第178怪~キレンジャー瘋癲
昔、昔のお話です(詩人オウムの世界)
いつぞやの一人旅で訪れたとある酒場で、派手な化粧に赤いコートを纏った女性がダリアの古いシャンソンレコードにあわせて、奇妙な歌を歌っていた。
あまりにも奇妙な歌だったので、僕はお願いをして、その女性に何度もその歌を歌って貰っては、その詩をいつも持ち歩いていたネタ帖にこっそり書き連ね、彼女に見た事もないようなラベルの貼られたウォッカだかジンだかの安酒を振る舞い、共に酔い潰れ、その日のうちに有り金すべてを使い果たしてしまい、結局その日は酒場で終夜、歌を歌い続けた…
という事があった。
で、その歌というのが、テリーファンク&ドリーファンクJrによるザ・ファンクス、もしくはジャンボ鶴田&天龍源一郎による鶴竜コンビばりのタッグを飴彩 里沙羅と組んでいる瀉葬文幻庫の入場曲、長州力でいうところのパワーホール的な存在となるのである。平沢だな。
で、先日、何気に作業場を片付けていたら『地球の歩き方・バチカン諸国篇』と共に、その当時のネタ帖が出てきた。と、そのネタ帖に書きとめておいた詩が次の詩である。
当時、『瘋癲って何?』と、家庭の異學を開いてみたら、
と書いてあった。
山田洋次監督、映画『男はつらいよ』の渥美清さん扮する車寅次郎は、スクリーンの中で『フーテンの寅』として、たまに帰郷しては、とっかえひっかえマドンナ達を巻き込んでは、しっちゃかめっちゃかと事件を起こす、云わば爆弾野郎である。そんな国民的人気爆弾野郎の肩書が『フーテン』…
僕が崇拝する作曲家、J・A・シーザー氏も当時は『三大フーテン』と呼ばれていたそうだ。フーテンとはヒッピーの同義語でもあり、何にも縛られず自由に、愛や平和をモットーに生活する者を指す言葉であるが、日本では何故かフーテンと呼ばれた。
仕事もせずにフラフラと彷徨き、音楽や政治運動、大麻に溺れる若者を、暗喩な意味で『瘋癲』を『フーテン』に置き換えたのであろうか?はたまた因果性があるのだろうか?
あるとしたならば、スクリーンの中でしっちゃかめっちゃかと、浅岡ルリ子なんかを翻弄させる寅さんは、瘋癲の寅として、佯狂芝居を行っていたのだろうか?撮影が終わり、現実の時間へと戻らされた渥美清は、正常な渥美清へと戻る事が出来たのか?
横溝正史原作・映画『八つ墓村』で、渥美さんが金田一耕助役を演じておられたが、残念ながら僕には『フーテンの寅』にしか見えなかった。名探偵の筈が、「このタコ社長!」と声を荒げる爆弾野郎にしか見えないのだ。フーテンの寅による瘋癲の呪縛がいつまでも渥美清さんにはまとわりついてたかもしれない。国民的俳優までもが、フーテンという瘋癲に冒されてしまっていたのだ。まさにイメージの擦り込み、洗脳、怪帰、、デンパ!である。
わかりやすく言うと、風味は変わるけれどもゴレンジャーのキレンジャーはカレーが好き、故に、キレンジャーのように太っているキャラはカレー好き、まあ、ウガンダ・トラさんがカレーは飲み物と称したのもあるけれど、そんな瘋癲…う~ん、ちょいと違うか?(ここで寅さんとトラさん被りした事に気がつく)
キレンジャーを演じた畠山麦さんも、そんな【キレンジャー瘋癲】という被害者なのかもしれん。冒頭に挙げた赤いコートを纏った女性も、こういう奇妙な詩を歌っている割には平静を装ってはいたが、その平静が佯狂であったとしたら益々解らなくなってしまう。まさにつぶらな月に、黒点一つ。のぞきからくり、愚者の群、世は全て佯狂犯罪の巣窟となるのである。
で、ただひとつ不思議な話があるのだが、この詩をネタ帖に書いたその酒場での一連の出来事なのだが、あくる朝、目を覚ますと、そこは酒場では無く、酒場の裏にある墓場だった。結論、店から放り出されたのであった…
そう、フーテン…として。
そんな瘋癲唱歌が聴けるイベント、7月6日に開催されますよ。
チケットはパスマーケットでも販売、アニアニでも販売しております。
ストロベリーソングオーケストラの次怪の犯行は5月12日の日曜日!
盟友・松山勘十郎座長の記念興行『松山魂』に参加します!
こちらでは終演後の物販ブースにて演者全員登場しますので、久々の念写なんかを販売したりするかもしれません(皆さんの旅の思い出として)
そしてそして!!
ストロベリーソングオーケストラの単毒公演もチケット発売しておりますよ!
こちらの稽古・スタジオリハも始まり、僕も諸々の作業が始まりだしました。毎度交霊の自ら首を絞める演出プランの為、僕を筆頭に、メンバー全員は勿論のこと、裏方の阪本君までが大混乱な公演となっております。
まだまだチケット発売中なので、皆さん是非8月4日は西成クラブウォーターにて雨に打たれましょう!
チケットはストロベリーソングオーケストラの通販、アニアニ店頭でも販売しております。
皆さん、各公演、目劇バキュン!是非宜しくお願いします!!
それでは連載で行っている『BARギロチン-昼酒』の続きデス。
今回で最終回となります。またこちらの作品は後程纏めて作成したいと思いますので、少々お時間ください。
BARギロチン-昼酒 8杯目
町の電妄掲示板にこんな噂話が流れてきた。
電妄掲示板の画面を瞽に見せながら、そのモノが酒を口にした。
まあ、目が見えない瞽だ。故に自動音声でその文字を再生してもらい、一通り噂話を耳にした。
「なるほど、面白い。それでアナタがその」
「そう、私がその」
「酒童、、?」
瞽がそのモノに恐る恐る聞くと、暫く静寂が訪れたかと思うと、ニヤリと笑ったそのモノが笑いながら
「そう、私がその酒童、、と、本当にそんな鬼だったら面白かったんですけどね」
と、おどけた。その顔は少し赤くなっている。それが酒のせいなのか、それとも恥ずかしいからなのか。
「ははは!愉快、愉快!」
瞽が店内に響き渡る程の大笑いをしたところで、クイっと酒を煽ったそのモノが再び口を開く。
「酒を呑まないとこういった譚も出来ずでございまして、ささ、どうぞお飲みになって」
相変わらず持前の酒を注いでは促すその様子を、ギロチンのマスターはジトっと死んだ魚の目のように見つめるが、あえて注意はしない。
「どうでしょう?先程私がお話しました、コトノハ遊びをしませんか?」
「ああ、良いよ。酒童にでも喰われたなんて譚が広まったら彼方此方で特殊警察の奴等がうろつくだろうから、こうやって美味い酒が呑みやすくなるわな。さあ、喰うか喰われるか、」
コトノハ遊びと称された時間がどれほど経った事だろうか。
と、そのモノは酒呑みたさに詩人と化し、携えた一升壜に詰まった酒を徳利に注いでは酒場から酒場へと巡ってこの譚を客に持ち寄っては怪異譚としてコトノハを紡いで和んでおったそうなのだが、一つ引っかかる事がある…
と、瞽が何か思う事があったのだが、互いのコトノハ遊びは更に続く。
もう何時間もこの遊びをしたところで、そのモノはフっと立ち上がり、そのまま煙のように消えてしまった。
「あ、お代、、まあ、いいか。たくさん詩を紡いでいただいた事だし。マヌカンの皆に今宵の限定酒を沢山呑んでもらったらウィンウィン」
マスターが儲け度外視の発言をする。そんな言葉を横に瞽が言葉を被せる。
「いやあこんな御時世に珍しい詩、が聴けたなあ。しかし、あの奴さんが紡いでおった、数々の詩、なんだが、」
「どうなされましたか?」
「私の知り合いの見聞屋が、電妄掲示板にてあらゆるコトノハをヒッソリと書き溜めて紡いでおった詩集めいたモノがあったんだがなあ、そこに書かれている詩と全く瓜二つでなあ」
「ホウホウ、すると先程の方はその詩集をお読みになった事があると」
「いや、それは無いな」
「それは何故ですか?」
瞽の口元が一瞬歪み、マスターの方を向きながら口を再び開く。
「その本、世界の何処を探してもだな、、私共、瀉葬文幻庫の書棚に一冊しか無いのだ」
と。マスターはそれを聞きうんともすんとも言わず、グラスを磨き続けた。
「ああ、ちょうど酔いも廻ってきたところだ。マスター、最後に一杯、酒呑童子を貰おうか、それで我々も最後に詩を紡いで我に帰ろうか」
瞽はマスターに【酒呑童子】なる酒を注いでもらい、それを呑むと、先程のコトノハ遊びによる長時間の飲酒量が祟ったのか、うとうとと船を漕ぎだした。元来、光を見る事のない瞽が、闇の世界を泳ぐ。どんより、ぐわんぐわんと。
いつしかギロチン店内には蛍の光が流れていた。
「よっぽどこの酒がきつかったのかな、お客さん、お客さん閉店ですよ」
肩をゆすられ瞽が目を覚ます。瞽が故に闇の中の世界は継続である。
「あれ、さっきここに居た流しのヒトは?」
「そんな方は居りません」
「え?じゃあ、事故物件の話していたオカルトキノコは?」
「そのような方もご来店いただいておりません」
「え?じゃあ、我々に詩を紡いでいた、、」
「そんな方にもご来店いただいておりません」
「じゃあ、私の後ろでいつも介抱してくれている唖は、、」
「いい加減にしてください。当、BARギロチンに本日お越しいただいたお客様は、、ゼロ。ボウズって奴です。しかし良く喋るマヌカンだ。こいつは電源を当分切っておこう」
「え、、、あ、、う、、ああ、、、、、」
こうして、BARギロチンは今日も誰も客が来ないまま閉店の時刻を迎えた。
終わり
それではココからは毒者限定デス。
今怪も過去の犯行影像が発掘されたので、そちらをお届けして逝きたいと思います。
今怪お届けする犯行影像は、2016年、アメ村のライヴハウス・DROPでのイベントに出演した際の犯行影像デス。対バンがスラットバンクス。最近ご無沙汰なので、またご一緒したい次第デスね。
画質は悪いデスが、まあそういう時代の影像という事で。
お憑かれ様デス!やってて良かったnote! アナタのお気持ち(サポート)宜しくお願いします! いただいたお気持ちは今後の執筆活動・創作活動にドバっと注いで逝きます!!褒めたら伸びる子なんデス(当社比)