燃えるパン（気狂いピエロ）　　川柳80句

しけもくのしけるスタニスラフスキー

バフチンのあなたまかせに陽は暮れて

オリジナル・キャラクターにてひかりごけ

赫奕とニーチェを売っている飯屋

千葉県の蠅の描写をうつしとる

猿を飼う日本すべてのパン焼けて

燃えさかるとんち僧侶の紙の檻

印度象博覧会に射精せず

祭壇にかまってちゃんのころす蟻

やずやからいとまきえいの詩をはじめ

デスゲーム漫画積みあげ蟻にあし

シタールで亀井静香がぶん殴る

浣腸のどこまで白いメリーさん

神がみと関根勤の攪拌機

時のそとほうれん荘にドル積まれ

養蚕にみちびく仮性包茎者

旋盤に生と生との名をかくし

福沢のメンタルといううで卵

逆光のハンバーガーにすべての死

原人の愛ぐちゃぐちゃに呼びかわす

脳により宇宙の土間をつくり込む

豚まんがただひとつある反地球

時間の書ひらかれたまま水に死す

チベットにおなじ雨ふる犬公方

河豚を手に妻の句集を読みおえる

味蕾へと妻の句集の鉄の味

妻の句が胎蔵界にわきあがる

妻の句が甲骨文字をせきとめる

書をなしてぎゅにゅっと笑う妻に夜

殺佛のあいだに知性海ひろげ

牛の家メメント・モリの糞をまる

千代田区が海に沈んでゆく歌劇

作中の印度をこえて悲のもやし

神もなく盆栽博士こときれて

ひき潮に変態がいる核の春

じんるいを呟くひとに蠅たかる

親鸞のチョリソーのほかなにがある

正露丸妻としりとりあそびせず

妻の句にいくたば棄てる乾電池

無意識にみな響きあり裏カフカ

夕暮れる魚眼レンズをなくすのち

腐金魚を発話のとおりたてまつる

火時計をとめてゴダールすでになく

意味というまるまるの黄身うで卵

信長の前後に気象観測車

晴明のひげ根をぬいている小和田

犬屋にてアホの坂田が烈句よむ

歌舞伎からすけそうだらを盗みだす

天の思惟いろりを直しつづければ

近親のさばくさかなにうろこ無し

鉤括弧「北京の秋」に初夏来たる

折れてゆくマリア・カラスの夜の義手

神の子にいまをあたえるきぬどうふ

童貞のたて穴を掘るレンズマン

世の暮るる駱駝を駱駝だと識って

珍念の想像界にたての糸

パチモンのドカベンを貼る兄の壁

隕鉄をバカ田大学院にみる

貝塚のカネボウひろう古今亭

貘売りと妻かたりあう図像館

ボン・ジョヴィの永久歯ぬく春暑し

拷問にていねいをするフィラメント

バルタンの星ほろぶ日の二進法

くがたちの玩具とりだす啄木忌

きょうの日の公約数にドリア蒸す

いくたびも星取表にのる印度

レーヨンの言葉そのもの闇に撒く

山羊ころす櫻の園の十二歳

哺育器の猿にかわってこうじみそ

背およぎのジョンとヨーコの檻のなか

鉄郎のほんまのアミノ酸すくう

千年の暴力芸者鹿を飼う

フマキラーいちまんぼんの脳科学

げんじつの浜辺に葡語の姉妹たつ

レオパレス魔球が消えてゆくさきに

ローリング・ストーン誌での阿藤海

せんさうとスネエクマンのショオはじめ

犬の名にあたうファミリーコンピュータ

ツナ＝マヨの構図に故郷＝地球とし

幻聴の薔薇が魯迅にかれるとき

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