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ホワイトスネイク 川柳70句

重力のためだけでなく雪が降る
新月に二人羽織がいま終わる
灰つもり水なき星の再生機
貴婦人が両棲類を飼う土蔵
コピー機でしたしたしたと雪つもる
産卵のインコに及ぶ幻視して
悪人がプレパラートを割らざりき
三階が剣道場に似たひかり
大陸に栗まんじゅうのただ一個
内容に田中と記す井戸の会
幻想の未来で売っているタイガ
人形があることがある主義者の市
適当な手毬唄から死をえらぶ
心理劇中歌の歌詞の通り裂け
牛を見ていなかった子の誕生日
雪が降る地上のごとき裏ビデオ
瞬間があったかしれずチョキを出す
たいまつに蕪投げつけるかたきうち
雪が降る牛らしくなる牛の像
現実の銅貨の塔の上に雪
俳優の大腿骨に雪つづく
現実のあらゆる庭につもる雪
雪の町時を形態模写しても
書道家が折れた庇と連れ歩く
青い鹿多発地帯に火を囲む
雪が降る室町幕府崩壊後
弁当に意識のやどる雪の午後
白雪のなかあのひとのiPad
監督のいない鋼鉄牧草地
巻末に水溶液を吐く手引き
ひとほろぶ仮名変換の途中でも
ハイヒール消滅しないものを踏み
舞台上具体にすぎるメロンパン
雪を浴び親の潜水服を売る
三点がばったと同じ真珠湾
平均の味噌ぬりたくる荒法師
艦長の不在を埋めるお〜いお茶
雪の華そこまで具体例の豚
ペンギンが死なない箱をあとひとつ
虎刈りの伯母に聞かせる宇宙論
裃を三ツ矢サイダーだと思い
黒い箱つぶす工程表に誤字
山側で観測員の手記燃やす
海水に星のすべてが融けるまで
ブドウ糖さなぎのままの午後に雪
人格のひとつペーパーナイフ手に
通話機をメロンにあてる社会の図
分母より昏い分母をさがす旅
恐竜が業平橋にいなかった
バの付いた馬糞とり出す仏具店
クエスチョンマークの砂絵雪が埋め
聖闘士がいま味噌汁をかかえ持つ
華道家がみなバク転をする小津映画
サラダ捨て海上に星残らざり
演劇部員のひとりが外す腕
パロディーの虹の彼方へ行けぬシャア
無意識の野良人参の断面図
風景に信号機あり十二月
銀河へのひとりひとりに鳥の声
山下がヒッチハイクをしなかった
教頭が無言つらぬく猫だまし
ミジンコが三軒茶屋に棲む季節
院内に与作が帰る水曜日
雪のなか人と象との距離ゆがみ
祈祷師の家を基準に市の気温
大伯母が竜でなかったため拍手
意味もなく潜水艦を割るショパン
雪がやむヒッチコックの就寝時
ただ見やる両替商のいない川
今日の雪やんで玉葱・新世界

2020.12.16

#川柳 #詩歌 #文芸 #雪の日 #ホワイトスネイク

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