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労働判例を読む

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#固定残業代

労働判例を読む#468

【酔心開発事件】(東京地判R4.4.12労判1276.54) ※ 司法試験考査委員(労働法)  この事案は、飲食店の調理担当者・料理長として勤務していた原告Xが、会社Y退職後、未払いの時間外手当(及びこれに対する付加金)の支払いと、不当に解雇されたことなどを理由とする損害賠償を、Yに対して請求した事案です。  裁判所は、時間外手当と付加金について、請求の一部を認めてその支払いをYに命じましたが、損害賠償については請求を否定しました。 1.時間外手当  ここでは、労働時間

労働判例を読む#144

【グレースウィット事件】東京地判H29.8.25労判1210.77 ※ 司法試験考査委員(労働法)  この事案は、4人の中国人元従業員X1~X4が、会社Yに対し、在籍中の未払賃金などの支払いを請求した事案です。厳密には2つの会社がそれぞれ2人ずつ雇用していたことになっていますが、裁判所は両者を一体と評価しています(法人格否認の法理)ので、ここではYとして取扱います。  非常にたくさんの論点がある事件ですが、裁判所はその多くについてXらの主張を認め、Yに未払賃金等の支払いを

労働判例を読む#438

今日の労働判例 【栗田運輸事件】(東京高判R3.7.7労判1270.54) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、経営状況が悪化した会社Yが、人事制度(就業規則)を変更して固定残業代制度を導入したところ、これによって収入の減った従業員らXらが、従前の給与との差額等の支払いを求めた事案です。

労働判例を読む#436

【アルデバラン事件】(横浜地判R3.2.18労判1270.32) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、看護師Xが、居宅介護サービスを提供する会社Yに対して未払賃金等の支払いを求めた事案です。緊急看護対応のための待機時間が労働時間かどうか、早出残業や居残残業はどうか、昼休みに労働していたか

労働判例を読む#422

【株式会社浜田事件】 (大阪地堺支判R3.12.27労判1267.60) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、元従業員Xが、会社Yに対し、残業代などの支払いを求めた事案です。Yの就業規則には、固定残業代に関する規定だけでなく、賃金規程

労働判例を読む#130

【国・茂原労基署長(株式会社まつり)事件】 東京地裁平31.4.26判決(労判1207.56) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案では、固定残業代のルールが合意されているため、残業代が発送しないとする使用者側Yの主張の当否が論点となりま

労働判例を読む#405

今日の労働判例 【ライフデザインほか事件】(東京地判R2.11.6労判1263.84) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、不動産会社Yで便利屋業務の事務的なサポートをしていた元従業員Xが、未払賃金等の支払いを求めた事案です。  裁判

労働判例を読む#371

今日の労働判例 【フーリッシュ事件】(大阪地判R3.1.12労判1255.90) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、洋菓子店Yで勤務していたパティシエXが、割増賃金の不払いを理由に損害賠償を請求した事案です。  裁判所は、Xの請求を

労働判例を読む#337

今日の労働判例 【KAZ事件】(大阪地判R2.11.27労判1248.76) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、飲食店Yの従業員Xが、退職後に、未払の残業代の支払いを求めた事案です。裁判所は、その請求を一部認めました。なお、祝日手当

労働判例を読む#77

今日の労働判例 【阪急トラベルサポート(派遣添乗員・就業規則変更)事件】 東京高裁平30.11.15判決(労判1194.13) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、最高裁まで争われた事件に関連する事件です。依頼を受けた会社に派遣添乗員

労働判例を読む#295

【ブレイントレジャー事件】(大地判R2.9.3労判1240.70) (2021.6.27初掲載) ※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法) ※ 司法試験考査委員(労働法) ※ YouTubeで3分解説! https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK  この事案は、ホテルYで、フロントや部屋の清掃、軽食の調理など、幅広い業務を担当していた業務委託契約者Xが、労働基

労働判例を読む#63

【イクヌーザ事件】東京高裁平30.10.4判決(労判1190.5) (2019.5.10初掲載) この事案は、定額の残業代を約束していた会社で、その約束自体が無効であると争われた事案です。1審は、約束を有効としましたが、2審は、約束を無効としました。 1.無効である理由 この約束は、具体的には、月80時間の残業を想定し、計算された定額残業代の約束です。 この約束について、裁判所は、厚労省が出した「業務上の疾病として取り扱う脳血管疾患及び虚血性心疾患等の判断基準」の中で、業

労働判例を読む#47

【ケンタープライズ事件】名古屋高裁平30.4.18判決(労判1186.20) (2019.2.22初掲載) この事件で、二審は、居酒屋の店長として働いていたが、管理監督者に該当しない元従業員について、役職手当がいわゆる固定残業代に該当しない、として、時間外手当と付加金の支払いを命じました。一審と二審で判断が異なる部分もあり、論点は多岐に亘りますが、ここでは、以下の点について検討します。 1.勤務時間 この事件では、業務開始時間、休憩時間、業務終了時間の認定が問題

労働判例を読む#217

【木の花ホームほか1社事件】宇都宮地裁R2.2.19判決(労判1225.57) (2021.1.8初掲載)  この事案は、幹部社員として期待されて中途採用された社員Xが、会社(関連会社内での転籍がありますが、この経緯は省略します)Yでは能力などが評価されず、減給やパワハラ等を受けたため、未払の給与やメンタル疾患の損害賠償の支払いを求めた事案で、裁判所はXの請求を概ね認容しました。 1.減給  減給の合理性について、裁判所は山梨県民信組事件(最判H28.2.19労判113