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労働判例を読む#405

今日の労働判例
【ライフデザインほか事件】(東京地判R2.11.6労判1263.84)

※ 週刊東洋経済「依頼したい弁護士25人」(労働法)
※ 司法試験考査委員(労働法)
※ YouTubeで3分解説!
https://www.youtube.com/playlist?list=PLsAuRitDGNWOhcCh7b7yyWMDxV1_H0iiK

 この事案は、不動産会社Yで便利屋業務の事務的なサポートをしていた元従業員Xが、未払賃金等の支払いを求めた事案です。
 裁判所は、Xの請求を一部認めました。

1.労働時間
 ここで特に注目されるのは、労働時間の認定です。
 近時、いわゆる早出残業については、なかなか労働時間と認定されないのに対し、居残残業については、労働時間と認定される場合が多いのですが、この判決もこの傾向と同じです。すなわち、始業時間とされる10時以前に出社していても、その時間は労働時間と認定されていないのに対し、就業後に職場に在室していた時間は労働時間と認定されています。
 本判決では明言していませんが、この背景には、早めに出社するのは、例えば通勤の混雑を避けたり、気持ちに余裕を持ったりするため、すなわち自分自身の気持ちや体調を整えるためのもので、仮に始業時間前にメールを整理したり資料を整理したりすることがあっても、始業後に集中して行えば簡単に片付く程度のものが多く、業務として会社に指示されたものとは言えない、という判断が一方であります。他方で、居残残業については、わざわざ自分のために好き好んで職場に残る場合は少ないであろう、という判断があります。つまり、始業時間前に出社するのは、自分の好きでやっていることが多いだろうが、就業時間後に職場に残るのは、好きでやっているというよりも仕事としてやることがあるからであろう、という一般的な経験則が背景にあるのです。

2.実務上のポイント
 Yでは、当初就業規則もない状況でした。したがって、業務手当が割増賃金として支払われていた、というYの主張も、裁判所から否定されてしまいました。
 小さい会社であっても、従業員を雇う以上は労基法、最賃法など、最低限守るべきルールがあります。このようなルールを守ることの重要性が改めて確認される裁判例と言えるでしょう。

※ JILA・社労士の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!


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