煙草と珈琲

今や禁煙、分煙が当たり前になった世の中だが、かつては電車内でも吸えた時代があった。

『コーヒー&シガレッツ』
という映画を高校生の時に観た。
たわいもない会話をしながら、煙草と珈琲を嗜むその映画の意味が当時はよくわからなかった。
もしかしたら、あまり意味なんてなかったのかもしれない。
モノクロの映像に、燻らす煙草と珈琲がなんとも色っぽく大人に見えた。

ありがちな話だが、私の煙草は過去の男と共に変わってきた。
多少の好みはあるが、煙が出ればなんでも良かったのかもしれない。
なんとも情けない女だと思う。

珈琲は、大人になっても暫くの間飲めなかった。
コーヒークリームと砂糖を入れた、あの中途半端な甘さと生ぬるいマイルドさが苦手だった。
ある日、ふと興味が湧きブラックコーヒーを飲んでみた。
はじめは、とても苦く、鼻に抜ける強い香ばしさにたじろいだ。
だが、慣れてくるとそのキリッとした飲み口と香りに、
とても気分が高揚した。
店によってこんなにも味が変わるのか、というほど全く味が違い、
飲み比べるのも楽しかった。
これまた衰退してしまったが、アイスコーヒーはプラスチックストローで飲むのが格別だと思う。

時を経て、部屋で煙草と珈琲を嗜むことさえ出来なくなってしまったが
ベランダで夜風を浴びながらアイスコーヒー片手に煙草を吸うのも
悪くはないな、と思う夏の夜だった。



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