労働判例を読む#179

「イヤシス事件」大阪地裁R1.10.24判決(労判1218.80)
(2020.8.20初掲載)

 この事案は、リラクゼーションサロンYで、整体やリフレクソロジー等の施術などを行っていたXらが、業務委託ではなく雇用であるとして、未払賃金の支払いを求めた事案です。裁判所は、雇用であると認定しました。

1.判断枠組み(ルール)
 裁判所は、従業員性に関する判断枠組みを明示していませんが、その判断を示す判決理由中の章立てから、以下の3点が、判断枠組みであることがわかります。
 すなわち、①業務従事時間の拘束性、②報酬の労働対価性、③諾否の自由、業務の内容・遂行方法に関する指揮命令、業務従事場所の拘束性、事業性等、の3点です。
 これに、実際の契約内容や運用状況を当てはめて、従業員性が認定されています。

2.実務上のポイント
 本事案では、多店舗よりも料金設定が安いうえに、新規開店した店舗で、競争や経営環境が厳しい一方、支給される金額は最低賃金を下回るもので、しかもリラクゼーション業務経験の乏しい者がほとんどで、その厳しい経営リスクを背負わされている状況にある点が、特に注目されます。
 もちろん、新しい形態の店舗を、社外の業務委託先に任せて立ち上げることがいけない、というわけではありませんが、問題は、それに見合うだけの専門性が無ければ、リスクに見合うだけの報酬も無い、という関係が、果たして業務委託の実態を備えているのだろうか、という点が、最大の問題と思われます。経験の乏しい者を集めれば、必然的に、仕事の進め方について細かい管理監督や指示が行われることになるでしょうから、さらに労働者性が強くなります。
 このように、「従業員性」の問題は、職場や会社のビジネスモデルともかかわってくる問題なのです。

※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!


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