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#4 喪失と再生のラブロマンス【ヴァージンリバー】

こんにちは、いちこです。
ここでは、読んだ本の紹介をしていきたいと思います。
1記事につき1冊または1シリーズ、ご紹介していきます。
こんな感想もあるんだな、と思っていただけたらと思います。
本に興味を持ったり、選ぶ時の参考になれば幸いです。

今回の本は、愛情の喪失と再生が描かれています。
そして愛を伝える方法は、「好きだ」と伝えたり能動的に働きかけることだけじゃないんだと考えながら読みました。
「待つ」ということも、「黙って見守る」ことも、「小さなことを覚えておく」ことも愛情があればこそです。
言葉を使わずに「愛している」と伝える。
難しいけど、愛情を一番実感できるのは「してくれたこと」よりも、言葉のいらないような何気ない日々のことなのでしょう。
恋愛であれ、友人や隣人あれ。


【今日の本】

本日ご紹介するのは、
ロビン・カー 著、
「ヴァージンリバー」です。

二見書房の海外ロマンス小説で、ネットフリックスでドラマにもなったシリーズです。
まだ日本語版は2冊目までしか出ていませんが、続編の翻訳が待ち遠しいです。


【内容】

ロサンゼルスに住む看護師メルは、救急救命医の夫を突如失い、人生が一変。哀しみの果てに自分を誰も知らないところで過ごそうと、一年契約で医師を手伝う職を得て、カリフォルニア北部の大自然に抱かれたヴァージンリバーにやって来る。ところが当の医師にはまったく歓迎されず、住まいもただのおんぼろ小屋。せめてものなぐさめは、元海兵隊員のジャックが営む町唯一のレストランバー。しだいにメルは町の人々と打ちとけ合い、そしてジャックに惹かれていくのだったが、ふたりには互いに簡単には越えられない苦悩があった……

二見書房ホームページより


【感想、雑談】
ここからは、私の個人的な感想や雑談です。

夫を亡くしたメルと、元海兵隊員で今は静かにレストランバーを経営するジャックの物語。
導入での不運続きの移住や、与えられたボロボロの家、歓迎されない会話が続き、思い通りにならない展開にメルの混乱具合がよく現れていました。
そんな中でもジャックは、初めからメルを歓迎して静かに見守っています。
そして必要になったら徹夜も厭わず、必ず助けに来てくれる。まさに優しさに溢れたヒーローです。

こういう海外のロマンス小説は結構好きで読みますが、ヒーローはオラオラ系というか、ぐいぐい引っ張ってくれる人が多い印象。
良くも悪くも男臭くて、フィジカルもメンタルも鋼のようで、思考回路が日本人としては難解だったり。
あとはめちゃくちゃベッドシーンが多い。笑

しかし今作はオラオラ系ヒーローではなく、大人の尽くす系ヒーローです。
なので、メルが自分のことを考えてくれるまで辛抱強く待ちました。
ジャックは、男臭くはありますが落ち着いた雰囲気でメルに接しています。
もちろん、色々と考えたり悶々としたりしているようですが。
女性と深い関係を作ることを避けて、独身を通してきたジャックが変わっていく様子も良いです。

メルはヴァージンリバーで、過去を引きずりながらも力強く進み始めます。
コミュニケーション能力も高くて、町にいる唯一の医者であり気難しい高齢男性でもあるドックマリンズの心を掴むのも早い。
医療従事者ということもあってか、患者への思いの強さがそのまま彼女のパワフルさに繋がっているようです。
助けるためなら、無理も無茶もしてみせる。そんな気概のある女性でした。

人間的な魅力溢れるメルに惹かれつつ、同時に劣等感を抱くというのも、私の読んできたロマンス小説のヒーロー像とは少し違っていました。
思わせぶりにヒロインを振り回したり、強気に出たりするということもなく、控えめです。
夫がいた事実というのを重く受け止めているのでしょう。離婚した訳ではなく、メルの中で整理がついていないのも理由のひとつかも知れません。

そしてメルの過去ごと受け入れようと努力する器の大きさにも感動しました。
忘れさせるのでも、上書きするのでもなく、メルを尊重した態度。愛が深い。

スリリングで飽きのこない展開と、町の個性的な住人たちの話も面白かったです。
全体的に好みのテイストでしたので、ネットフリックスのドラマも見てみたくなりました。


【おわりに】

この手のロマンス小説は大抵とても分厚くて、サスペンス要素があるのも日本の女性向け恋愛小説とは違います。
また、現代を舞台にしたものだけでなく、時代もの、吸血鬼などの人外ものやタイムリープしたりと設定が豊かに思います。
社会の文化などの違いか、銃による襲撃や薬物問題もよく出てきます。
命の危険に晒される率もかなり高い。
そんな中で愛が芽生えていく過程を楽しむものなのかも知れません。

興味が湧いたら、読んでみてください。
では、今日はこの辺で。
ありがとうございました。

いちこ


【参考】

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