誰もが認める存在となった。

なったのではない。
Grubbyがそうしたのである。


自分よりも遙かに弱く、ライバルチームよりも遙かに安価な選手を率いてWC3Lを勝ち続けてきたGrubbyは、過去のチームメイトとは段違いの才能を所持しているFoVとToDを瞬く間に世界的名手へと成長させ、4kを真の最強チームへと生まれ変わらせた。もう誰も4kを止める事は出来なかった。



先日、WC3Lシーズン8のプレイオフが行われた。

FoVはスケジュールが合わず、4kはFoV抜きでプレイオフに挑んだ。4kのアクシデントはそれだけではなかった。プレイヤーの1人が選手登録後に参加出来なくなり、全5試合で行われるWC3Lのプレイオフで4kは、常に1本を失った状態で始まるという不利を受けた。しかも、GrubbyとToDに続く3人目のプレイヤーであったZeusは、かなり苦しい弱いプレイヤーだった。Zeusが4kに加入したいきさつはよく知らない。あまりWarCraft3の盛んでは無いクロアチアの選手だから、先進国のプレイヤーよりも獲得しやすかったのかもしれないし、操作量の多さを見込んで育てるつもりだったのかもしれない。とにかく、aTの空中分解によって奇跡的に4kに加わったToDやFoVとは違い弱いプレイヤーであり、Zeusが勝ち星を拾える可能性はかなり低かった。


4kが優勝する方法はただ一つ。

Grubbyの1vs1。
ToDの1vs1。
Grubby&ToDの2vs2。

その3試合で勝ちづけること。
2人きりのプレイオフが始まった。


当然の如くGrubbyは勝った。
1vs1は2-0。
2vs2も2-0。
誰も驚かなかった。


そして、ToDは負けた。
4k.ToD 対 mYm.hanbit.Strom。
相手はMYMというデンマークのチームと、habitという韓国のチームが合体して出来たMYM.hanbit。スコアは1-2。選手はStrom。もちろんkorean。誰も驚かなかった。


無論、Zeusも負けた。
相手は当然韓国人。
誰も驚かなかったがフォーラムは荒れていた。
「Zeusは良いプレイヤーだが、4kには相応しくない」
もちろん僕も頷いた。


FoVは招けず、チームメイトが1人現れず、デフォルトで1敗が付き、Zeusは戦力にならない4k。対するMYM.hanbitは出場選手全員が韓国人。現地でブートキャンプをし、万全の体制でプレイオフに挑んでいた。敵はhanbit。即ち韓国そのものだった。WC3Lという巨大な大会のタイトルが、韓国人によって持ち去られようとしていた。


けれども、GrubbyはGrubbyで、WC3LはGrubbyの為の大会だった。

WC3Lのプレイオフはダブルイリミネーション方式。
即ち、一度負けても優勝のチャンスはあった。

4kは当たり前のように決勝戦へと駒を進め、ウイナーズサイドを勝ち上がったhanbitとの決戦に挑んだ。hanbitが1勝すればhanbitの優勝。4kが2連勝すれば4kの優勝。

そして、一戦目。
Grubbyは1vs1では2-1で勝利し、
ToDと組んだ2vs2も2-0で勝った。

4kの命運はToDに託されたはずだったが、後にeSports World Cup 2006ででGrubbyに勝利することになるZeusが、Stromに2-1で勝ち、ToDがプレイすることなくリセットに持ち込んだ。



それはもはや伝説などではなく、ギャグの領域だった。
WC3LはGrubbyの為の大会で、4kにはGrubbyがいた。



グランドファイナル最終戦。
Grubbyは2-0で勝った。
ToDも2-0で勝った。
Grubby&ToDの2vs2も2-0で勝った。
どれも、一方的だった。

海越え山越え訪れて、キャンプまではった高給取りの傭兵達は、4kの2人になにもさせてもあえないままで、WC3Lシーズン8のプレイオフを終えた。

皮肉にも、Grubbyが最も嫌うdeadmanが崩壊させたaTから移籍したToDが、Grubbyに幾つ目かのタイトルをもたらしたのである。欧州で一番の嫌われ者が、韓国から欧州を守ったのだ。まったく、お笑いである。



4k.GrubbyはFoVとToDという、世界最強クラスのチームメイトを手に入れた。けれども、かつてGrubbyが「強い」「素晴らしい」と言い続けてきた、安くて弱いがたまに勝つチームメイトは、もう1人として4kには残っていない。それどころか、WC3Lの優勝メンバーだった彼らは全員、eSportsシーンから完全に消えてしまった。まるで最初からGrubby1人しかいなかったかのように。

いや、事実、4kにはGrubbyが1人居ただけなのだ。
即ちGrubbyはずっと1人だった。
そしてこれからもそうだろう。


4kと他のチームの差違は"Grubbyが居たか、居なかったか"という違いでしかない。10人20人と大量のトップランカーと契約して囲い込んだ有力チームは全て、たった1人の人間に粉々にされてしまったのだ。

もしも仮に世の中に「金では買えないもの」があるとすれば、Grubbyと、Grubby的なものだけだろう。仮に4kにGrubbyが居なければ、資金力のない4kは今でも弱小チームだっただろうし、他のチームにGrubbyが居れば、そのチームがWC3Lを連覇し続けていただろう。


それを思うと、以前どこかの誰かが「強い人と練習しないと強くはなれない」「弱い奴は強い人と練習しても弱いままだ」と言っていたのを思い出さずにはいられない。Grubbyが強いままで居られたのは、4kというチームがその時点で買える範囲の中から最も強いプレイヤーを買い続け、少数精鋭で不要なものを捨て続けてきたからに他ならない。必要でないもの以外は不要であると、捨てられる事こそが強さなのだろう。


不要な物を捨てて。
不要な情報を捨てて。

不要な人を捨てて。
不要な時間を捨てて。

不要なRSSを捨てて。
不要なブログを読むのをやめて。

さあNOW、全部捨てちまいなよ。
全てゴミ箱に放り込んで投げ捨てて。

違う世界違う場所違う人生違うインターネット。そうすれば誰だってGrubbyになれるし、そうした所で誰もGrubbyにはなれやしない。例えば僕が今ここで真性引き篭もりhankakueisuuを投げ捨てたならば僕が失うものは僕だ。grats、Grubby。
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Grubby
deadman
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