吹雪物語(南米のエリザベス・テイラー) 川柳70句
識閾下くらきバベルに春の雪
外は雪まかない飯のゲルを溶く
世界みな白くヤマザキパン祭り
ぷよぷよに二度とあり得ぬきょうの雪
雪の檻夏子の酒を預言して
コーヒー屋能記の雪が降りつもり
雪重し軍事小説万引きし
雪視つむタンスにゴンが在る限り
雪撮りし週刊ゴング切り抜いて
自我かたる架空言語に春寒し
春の雪リストカッター目つむれば
時計成す狂人軍に雪が降る
たらちねの原子心母の牛に雪
猿股をアンドロイドが穿きつぶす
鰐屋からチエホフ呪禁経ながれ
脳髄に光源の無しタロとジロ
ノリスケに此の世の果てて魯西亜文字
髭屋から森の生活はじまりぬ
ノックスの十戒破る私小説
埋め立てるモビルスーツの足の跡
かぞえ出すジョンとポールの乳首数
仏滅の受肉をされるペプシマン
城市出てコンピューターに或る駱駝
死者の書を誰かが換える纒足者
ポリティカル・フィクション内に蠅死んで
無名人眠るドラゴンクエスト忌
貝の名を張本勲らと決める
駱駝屋に起承転結する駱駝
駝鳥立つ駝鳥の暗示されたまま
超自我に超自我重ねアルファルファ
新しい単位のための袋町
啄木がモルモン経を既読する
生姜摺るトラック野郎ひとりきり
艦のなかバニーボーイの肉焼ける
レンジャーが敗れる街のクロッキー
クロサワが愛犬団を脱けて春
吸盤の形態模写をやめつづけ
誘導をやめかけて居るモツ煮込み
豊丸とアンダルシアの烏賊を視る
天皇と派遣社員が走り過ぐ
水糊をつかう心的外傷図
河馬死んで宝酒造に薄日射せ
暗刻をずっとあつめる不死の姉
われ老いてしだいに消える芋宇宙
熊の手とヤポンスキーが交響し
禁歌考こよみの上に二月来て
触角を鏡の国に失くす春
現存の地球の上に瓜を売り
ユカタンの現像会社また潰れ
限りある稗史に車寅次郎
パニックに武侠小説書き殴る
メートルを測らなかった齧歯類
雪の日に紅茶きのこの碑が建たる
明確の意識にて書くサナギイヌ
河馬を切るニジンスキーである前に
言葉無く地球の上に茶が凍る
吾と餡の止揚の果てにとんねるず
ドレスデンぬか警察の最期まで
カンブリア宮に飲尿療法し
萩本の解体ショーにあつまる子
基督のロック・オペラに水を売る
砂を売る仮想建築崩れはて
色界にミス・サイゴンのちからこぶ
肉まんをふたりのドリー穿ちあい
豚を漬け成城学園前駅
部屋の名にロッテが多いラブホテル
砂肝の在り処を示す宇宙船
同化する旗本たちのラブホテル
御殿場の逸見政孝死んで居り
百閒が超円盤に辿りつく
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