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ばいばい乳歯くん

 歯が抜けた

私じゃなくて、息子の。
彼にとって、最後の乳歯が抜けた。

つい最近別の歯が抜けて、えっ乳歯ってもしやラスイチ!?なんて言っていた矢先、あっという間にそのラスイチが抜けてしまった。


ああ、これからはもう、全部大人の歯なんだね。


背が随分伸びて、目線が近くなって、足の大きさを越されて、それでもわたしの中では、ちょっと前まで黄色い帽子をかぶってた小さな男の子なんだ。
それがもうちょっと前どころか、ランドセル生活も残り2年…え、待ってあと2年!?
私の感覚がバグってるのか、時間泥棒が家のどこかにこっそり隠れてるとしか思えない。


今まで卒園式や運動会、諸々の行事でもれなく泣いている私だけど、いちばん記憶に残っているのは年長さんのお泊まり会だ。

夏休みに入る直前、年長さんが幼稚園にお泊まりをするイベントで、お昼はすいか割りや水遊び、ゲームで楽しんだ後、いつもの教室にお布団を敷いて先生やお友達とひと晩を過ごす。
親と離れて外で寝るのは初めての子が多く、それは親にとってもそうで、どちらもドキドキの一大イベントである。

よっぽど泣いちゃう子はお迎えをお願いすることもあるらしいけど、大体は先生方がうまくやってくれるし、うちの息子は友達がいれば大丈夫そうだったので、それほど心配はしていなかった。


園までは自転車で20分ほど。
いつもは園バスを利用してるけど、この日は各自登園となっていたので、息子を後ろに乗せ初夏の道を走る。息子は終始ご機嫌な様子で、これなら大丈夫そう。

園に着き、正門前でパンパンに荷物が詰まったリュックを渡しながら確認する。お着替えはこっちで、パジャマはこの袋にあるよ、これは先生に渡してね…言い終わらないうちに、分かってる!とひったくるようにリュックを奪い、軽やかに門をくぐっていく。軽く手を振ったあとは、振り返りもせず園庭に走っていく。 


その姿が、逞しくもあり、淋しくもあり。


しばらく見えなくなった後ろ姿を見つめたあと、ふう…よし、帰ろう、と自転車にまたがった。
周りには、同じように笑顔で見送るママやこどもたち。知った顔には声をかけたり挨拶しながら、園を後にする。


ペダルをこぐ。
園庭に集まるこどもたちの笑い声が遠ざかる。
顔にあたる風が心地よい。


急に。
急に、きた。

涙が、びっくりするくらい、どばっと両目から出た。

息子を産んでからのあれやこれや、夜泣きに一緒に泣いた夜、初めての慣らし保育の胸の痛み、トイトレに苦戦した入園前…息子の、泣き顔、笑顔、笑顔。

頭の中を、走馬灯がぐるんぐるん回る。

それは、息子と離れたのが淋しいとか心配だとか、そういうんじゃなかった。


ああ、もうここまで大きくなったんだ。
もう、私と離れても大丈夫なんだ。 


いま考えると、あれは私なりの卒園式だった。
育児のなかの、大きなひと区切り。急にそれを実感したんだと思う。


うん、大丈夫。よかった。よかったんだ。


止まったらなにかに負ける気がして、自転車を勢いよくこいだ。こぎながらがんがん泣いたので、家に着いた頃には、泣き過ぎて頭がぼうっとした。

行きは密かに「息子を送ったらひとりカフェでも行って読書でもしようかな♪」なんて考えてたのに、なんてこったい。

目が腫れて鼻水が垂れるひどい自分の顔を鏡でみて、少し笑った。



お泊まり会の翌日迎えに行くと、息子は元気いっぱいにゲーム大会の成果やかき氷のシロップを何色にしたかを語ってくれた。「楽しかったよ!」そう話す息子の顔は、どこか誇らしげに見えた。


そして、歯が抜けた


乳歯くん。

生まれて1才くらいからずうっと、私のなかなか出ないおっぱいも、粉ミルクも、離乳食も、ごはんも、全部味わって、噛んで栄養にしてくれて、ありがとう。10年間、息子のからだを作ってくれて、ありがとう。

そして、大人の歯の皆さん、これから長い長いおつき合いになるけど、どうかよろしくお願いします。

アンカー乳歯くん


noteの皆さま♡

だいぶ遅い2024スタートにはなりましたが、
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
こんな遅いスタートをしておきながらなんですが、
もっと息を吸って吐くように書きたいなー
書けるようになりたいなー
なんて、思っているところです。目標。

今年もここで、書くことで、読むことで
繋がりましょう。ね。

いちご牛乳より🍓


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