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破天荒な父親を持つ娘あるある

結婚して10年近く経つが、結婚後、「破天荒な父」と会ったのは2回ほどだと思う。そもそも実家にいた頃もおそらく一般の家庭よりも顔を合わせる回数は少なかったし、いまだに父親が何をしているのかよくわからない。

小学生の頃からもう既に、父は「たまに帰ってくる人」だった。たまに土曜日の夜にいて、回らないお寿司屋さんだとか、ちょっといい焼肉屋さんに連れていってくれる存在だったので、特段嫌いではなかったと思う。しかし、日曜日に「遊園地に行こう」と競馬場だったり、「ゲームセンターに行こう」とパチコン屋に平気で連れて行くような人だったし、家族旅行も一緒にしたことはなかった。

そして、中学生の頃は破天荒な父のビジネスがどうやらうまくいかなくなり、家に「お父さんいませんか」という電話が頻繁にかかってくるようになり、家のドアをドンドンドンと叩いて「〇〇さーん、いませんかー」と訪ねてくる人だったり、裁判所や金融機関からの封筒が届くようになった。この頃から父は回らないお寿司さんに連れていってくれる人ではなく、たまに帰ってきて、母の財布から一万円札を抜き取っていく人になった。

その後、夜逃げのように家を引っ越したりだとか、この頃の記憶は思春期に暗い影を落としたわけだけれども、おかげで父に似た人とだけは結婚してはならないと強く、強く認識するようになった。ときどき偉そうな態度をするけれども、誰とでもすぐに仲良くなって、何となく面白そうな人だなーと周りに人が集まってくる。そして、誰かの下で働くのが好きではなくて、新しいアイデアを思いつくと、すぐにやってみたくなって、会社をつくってしまうようなタイプだ。
父のようなタイプの人は世の中にたくさんいるし、人間として面白いとも思うけど、結婚して所帯を持つには向かない人が多いだろうなと認識している。

夫はまるで正反対のタイプだ。少し人見知りで友達は多くないけれども、新卒からずっと同じ会社で営業職をしていて、起業どころか、転職も考えたこともないような、石橋を叩いて渡るようなタイプ。実直で真面目な人柄は、親戚の誰しもに「いい人だ…」と評価される中、父は面白みがないと言っていたと思う。顔合わせで「いいニューハーフバーがあるんだけど」と誘ったときの反応が気に食わなかったようだ。逆に、よく夫があの父親の娘である私と結婚してくれたなとすら思う。

どんな父親でも娘の価値観には影響を与えると思うが、破天荒な父親を持つ人ほど、地に足をつけた考え方をするのではないだろうか。姉は食いっぱぐれという理由で看護師になった後、職場恋愛で医師と結婚しているのがまたすごいと思う。

そんな私や姉の価値観に大きな影響、爪痕を残した父親だが、父とのエピソードで印象的なのは、伊勢海老のUFOキャッチャーである。今では考えられないのだけれども、私が子供の頃は本当に伊勢海老のUFOキャッチャーというものがあった。負けず嫌いの父は、何千円も使い、何とか伊勢海老を手に入れ、それを見ていた私や姉は本当に取れたことに驚いた後に、すごく大爆笑した。父は誇らしげであったが、家に持ち帰ると、「母は誰が調理するの!」と随分と怒っていたように思う。でも、何となく笑いながら、結局、味噌汁にしてみんなで食べた気がする。それは我が家でも幸せの象徴のような風景だった。

何でつらつらと父親のことを思い出したかと言うと、最近、姉が2人目の子どもを出産した際、とても久しぶりに父から連絡が来たようなのだ。

「出産おめでとう。ところで、(中略)20万円貸してくれないか」
怒りを通り越して、人間とは変わらないものだなという諦めの境地だ。

破天荒な父、それは嫁いだ後にも油断できない存在。


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