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フォンダンショコラ。

ある、6月の午後。空はどんよりと曇っている。

こんな天気は苦手だ。なんとなく気分も沈んでしまう。
気を紛らわせたくて、お菓子を作ることにした。

ちょうど3時。おやつの時間だ。



甘くて、温かくて、簡単にできるもの。
レパートリーはそんなに多くない。唯一思いついたのが、フォンダンショコラ。

冬のイメージが強いけれど、他に思いつかないのだから仕方がない。
第一、もうフォンダンショコラの口になってしまっている。

電子レンジで作れるレシピを調べながら、前回作ったのはいつだったっけ。と考えてみるけれど、思い出せない。中学生の時かもしれない。急に食べたくなったんだっけ。
あれは、冬だったのだろうか。

その前は、小学生の時。バレンタインデーに、40個近くを配って回った。押し付けた、といってもいいかもしれない。何人かの女の子と、クラスメイト全員に配ろうと張り切って準備した記憶がある。

バレンタインといえば、小学1年生からずっと、私にとってはお菓子の作りどき。
毎年初めてのレシピに挑戦して、友達と交換する。
今年も上手くできたな。なんて思いながら。

はじめの頃は、家族の誕生日やクリスマスなどのイベントごとにも便乗していたけれど、だんだんと腰が重くなって、今ではバレンタインだけ。
回数が減ったのは、前回よりも難しいものを作りたい。と思うようになってからだったと思う。工程の多さが目について、楽しさに面倒臭さが勝ってしまったのだ。

趣味や特技を聞かれれば、お菓子を作ること。と答えていた時もあったけれど、頻度が減ってからは、言い淀んでしまう。
周りにお菓子作りが好きな人、得意な人が増えたことも要因かもしれない。

シフォンケーキ。失敗して諦めてしまったけれど、妹は一度で美味しく作ってみせた。簡単だよ。なんて言って、時々作ってくれる。



そんなことを考えているうちに、完成だ。
思ったよりも時間がかかってしまった。レシピよりも、容器が大きかったのかな。

フォンダンショコラみたいに油分が多いお菓子は、焼き上がりが分かりにくいと思う。
できた!と思っても、しっとりとした食感に不安になって、つい焼き過ぎてしまうことがある。

母に、できたてをおすそ分け。「凝ったお菓子を作るんじゃなかったの?」と聞かれた。

「今日は、お菓子を作るって言っただけだよ」

「難しいお菓子担当だって言ってたのに」

母の作るお菓子は美味しい。
学校から帰ると、手作りのおやつが置いてあることが嬉しかった。

リクエストしたお菓子のいくつかは、「ママは簡単なお菓子担当だからね」と断られてしまったけれど。

一番好きなのは、バナナのパウンドケーキ。
でも、母はバナナがあまり好きじゃない。



最近は、せっかく苦手じゃないのだし。難しくなくても美味しければいいか。と、私も月に一度くらいはお菓子を作っている。

リクエストは受け付けていない。気の赴くまま、食べたいときに食べたいものを作る。
食べたいときに作り始めるから、出来た時には気分ではないこともあるけれど大丈夫。


お菓子作りが好きな2人は、食べるのも好きだから。

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