見出し画像

蛍光灯と谷崎潤一郎「陰影礼讃」 - 灯りの持つ精神効果からの妄想

どうもメキシコ料理にハマっている1610です。

ぼくの職場はそんなブラック企業とかではないんですが、ひとつ困るのが蛍光灯が煌々と照らされていることです。

仕事場ってどういうわけであんなに大量の蛍光灯を照らす必要があるんでしょう。

ぼくが神経質なのもあると思うのですが、ああも隅々まで照らすのは電気の無駄であるのはもちろん、心身にもにいい影響がないと思うけどな。


光の持つ効果は侮れない


例えば科学的には「蛍光灯の白い灯りは集中力を高める」効果が言われています。

だから「一時的に集中したい時に灯りをつけて短期集中」とかなら分かるんですが.......朝から晩まで、まるでひとかけらの陰影も部屋の中に残すまいとばかりに真っ白な灯りで照らすのはぼく的には逆効果だと思うんですよね。

まあ世の中、暗い部屋じゃないと寝れない人も逆に灯りがないと寝れない人もいるわけで、人の感じ方の差って難しいところですが。

せめてデスクライトの設置を許してくれれば、そして時間外業務の夜くらいは部屋を少し暗くしてくれれば、個人的にはだいぶ楽なんだけどな。

ちなみに、白い光と対照的に、黄色い光は「クリエイティブなアイデアが生まれやすい」ことも証明されています。

同じく「天井が高い空間も創造性を高める」ことも分かってるので、創造性を引出したい方は天井が高くて黄色っぽい蝋燭の明かりが満ちたホグワーツの食堂みたいなところを探されたらいいんじゃないでしょうか(どこにあるのかは知らん)。


陰影礼賛は谷崎の幻想?


ところで谷崎潤一郎の随筆に陰影礼賛という本があります。

谷崎版「茶の本」みたいな感じで、この中で日本と西洋の文化、とくに「光に対する考え方」を比較してるのですが。

谷崎に言わせれば、日本美と「陰影」には密接な関係があります。

例えば蒔絵。

あの漆の黒い中に金箔で描かれた幻想的な模様は、谷崎曰く「庇の深い日本家屋の暗がりの中でこそ生きる」ものだそうです。


蒔絵を画く時は、必ずそう云う暗い部屋を頭に置き、乏しい光りの中における効果を狙ったのに違いなく、金色を贅沢に使ったりしたのも、それが闇に浮かび出る工合や、燈火を反射する加減を考慮したものと察せられる。つまり金蒔絵は明るい所で一度にぱっとその全体を見るものではなく、暗い所でいろ/\の部分がとき/″\少しずつ底光りするのを見るように出来ているのであって、豪華絢爛な模様の大半を闇に隠してしまっているのが、云い知れぬ餘情を催すのである。そして、あのピカピカ光る肌のつやも、暗い所に置いてみると、それがともし火の穂のゆらめきを映し、静かな部屋にもおり/\風のおとずれのあることを教えて、そゞろに人を瞑想に誘い込む。もしあの陰鬱な室内に漆器と云うものがなかったなら、蝋燭や燈明の醸し出す怪しい光りの夢の世界が、その灯のはためきが打っている夜の脈搏が、どんなに魅力を減殺されることであろう。 〜谷崎潤一郎「陰影礼賛」〜


この独創的な随筆は、谷崎流に日本美を適切に説明したものという意見もあれば、日本文化論というよりは谷崎個人の妄想として(つまり谷崎自身も自覚的に批評の形を借りて、一種の幻想小説として)書かれたものという意見もあります。

ただ、谷崎の言うように、江戸以前の日本は現代では考えられないほど暗いもので、同じ時代の西洋と比較しても陰影が深かったものであることは確かでしょう。

例えば西洋の教会と日本の寺院の比較。

西洋の教会が光の効果を計算して天井が高く窓が広くとられているのに対し、日本の寺院は日本家屋と同様に庇が深くその中に金色の仏像がちらちらと光っている。

一方が光によって、他方が闇によって宗教的な救いを演出するというのは象徴的ではないでしょうか。

かつて陰影を愛した日本人は、現代では電飾に取り憑かれているように見える

例えば陰影のなく平面的で色彩にあふれたアニメもそうだし、街並みにしても、通りすがりの宇宙人がそれだけ見れば「この星で日本人ほど主張が強い民族はいまい」と思いそうなほどネオンと電飾広告で満ち満ちています。

陰影礼賛の中でも「日本とアメリカほど電飾をこのむ国はない」とすでに言われていますが、その傾向は現代に至ってますます顕著になっている気がします。

この対比のいい悪いはともかく、なんだか面白いよなーって思うわけです。


追記:


ぼくは体のリズム、バイオリズムって大事だと思う。

朝の日光でセロトニンが分泌されリズムが作られるのは有名な話ですよね。

スマホのブルーライト問題もたまにテレビで取り上げられます。

なのに職場の光環境については全然省みられないのが、残念です。

スマホより職場の証明の影響の方がぜったい影響あると思うけどな〜。


おまけ

スマホってピカピカ明るいよね。
光に敏感なぼくはKindle Paperwhiteを愛用しています。
E-inkなので目に優しいです。

読書は暗い部屋ですると集中できます。
Kindleをお持ちならこちらの書籍を楽しんでみては?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?