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フィリピン人に大統領のことを聞いてみた 2021 後編

前編はこちら

前編では、主にドゥテルテの支持者達の意見を紹介しましたが、後編では不支持者の意見を紹介していきます。

前回も紹介しましたが、私がフィリピン人30名に行ったアンケート結果は下記の通りで、不支持は全体の30%(9人)でした

支持率全体

しかもこの不支持と答えた9名のうち、5名が当初は彼に投票し、支持していたという。

ふむふむ、何があったのか気になるとこですな。

不支持の主な理由は下記の5つ。

①人権無視
②ダバオ時代と違う/公約違反
③コロナ対策悪すぎ
④中国にしっぽ振りすぎ
⑤口悪すぎ

①人権無視
これはいわずもがなですが、ドゥテルテの一番有名な実績である麻薬関連の取組において、彼はかなりの数の麻薬犯罪者を殺しています。彼が殺したというか、彼が組織する警察や、自警団によってですが。

簡単に言うと、彼は「麻薬犯罪者は全員殺す」という、こどもの頃に皆が一度は思ったことがある「悪い奴は皆死刑にしたらいい」という発想をそのままマジで実行したんですよね。というか、現在進行形です。

これが効果てきめんでフィリピンの治安は根本からよくなったんですが、やはりこれは一歩間違えれば、というか普通に独裁者の発想なので非常に危険だし、人権とか完無視やんってやつです。

しかも、一部の報道(事実?)によると、無実の人も多少巻き込んでいるケースもあるそう。このあたりがやはり、やり玉にあがるのは仕方のないことでしょう。

しかも、この点を批判する活動家や大手メディアに対して、大統領権限で拘束したり、業務停止にしたりとかなり強権的な対応をとっていることも、余計に非難されているようです。

この点に関しては、支持派、不支持派の言い分を聞いていると、個人的には格差社会のようなものを感じます。

というのも、この点を批判している人は、大学まで出るほど家庭に余裕のあった人、および教養のある人が多く、実際に治安最悪の地に生まれて、日々犯罪と隣り合わせに生きてきた貧困地域の人々は、この人権の点を踏まえてしても、功績を讃えているケースが多いように感じました。

ミンダナオ島なんかは、フィリピン国内でも最低の治安でいつ殺されてもおかしくないと言われていたほどの島でしたが、ドゥテルテがこの島のダバオ市長を務めてから激変し

今ではフィリピン国内で一番治安が良い島とまで言われるようになっていますので、やはりそれを実感してきた人たちは支持する傾向が圧倒的に多く、ミンダナオ島出身者からの支持率は67%にも上りました。

②ダバオ時代と違う/公約違反
これは特に当初支持していたが、不支持に変わってしまった人たちに共通していました。ダバオ時代の功績をそのまま国政にもヨコテンしてくれると思っていた、というか大統領本人もそう言っていたのに実際蓋開けてみると、全然違うやないか!というもの。

犯罪に関しても、ダバオ時代はドラスティックに凄いスピードで改善していったのに、フィリピン全体となると、遅々として進んでないところもあり、約束と違う、と感じている人が多いようです。

この件に関しても、両者の話を聞いていると、どうやらドゥテルテには敵が多すぎることが問題なようで、特に副大統領との仲は最悪らしい。

「副大統領と仲悪いとかありえんの?大統領が選んでるんじゃないん?」

と思ったんですが、フィリピンでは副大統領も選挙で選ばれてるので、アメリカのそれとは全く事情が違うようです。

そら自分で選んでなければ、政敵が副大統領になることもあるわけで、事情は複雑そうやな。

で、副大統領だけでもややこしいのに、他のほとんどの政治家、各自治体の首長も含めてだいたいが彼の敵である。

これは支持不支持に関わらず国民のほとんどが同意していることなんですが、フィリピンの政治家の大半が汚職政治家であり、彼らは私利私欲しかないので、国のことを本当に考えて既得権益や汚職にメスを入れているドゥテルテとは当然敵対関係にある。

なので、ドゥテルテの取組が進まないケースは彼らの抵抗がそこかしこにあるとのこと。

それを全部、大統領一人に負わすのは、ちょっとちゃうんちゃうか~

③コロナ対応悪すぎ
これはフィリピンに限ったことではなく、我らが日本を含む、多くの国がその愚鈍な対応によって、国内でのパンデミックを招いており、未だに収束が見えません。

ことフィリピンに関しては、中国との結びつきが強く、観光や投資、ビジネスで大量の中国からヒト・モノ・カネが流れて込んでいたんですが、これがコロナで完全に裏目に出ました。

しかも、コロナ騒ぎが出てからも、しばらく中国からのこの流れをストップしなかったせいで、フィリピン国中にあっという間に蔓延してしまい、アジアでもワーストを競うような状況になってしまったんです。

まぁ、外交、経済の観点から考えると、難しい判断やったんかもしらんけど、これはあきまへんな。ドゥテルテはん。

これは次の④にも繋がる話なんですが、国民感情としては中国は嫌いなんです。先ほど、中国との結びつきが強いと書きましたが、実は中国はフィリピンの領海を侵攻し、島を不法占拠をしたり、フィリピン人漁師を拿捕しまくったりしていたことが原因で2016年には国連裁判で争っているんですね。

しかもフィリピンが勝訴してます。

にも関わらず、いつもの中国節で、判決を完全無視して、全く態度を改めなかったんです。そして、どこの国も助けてくれなかった。

それにブチ切れたドゥテルテは「国連もアメリカもカスや」と啖呵を切って、外交方針を180℃転換。

親中に変えてからは、先述した通り、良好な関係を築いているんです。
フィリピンに力があれば、戦争も辞さなかったでしょうが、中国を相手にするほどの軍事力もなく、国民を守るために背に腹は代えられないという苦渋の決断だったようです。

が、これが国民にとってはやはり面白くないんですね。

で、不運なことに、中国発のコロナの影響を今回もろに食らってしまったと。

④中国にしっぽ降りすぎ
さて、先ほどからの続きになりますが、中国にしっぽ降りすぎだと感じている国民は多いようで、これは不支持派だけにとどまりません。

もともとフィリピンは親米国であり、アメリカと同盟を結んで中国に対抗姿勢をとっていました。国内には米軍基地もあり、もちろんヒト・モノ・カネも流れこんでいて、国民も親米感情が強いんですが

ドゥテルテになってから、アメリカをカスと罵り、今までの関係をひっくり返して親中派に舵を切ったという経緯があるんです。

国民からは「ドゥトルテは中華系だから、中国に国を切り売りして、私腹をこやしている」という意見も出るほど。

しかし、このドゥテルテの行動は非常に理にかなっています。

実は同盟国であるはずのアメリカが、このフィリピン海域侵犯問題(南シナ海の領有権問題)で中立を保ち、なんと「有事の際に同盟条約に基づきフィリピンを支援することを確約しない」と明言したんですよね

何のための同盟やねん。お前の基地は何のためにあんねん?あほか。しばくぞアメ公。

ということで、至極まっとうな理由でドゥテルテはアメリカに対してキレたんですよね。

全く役に立たない、国連とアメリカ。

ドゥテルテのこの外交方針転換のおかげで、誰も味方いない状況で一方的に中国から略奪されるだけの現状だったのが、今は中国と良好な関係を築いてヒト・モノ・カネが入ってきてるし、フィリピン人漁師たちが拿捕されることも無くなりました。

ちなみに、未だにちょいちょい中国のヤクザ行為は続いてて、その度、フィリピンは外交で正式に異議を申し立ててます。

そして、今回の調査でわかった新事実なんですが、ドゥテルテが親中に舵を切った狙いはこれだけでなく、実は国内の汚職政治家の弱体化も狙っていたんです。

既に述べたように、大半のフィリピン政治家は汚職にまみれており、前編でも書きましたが、漫画のような嘘みたいなことが横行してるんですよね。

で、アメリカとはずっと良好関係にあったために、こいつらがまたアメリカがらみの利権で私腹を肥やしてるんですよ。当然その半面、誰も中国がらみの利権は無いと。

なので、今回、アメリカとの関係を切ったのは、こういう狙いもあったことから、汚職政治家たちは自身が所有する大手メディアなどを通じて、ドゥテルテのあることないことを報じまくって、国民を洗脳してるという構図があるんです。

こういうの見てると、逆にドゥテルテ有能過ぎん?と思ってしまいますよね

まぁ、この記事もあくまで僕が集めた事実に基づく、僕の主観で書いてますので、鵜呑みにせず、ご判断は皆さんにお任せします。

⑤口が悪い
これはもう避けられまへんな(笑)
支持者ですらマジで怒ってる人いるからね(笑)

今回のアンケートに答えてくれた人の中には、元教師や現役教師がいましたが、とにかく子供の教育に悪いから、マジであれは一国の首長として、直してほしいと言ってました。


ちなみに今回、支持、不支持を見ていて気づいたことがありました。

回答者の出身島によって偏りがあるということ。

首都マニラがある北部のルソン島では、支持派が21%に留まるのに対して

中部のビサヤ諸島では50%、南部のミンダナオ島67%にも上る。

フィリピンでは大きく分けて、現地語はタガログ語とビサヤ語があり、北部はタガログ語、中・南部はビサヤ語になるため、ミンダナオ島出身のドゥテルテ大統領は、バリバリのビサヤ語である。

このビサヤ語、フィリピン人に言わせると、喧嘩してんのか?と思うくらい声のトーンが大きく、ビサヤ語話者じゃ無いと威圧的に聞こえるらしい。
日本人が持つ中国語の印象に似てんな(笑)

それもあってか、北部のタガログ語話者にとっては、威圧的で口の悪い大統領というイメージが強いんだと。

この傾向に関して、南部出身者に聞いてみたところ

「それはあるな。ルソン島はお高く止まってるやつらが多いから」
「北部の人間は、南部の人間を馬鹿にしてるとこあるねん」
「南部差別あるからなー。あいつらは野蛮人、みたいな」

という風な同調意見が多数出てきたんですが、これらの意見をさらに、北部出身者に当ててみると

「いや、そんなこと思ったこともないし、聞いたこともない」という回答しかありませんでした(笑)

これは被害妄想なのか、それとも事実なのかは、僕には判断がつきませんでしたが、日本における大阪人の東京への被害妄想みたいな、ネタ的な感情であることを祈ります。

以上、今回はフィリピン人30人へのアンケート、及び分析に関して更に十数人のフィリピン人、及びメディアのニュース、日本政府の記事を参考にまとめましたが、いかがだったでしょうか?

少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。




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