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ショートショート『ハルマゲドン』

※ 以前、noteから削除したショートショートを再掲載します。なぜ、削除したのか覚えていません。きっとパラレルワールド関係です、たぶん。😊

ショートショート『ハルマゲドン』


メキドの丘。この土地は、聖書に記されたハルマゲドンの地として知られている。その
丘で、大魔王サタンとメシヤである神が、にこやかに雑談をかわしていた。

「悪役のお役目、本当にご苦労さまでした」

「いやいや神様。ほかの星では私はメシヤを、あなたは魔王をやっているのですからおた
がいさまです」

サタンと神は握手をかわし、しばらく互いの苦労をねぎらった。

サタンは人々に絵画で描かれたように醜悪な姿ではない。聖書でも天使であった頃は美しい姿で、天に反逆し、堕天使になってからおぞましい身なりに変化したとされていた。

役目を終えた今は、サタンと神はみた目にはかわらない。透明なロ―ブ姿の、美麗な姿を
していた。

「さてさて、神様、時は新世紀。そろそろ地球人類を採点する時がきましたな。あなたが
神の愛を説き、理想世界を築くように導く。私は人に憎しみと疑いをもたせて、混乱に満
ちた世界にする。そのなかで人々が愛の意識を保ち続けているか、それとも憎しみに満ち
ているのかの意識をこの鏡に写しだすのでしたな。どうも、一万年に一度のことですから、
ついうっかり忘れることもありましてな」

「そうです。そして、もしも人々が愛を選択する意識が多ければ、愛を選択した者だけを
進化という〞卒業〟。少なければ〞落第〟。全体責任として人類すべてを一からやりなお
しということになるのです。至高の神も私たちの報告を待っているのですから、そろそろ
鏡に人類の意識を映しだしてみましょう」
 
神は空間に楕円型で、一メ―トルほどの鏡を出現させた。

鏡の表面は水面のようにゆらゆら揺れている。なんのふちどりも、装飾もされていないその鏡には、世界の光景がつぎつぎに映しだされていた。戦争による悲惨な光景。さまざまな犯罪や事件。環境破壊と病魔の数々。また、募金活動やボランティア活動の人々。芸術作品により心癒され力づけられる人々。

「サタンさん、あなたもなかなかやってくれましたね」

「いやいや、あなたこそたいしたものです。だけど、こうした映像だけでは人の意識の裏
はわからないものですな。天使のような顔と行為をしていても、私がぞっとするほどの想
いを抱いている者を数多く知っています。私なんか、いくら役目の上だといっても、人類
ほど極悪非道にはなりきれないですな」

「たしかに。あまりに残虐で狡猾な行為をみていて、導きを放棄しようとなんど思ったか
知れません。ああ、一万年。本当に長く感じましたよ」

しばらくため息をつき、そろそろと鏡にふれるサタンと神。その鏡に映しだされたものは数字と意識の種類であった。

『愛の意識・三十三%
憎悪の意識・三十三%』

「なに、同率か。しかし、あとの三十四%はどんな意識なんでしょうな……」

サタンが不思議そうにつぶやく。

神は、さらに鏡にふれて残りの意識をさぐる。そしてあらわれた数字と意識は、

『無関心・二十%
無気力・十四%』

「う~ん、いったいどうしたものかな」
「悩むことなどありません。私らも気にしないで、ジャンケンで決めましょうよ」

(fin)

YouTubeから、たまたま視聴しておもしろかった動画の紹介

目の錯覚の動画

トップ画像のクリエイターさんは『Pixabayフリー素材さま』


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