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おりど病院身体拘束裁判の証人尋問*S医師への質問 2022.5.11

被告代理人弁護士、以下 代と表示
おりど病院S医師、以下 Sと表示
被害者  静 (仮名)

代) おりど病院のカルテには、愛知医大病院でも誤嚥性肺炎を繰り返しており、リハビリ転院しても、高齢ということもあり、元の状態に戻らない可能性があることについて了承されての転院です、あるいは 、急変時、昇圧剤等薬剤 投与まではお願いします、C P R 希望されませんという記載があるんですが、これは家族と話された結果、聞かされたものでしょうか。
S) はい。入院時に静様の御家族にお会いして 、その旨を確認しております。

代) 愛知医大病院のこころのケアセンタ ーからも診療情報提供書が出てますね。何 が 記 載 さ れ てい ま し た か 。
S) ここには、非常に不穏状態が強く、薬でコントロ ールをしているにも かかわらずコントロールがうまく行っていない、担当医からは、この ような状態で転院することは本当に申し訳ないが、よろしくお願いし ますとい うような内容が書かれておりました。
それプラス、看護記録、看護サマリーにいただいておりまして、看護 サマリーには、点滴を頻回に抜針したり、静様が夜間不穏状態にな ったり暴れたりするようなことの記載がありました。

代)ケ ースワ ーカ ーさんが愛知医大病院に問合せをしてたりすることがあるんで しょうか。
S)はい。私からは直接しておりませんが、ケースワーカ ーからは愛知医大のほうに問合せをして、そういうような状態を確認されております。

代)静さんの診察を先生が初めてしたのは、いつですか。
S)転院になった7 月7 日になります。
まず全身状態を観察し、かなりるい痩が激しかったので、当日すぐにCTを撮りました。で、胸部C T並びに採血、それらの一連の検査を行っております。
明らかな両側の肺炎像が見られ、プラス、両肺の線維症と気腫 性変化が見られ ており、肺炎としても末期の状態であることが確認されております。

代)先ほど原告御本人の尋問の中で、3 0%ぐらいしか肺の機能がなかったんだ というようなお話があったんですが、そのお話は先生の所見と 一致しますか。
S)はい。多分、どの放射線科医に見ていただいても、入院時の肺の所見 を見ていただければ、かなり肺の機能が低下していることは明らかで あると思います。

代)転院時、肺炎は治っていたあるいは落ち着いていたということはないですか。
S)肺のC T 所見からは、全く治ってなかったと考えられます。その理由 としては、転院の5 日前に静様は3 9 度近い熱を愛知医大で発せられております。このときのCRP という炎症反応を示す数字も2 0 を超えています。通常、CRPは0. 1以下でありますので、
(*日本のCRP平均値は0.3以下である) 2 0 0倍 を超える数字になっています。さらに、一時期落ち着いていた時期があったと考えられますが、転院前の6 月2 7 日に食事を開始したところ 、また誤嚥性肺炎を起こされ、これが愛知医大での3 回目の誤嚥性肺炎になりますが、起こされております。その後、禁食になり食事を 止められ、ゾシンという抗生剤を点滴された上での転院になっております。この状態からすると、肺炎は治っていなかったと考えるのが普通だと思います。 

代)検査詳細情報オーダー日が2 0 1 7 年7 月7 日、入 院当日。翌日出た血液検査のデ ータからどういうことが読み取れるでしょうか。
S)まず、アルブミンが1. 5 ということで、アルブミンというのは体の栄養状態を表しておりますが、1. 5 というのはかなり栄養状態が悪 く 、 通 常 で あ れ ば 、 も うか な り 生 命 予 後 が 悪いということを 表しております。さらに、CRPはまだ3 というふうな高値が続いており、炎症反応も持続していたということが考えられます。

代) こういった状況から 、転院後、点滴治療を開始することを遅らせて、例えば 身体拘束をせずにどういうふうな看護ができるかということを実験的に観察していくというような余裕はあったんでしょうか。
S)静様は禁食で、全く経口摂取ができない状態で来院されてます。そのために、点滴をしないと脱水症状を来したり、生命の他険を来す険があります。 さらに、抗生剤を投与していないと肺炎の更なる悪化を招くに険もあり、点滴は絶対必要だったと考えております。

代)入院時、速やかに行う必要があ ったということですね。
S)はい。

代)静さんが入院された当初、身体拘束についての同意書を取得されていますね。これは、あなたが説明して取得されたものですね。  
S)はい。御家族に説明して取得しております。

代)これを取得された理由について教えてください。S)これは大体の高齢者の患者様には皆さん取得するようにしているんですが、例えば必要な点滴を、自己抜去してしまい、できないとかだと 治療ができませんので、そういうことを防ぐため 、患者さんの命を守るために必要なことでありますし、若しくは不穏状態になってベッド から転落する場合があります。この場合には 、転落することによって骨折をしたり、頭部打撲により頭蓋内血腫等を発症することが報告されておりますので 、それらを防ぐために、もし不穏状態になった場合は一時的に拘束をすることは、これは高齢者には必ず取るようにしております。

代)最初からこういう同意書を取っていたということは、最初から拘束するつもりだったんじゃないかということはないですか。
S)これは、ほぼ、ほとんどの高齢者に取っております。(*おりど病院では65歳以上の入院患者に身体拘束同意書を取る)不穏状態はいつ なるか分かりませんので、最初に同意書を頂いておかないと、突然またこういう状態で、御家族に連絡して同意書を頂きたいと思っても取れないこともありますので、必ず最初に同意書を頂いておくようにし ております。

代)急変に伴い身体拘束を行う必要性が生じることがあるけれども、そのときになって同意を取得するというのは時間的に難しいということですか。
S)はい、そういうことです。

代)現実には、入院初日の夕方から身体拘束が開始されているようですけども、 開始の決定には、S先生は関与されていますか。
S)最初に拘束をされ始めたときには私は関与しておりませんが 、翌日にそのカルテ内容を見て、それが必然的であったことは確認しております。緊急性もあったと思いますし、非代替性であったこともありますし、一時的であったことも確認しております。緊急性というのは、急にベッド柵から下りて、転んで骨折とか起 こす危険が十分にあったこと、さらに、御本人に説明しても、不穏状態が強く 、説明では何ともならないこと、これらのことがカルテ上確認できましたので、私としては承認いたしました。

代)身体拘束は医師が決定しなければならないものだ とい うことはお考えになりません でしたか。
S)はい、おっしゃるとおりで、医師が確認するべきことだと思います。ただし、夜間とか、いつも医師がいるわけではございませんし、基本的には看護師さんがうちの病院にあるマニュアルにのっとり、マ ニュアルに適合することを確認した上で 、飽くまでもチーム医療になりますので、それを確認した上で拘束を開始する。で、後日、ちゃんとマニュアルにのっとってるかどうかは主治医である我々が確認し、承認するという形を取っております。

代)体幹・上肢抑制を行っていると、恵者は身動きが取れないんでしょうか。
S)体幹・上肢抑制を行っていても、患者様は横にもなれますし、起き上 がることもできます。体幹・上肢抑制というのはどういうものかといいますと、ちょっと誤解を招くかもしれませんが、飽くまでベッドから 落 ち る こ と だ け を 予 防 す る も の で、 患 者 様 は 体 幹 抑 制 を さ れ てい ても、座ることもできますし、側臥位になることも可能なんです。全く へばり付けられているわけでは全然ございませんので、誤解がないようにしたいと思います。

代)呼吸状態が悪化するほど 、患者さんにとって非常に苦しいような状態になるほどき つく拘束をしていたということはない ですか。
S)・・ ないと思います。カルテを見ていただいてもお分かりになると思いま すが、看護師さんの記録で、静様が"側臥位になられている"というふうにちゃんと記載がありますので、そういう記載からしても、御自分で側臥位を取られていたというのが証拠に残っておりますので、そう いうことはなかったと思います。

代)身体拘束の解除について検討したことはありますか。
S)はい。毎日カルテを見て状況を判断して、解除が必要かどうか確認をしております。静様の場合は 、不穏状態がずっと続いておりましたので、その適用にはならなかったと考えます。

代)静さんに褥瘡が確認されていた事実はありますか。
S)最後にお亡くなりになったときには体をされいにするんですが、静様は、褥瘡等は確認され ておりません。

代)ベ ッ ド か ら の 起 き 上が り を 検 知 す る 機 器 な ど で 身 体 拘 束 を 行 わ な く て 済 ん だというような意見については、どう思われますか。
愛 知 医 大 で は 、 う ーご 君 と い う 、 ク リ ッ プ を 付 け て 、 患 者 さ ん が 動 く とクリップが外れてナ ースコールが鳴るようなシステムだと思いますが、そういうのをされていたらしいです。
S)静様は愛知医大に5 月9日から入院されて、2 か月近く入院されておりました。2 か月近く入 院されておると、スタッフとも多分コミュニケーションが取れて、精神的にもある程度安定した状態でおられた可能性も高いと思います。当院では、転院したばかりで不穏状態も強く、もしうーご君のようなものを付けていたら、看護師さんが行く前に転倒して骨折を起こしてしまうリスクが十分高いので、少なくとも適用にはならないと考えま す。

代)静さんの死因に ついてお伺いをしていきます。
プログレスノート20 17年7月10日月曜日1 6 時3 9 分 「ご家族に肺炎の状態が良くない。改善ない場合 、 急 変 も あ り ま す」 と あ り ま す ね 。 こ の 記 載 を さ れ た の は S先 生 で す か 。この記載の意味するところは何でしょうか。 
S)転院後も抗生物質の治療を続けていましたが、 一向に肺炎のほうの改善する傾向が見られず、酸素飽和度の示す値も改善の傾向がなかったものですから、このままであれば更に状況が悪化して、肺炎をもとに お亡くなりになる可能性があるというふうに御家族のほうに連絡いたしました。

代)この日、C T も撮られていますかね。
S)C T は、入院時の7 日に撮った後は撮っておりません。ただ、胸部レントゲンは撮っておると思います。

代)画像所見上も肺炎の状態、肺の質 的な変化というのは悪化していたんでし ょうか。
S)悪化しておりました。さらに、お亡くなりが1 3 日でしたかね、その前日に呼吸器内科の受診もしておりまして、呼吸器内科の先生に胸部レントゲン写真を撮影していただきまして、入院当初よりも更に肺炎の像が悪化していると、これはひょっとして抗生剤が効かない菌に変 わっているのかもしれないというふうな御指摘を受け、その時点での培養を更に採り直しておりますが、残念ながら、痰の培養の結果が出るのが数日掛かってしまいますので 、13日S様がお亡くなりになってしまったので間に合わなかったですが、ただ、結果的には、培 養の 結 果 も、 ゾ シ ン と い う 投 与 し て た 抗 生 剤 が 効 く 菌 で あ り ま し たので、非常に有効な抗菌剤を使っていたにもかかわらず、肺炎はどんどん悪化して、お亡くなりにな ったというふうなことだと考えており
ます。

代)この日の夕方、家族さんにも電話で同じような内容のお話を伝えられてます かね。元々、愛知医大でも肺炎あり、現在治療していますが 、C T上なかなか治癒せず発熱も続いています、また貧血も進行しており、今すぐではないですが急変もあり得る状態にあります、というところですね。この後、実際 、静さんは亡くなっているわけですけれども、死亡診断書を 作成されたのはS先生ですか。
S)はい、私です。

代)死因について、両肺炎球菌肺炎とされた理由について教えてください。
S)愛知医大からの診断で、病名が両側肺炎球菌性肺炎というふうになって お り ま し た 。 で 、 愛 知 医 大 か ら い ら し た 当 日 に 撮 った C T で 肺炎 が継続していることが確認できましたので、病名としては同じ肺炎が継続しているというふうに考えて差し支えないと考えました。

代)実際に静さんが亡くなった当日は、勤務されていませんでしたね。
S)はい。静子 さんがお亡くなりになったのは、翌日の朝、聞きました。

代)亡くなったということを聞いて、どう思われましたか。
S)非常に残念でしたが、ただ、経過は御家族に十分御説明をしておりましたし、入院時の肺炎像からも肺の状態が末期像であることも十分御説明しており、さらに、愛知医大からの申し送りでも、御家族が、例えば心肺蘇生、人工呼吸” をつないだりとか心臓マッサージをするということはもう望んでいらっしゃらないということを聞いておりましたので、当直医の先生には御迷惑掛けたと思いますが、残念だったなという印象であります。

代)何か突発的な事故が起きて、元気な状態が一転して亡くなったんだというふ うには考えられなかったんですか。
S)臨床経過からいたしますと、だんだん酸素飽和度が低下しており、経 時 的 な レ ン ト ゲ ン 写 真 か ら も 肺 炎 の 悪 化 が も う明 ら か に な っ て お り ますので、経過的には、入院時から存在した肺炎が次第に悪化してお亡 くなりになったということだと考えますし、お亡くなりになる木曜日の朝、酸素飽和度が6 7% で、大分低下してきておりました。それから 更に低下してきたんですが、そういうことからすると、やはり肺炎が どんどん悪くなり、ガス交換がだんだん悪くなってきて、最終的には 酸素が取り込めなくなり、心不全で亡くなったと考えるのが普通だと考えます。

代)肺炎で亡くなる人はかなり多いというふうにお聞きしておりますけれども、 肺炎で亡くなる経過としては通常だったということでしょうか。
S)はい、通常の経過だと考えます。

代)S P O 2 がだんだん下がってきていたというお話がありましたけれども、これ が疾の貯留によるものだというふうには考えられませんか。
S)そこは難しいところなんですけど、肺炎が悪化すると、必ず衆が貯留してまいります。その痰は、肺炎像であれば、非常に肺の奥のほうに . たまってきますので、そこの痰を例えば吸引で吸ったりすることは非常に困難で、最終的には肺胞というところがもう水浸しになってしま って、肺炎では、最終的にガス交換ができなくなってお亡くなりにな ります。そういう状態が自然にだんだん悪くなってきて、酸素飽和度が低下してきて、最終的に、通常経過でお亡くなりになったというふ うに考えてます。

*2017.7.13 静さんが亡くなった後、2017.10 遺族の申し出でS医師と話合いが持たれた。「痰が詰まった可能性 もあると思います。ゼロではないと」S医師が説明した。この件に関しての尋問。

S)ま ず、痰が 詰まって亡くな ったのではないでし ょうかとい う御質問がありましたので、はっきり言って 、ゼロということをちょっと申し上げられないので、ゼロではないというふうにお話ししました。ただし、臨床経過からすると、次第に酸素飽和度が低下しておりますので、急に痰が詰まってお亡くなりにな ったということは考えにくいと思います。痰がぼんと詰まってお亡くなりになるのは、お元気だった場合に突然亡くなるということが考えられますが、この場合は肺のほうが自 然 に悪化して酸素飽和 度が 徐々に 低 下し てい っ てお り ま す の で、 急 に 痰が詰まったということは、臨床経過からすると、非常に考えにくいと考えます。

代) 肺炎の悪化が、身体拘束によるストレスあるいは身体拘束による呼吸状態の悪化によるということはないですか。
S)まず、身体拘束が肺炎に及ぼす影響としましては、肺炎になりますと、肺の中の痰を出さないといけないので、側臥位になる必要がありま す。身体拘束がきついと側臥位にはなれないので悪化させる可能性はあるかもしれませんが、少なくとも当院 での身体拘束が、記録にもあるとおり、静さんは側臥位になれてますので、それが悪化した原因とは考えにくいと考えます。経過からしても画像診断からしても、通常の経過をたどった肺炎だと考えます。

代)本件が訴訟になっていることについて、どのように思われますか。
S)一 つには、いらっしゃったときの状態がかなりお悪くて、その状態が、ち ょ っ と 御 家 族 様 が 分 か っ てい ら っ し ゃ ら な か った の か な とい うの が少しあると思います。 5 月9 日に愛知医大に危篤状態で入院 されて、 本当に一命を取り留められて、そこからリハビリを始められ、愛知医大で2 か月頑張られて、その間に3 回誤嚥性肺炎を起こされ、食事を するたびに誤嚥を されたということで、最後の転院前の6月26日かな、そのときの誤嚥性肺炎がかなりひどかって、その影響が転院した後も続いていたのかなと考えます。その辺の話が転院元の病院からされていなかったのかなとい うところが、ちょっと心残りではあると思います。

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以下より原告側代理人弁護士の証人尋問
原告側代理人弁護士を原)と表示する

原) 静さんが亡くなった平成2 9 年7 月1 3 日、証人は病院をお休みだったんですか。
S)私は、前の病院、F保健衛生大学の○○病院というところに外勤に行っておりまして、その日ちょうど外勤日なので、留守にしておりました。

原)こ れ は 7 月 1 2 日の 記 述 な ん で すが 、 7 月 1 2 日 1 7 時 2 分 にS先 生 の お 名前がありますね。
これは何か指示をされてるということですかね。
S)7 月1 4 日の午後3時に家族に説明の設定をしてくださいということの指示を出したんだと思います。

原)この7 月1 2 日1 7 時2 分が、静さんに対する対応としては最後ですかね。
S)多分、記載上はそうだと思います。

原)記載上はそうだけど、そうじゃないことはあるんですか。
S)例えば、その後に回診に行っても記載してない可能性はあります。

原)回診に行った結果を記載してないということがあるんですか。
S)あります。

原)今回、亡くなったという大きなことなんですけれども、その前日に、この指示の後 、 回診 したとい う記 憶 が あ る ん で す か 。
S)ちょっと前のことなので記憶が曖昧なのですが、少なくとも朝と夕に は回診をするようにしておりますので、夕方には回診には行っていたと考えてます。

原)7 月 1 2 日 1 7 時 2 分、これは回診の前後に指示をしたということではないんですか。
S)ちょっと古いあれなので分かりませんが、多分そうだと思います。

原)それで、結局あなたが静さんの死亡診断書を作成されましたね。それは、いつの時点で作成されたんですか。
S)お亡くなりになった翌日だと思います。朝、死亡してられたということで、その後、何時頃かというのは覚えてませ んか。ちょっと記憶にありません。
.
原)死亡診断書には発行者 「青○○○ 」と名前が書いてあって、「代行未承認」と書いてありますね。 「責任者S天○医師」。これはどういう意味ですか。
S)青○○○様は、ちょっと私分からないですが、多分、医療事務の方じやないでしょうか。で、当直医の先生は別の先生だったと思うんです が、むしろ看護師さんかなと思います。
代行末承認というのは、電子カルテには承認作業が要るんですけども、 このときにはもうお亡くなりになった翌日で、私がそれを見て死亡診断書を記入してますので、実際には承認はしなかったという、機械上の記述になっていることだと思います。

原)7 月1 4 日9 時2 分の時点では、まだS先生は死亡診断書作成に当たってはいないということですか。 この時点で書いたということではないでしょうか。
証人は、死亡後に、実際に静子さんを診断した上で死亡診断書を作成 されたわけではないですね。
S)死亡後に診断、ちょっと意味が分かりかねるんですけど、それはどういう意味でしょうか。

原)死んだのを確認 して死亡診断 書を書いた というわけではないですよね。 それ を見て。お亡くなりになった状態を見て、肺炎だったというふうに診断したと いうことでしょうか。遺体を見たんですか。
S)御遺体は見てます。あっ、ごめんなさい。御遺体は見てなかったと思います。亡くなられ て か ら お 迎 え に 来 ら れ ま す の で、 多 分 お 迎 え が 当 日 の 夜 だ った の で、僕は、実際には御遺体は見てないかもしれません。ちょっとその辺、 曖昧なんですが。

原)遺体を見てないと思うんですよね。 
S)はい。
原)死亡診断書の作成ですが 、基本的に、診察して治療して死亡診断書を書く、現に遺体を見て書く、これが原則ですよね。そうでない場合には、受診後2 4時間以内に死亡した場合には死亡診断書を書ける、そういう法律になってますよね。それは御存じですか。
S)はい。

原)これは医師法2 0 条ですが。本件では、診察をしないで死亡診断書を作成している 、かつ、死亡前2 4時 間 以 内 に 診 療 し て な い で す よね 。
S)先ほども申しましたけど 、前日の夕方に回診に行ってる可能性はちょ っとあると思います。その辺はちょっと曖昧ではありますが、朝と夕 には回診しておりますし、病院の勤務時間が6時までなので 、その打刻を見ていただければ分かると思いますけど、その時間まではいたと考え ま す。

原)静さんが亡くなったのは7 月1 3 日午後7時5 3 分なんです。ですから、 2 4時間前というと、7 月1 2 日午後7時5 3分。その後にあなたが診察したという ことはあり得ないですよね。
S)その時間以降、ちょっとその辺は曖昧でありますね。
原)死亡診断書の作成が違法なのではないかということです。 

原)2 0 1 7年1 0 月、御遺族に話をするに当たって、カルテとか看護記録とか、そういう資料を事前に確認して臨まれましたか。
S)その日、大分時間が経過してからでありましたが、確認してからお話ししたと考えてます。

原)「大 き い 波 が 出 て きてそれがうまく出せずに詰まったという可能性は 十分あるかもしれません」
と書いてありますね。そのよ うに発言した根拠は何ですか。
S)先ほども申し上げましたように、痰が詰ま った可能性は全否定はできませんので、可能性はゼロではないという意味でお話ししました。

原)充分あるかもしれませんというふうにおっしゃってますが、これはゼロではないと、そうい う意味なんですか。
S)そ うい う意 味 で す。

原)ゼロではないという、ほとんど可能性はないけれどもという状況なのに、充分 あ る か も し れ ま せ ん と 説 明 を し た とい う こ と で す か 。
S)そういうことです。

原)身体拘束のことについて。まず、身体拘束自体は人の自由を奪う重大な人権侵害行為であるという御認識はお持ちですね。身 体 拘 束 を す るか 否 か に つい ては 医 師 の判 断 が 必 要 だ というふうに お 考えですね。
S)はい。

原)①これが病院側から出されている身体拘束についてのル ールというふうになっているんですが、これは御存じですか。 
S)はい、存じてます。

原)明確に、切迫性、非代替性、一時性という3原則のことが書かれているんですけれども、②のほうには書かれていないんですね。書かれていないけれども、そういう基準で判断をするという認識をされていたということですか。
S)はい。

原)本件では静さんは、7月7 日に入院した後、7月13日の亡くなるまで、ずっと上肢・ 体幹抑制をされてましたね。
S)はい。

原)7 月7 日1 7 時2 0 分、 「体幹・上肢抑制開始」と書いてありますが、この 7 月7 日1 7 時2 0 分のときには、証人は実際に静さんを見ましたか。
S)その抑制を開始された時点では、多分見てなかったと思います。

原)抑 制 が 開 始 さ れ てい る 状 態 は 、 最 初 の 時 点 では 見 てな い と い う こ と な ん で すか。
S)最初の時点では見てないです。

原)最初の時点というのはい つですか。
S)翌日の朝だったと思います。

原)この7 月7 日の夕方には、静子さんのところには行っていないということで すか。
S)行っていないと考えます。

原)身体拘束についての同意書を取られたというふうにおっしゃいましたね。
S)はい。

原)そのときに家族に説明をされたというふうにおっしゃいましたね。それは、い つ家族に説明されたんですか。
S)入 院 時 に 御 家 族 が 御 本 人 と 共 に い ら っ し ゃ っ た と き に 説 明 を し て お ります。

原)入院 時 とい うのはい つですか。
S)7 月7 日の1 4時だったと思います。

原)そ の 時 点 では 、 ど こ で説 明 され た ん で すか 。
S)記憶では、ナーステーションの横に小さな説明とかをするお部屋が あるんですが、その小さな部屋の中で説明したと記憶しております。

原)そのとき、誰と誰がいたんですか。
S)ちょっと記憶が定かではないんですが、長女様だったような。実際にサ インをもらってるのは長女様なので、長女様だったかと思います。

原)長女の方だけですか。
S)何人かいらっしゃったかもしれないですが、ちょっと記憶にないです。
 
原)看護師はいましたか。
S)看護師さんは同席していたと思いますが、ちょっと曖味であります。

原)どんな説明をしたんですか。
S)まず、身体抑制というものがどういうものかと必要性について御説明 しました。

原)具体的に、どうい う場面でどうい う必要性があったらするという説明をした んですか。
S)点滴の抜去や転倒・転落の元険があるときです。

原)抽象的な話をしたんですか。
S)そうですね。一般論として、そういうことが起きたときという ことで す。

原)あ な た は 、 そ の 時 点 で 、 愛 知 医 科 大 学病 院 か ら の 診 療 情 報 提 供 書 と か 看 護 サ マリーは見ていましたか。
S)見ておりました。

原)それに基づいて、身体拘束の可能性について説明したんじゃないですか。
S)最初に御説明したんですけど、当院では、身体拘束に関しては、大体、 後期高齢者の方とか入院される方にはみんな取るようにしてます。それはなぜかといいますと、病状が悪化して急に不穏状態になってベッドから転落したりする、そういう事故が起きる可能性があるから 、そ の前に必ず入院時には取っておくようにしております。で、取った人 がみんな身体拘束されているかというと、ほとんどの方は身体拘束されておりません。

原)具体的に 、この診療情報提供書や看護サマリーに基づいて同意書を取ったと いうことではないんですね。
S)違いま す。うちでは先ほども言いましたけど、ほとんどの後期高齢者とか、発熱とか病状の悪化によって不穏状態に陥る可能性がある方には、全員取っております。

原)そうすると、実際にその後に身体拘束がされたと。で、その身体拘束が必要 最小限のものだというふうに判断をされたということなんですが、それはカルテを見て判断をしたということですか。
S)カルテと看護師さんからの申し送りで、まず起き上がってベッド柵を 外そうとしていたこと、さらに、説明をしても御本人とはなかなか コミュニケーションが取れなかったこと、それらを聞いて、必要性があ るというふうに判断いたしました。

原)ベッド柵を外すということについては、愛知医科大学病院の看護サマリーか ら、"そのほとんどは尿意のあるとき"だがという注意書きがあったのは御存じ
で すか。
S)そこまではちょっと理解してはおりませんでした。

原)診 療 情 報 提 供 書 と 看 護 サ マリ ー は 見 ら れ てい た ん で す よ ね 。
S)完全には読んでおりません。百パ ーセント読んで覚えているわけではございません。

原)柵を外す行為の理由、原因は何であるというふうに考えられてたんですか。
S)不穏状態。

原)なぜ不穏状態になったかということについては、どうですか。
S)様々な理由があると思います。 一つには、転院により不穏状態が悪化 したこと。愛知医大でも元々、不穏とせん安が起きておりまして、 こころのケアセンターにも通院され、せん妄を取るための治療を継続してされていたこと。で、残念ながら、そのせん妄に対する治療が愛知医大でもうまくコントロールできずに当院に転院になったことを、 謝罪の文章と共に頂いておりました。

原)コミュニケーションが取れないという話がありましたね。筆談では コミュニケーションが取れたんじゃないですか。
S)担当の看護師さんは、筆談でもコミュニケ ーションを取ろうとしたというふうに記憶しております。 取ろうとして取れなかったというように記憶しております。

原)記録に 「読 解 は 良 好 」 、 「筆 談 な ら や り と り 可 能 か ? 」 と 書 か れ て ま す ね。「筆談により、ようやく意思の疎通が可能」と書かれてますね。筆談によってコミュニケ ーションを取ろうとした、それをトライしてみたということは報告を受けてるんですか。
S)報告は受けてなかったかもしれません。

原)実 際 に 取 れ た か 取 れ な か っ た か に つい て、 具 体 的 に 報 告 は 受 け て な い ん で す ね。
S)受けてなかったかもしれません。
原)そしたら、筆談でコミュニケーションが取れたか取れなかったかは分かりませんね。
S)7 月1 0 日の時点では筆談で取れてたというのは確認しました。
原)今の記録からですか。
S)はい。それを僕が読んで、ちょっとうろ覚えに、筆談でコミュ ニケー ションが取れていたと思っておりました。
原)コミュニケーションが全然取れなかったというわけではないですね。
S)はい。 

原)看護計画票には「抑制を行う場合、方法が 適切であるか主治医と常時話し合います。 (記録に残す)」と書かれてます。実際、本件で方法が適切かどうか、主治医のS先生と看護師さんと常時話し合ったという事実はありますか。
S)常時は話し合ってなかったと思います。
原)たまに直接話合いをしたんですか。
S)直接話合いはありました。担当看護師さんとです。何人かおりますので、夜勤交代とかもありますので、はっきりこの方 というのは覚えておりませんが、あとは、カルテ上でも確認をちゃん としております。

原)その何回かやり取りをした、それは記録としてカルテに残ってますか。
S)そこのところは確認しておりません。

原)カルテには書かれていないようなんですけれども、やり取りをすればカルテ に書かれるんじゃないですか。
S)百パーセントカルテに書く場合と、書かない場合も、ちょっとした談話ぐらいだと書かない場合もあるかもしれ ません。

原)身体拘束は重大な人権に関わる問題であると。それを解除できるものであれば、解除、軽減したほうがよい、それは間違いないですよね。
それについての、まだ解除できない、いや、もう少しだとか、そういうよう なやり取りについて、これは重要な事項だから記録しないということはあり得るんですか。
S)まだ不穏状態が続いていたことは明らかでありましたので、身体抑制の継続は必然であったと考えてますので、例えば話合いによってその 状態が変わるとかいう場合は記載する こともあるとは思いますが、まだ同じようですということが話された場合は、その辺はちょっと定かではありません。

原)重大な身体拘束を変えないということ、それ自体、本人にとってはすごい重大なことではないですか。7 月1 3 日はS先生はこの病院にはおられなかったわけですけど、S P O2 の値が、朝の1 0 時5 分時点で6 7 %になったということがありましたね。それは、記録上見られてますね。
S)はい、見てます。

原)これはどんな状態ですか。
S)通常、90%以上ないとかなり苦しいと思いますので、6 7%というの は、かなり呼吸状態が苦しい状態 ではあると思います。

原)この状態でそれまで続けられてきた上肢・体幹抑制、継続する必要ありますか。
S)その酸素飽和度の低下と上肢の抑制とは、余り関係ないと思います。要するに、そこで不穏状態が続いているかどうかが問題なわけであり、 そこの酸素飽和度とは、僕は直接は関係ないと思います。

原)S P O2が6 7%ぐらいになっても、不穏状態が高じて柵を乗り越えて転倒 転落するという、そういう認識だったということですか。
S)その可能性は十分あると思います。


原)そういう危険な状態だという報告を看護師から受けていましたか。
S)そういう危険な状態 であるか どうかという報告は受けておりません。

原)結局、身体拘束は、いつ、どのような理由で解除されたんですか。
S)静様の場合は、最後まで不穏状態が続いていて、身体拘束は最後まで解除されなかったと記憶しております。

原)最後まで不穏状態が続いていたんですか。
S)最終状態が私はちょっと留守にしておりませんでしたので分かりませんが、記載上は続いていたという形になっておりますので。

原)7 月1 3 日は、S先生はこの病院にいなかったというところで、看護師はどの医師の判断を仰げばよかったんでしょうか。
S)当直帯でなければ 、私のほかに同僚の外科医が2 人おりますので、大 体その2 人の外科医の指示を仰ぐことになっております。当直帯になると、当直医の判断を仰ぐということになっております。

原)具体的に、この医師にこういうふうに託すからというふうな指示をS先生がされたということはないんですか。
S)直接医師同士でのやり取りはなかったですが、通常、その辺はカルテを見ていただいて判断していただくことになってます。

原)最後に、おりど病院への転院目的の話をお聞きします。呼吸器アレルギーからの診療情報提供書ですが「感染が落ち着くまで、抗生剤治療の継続をお願いします。感染消退後に経口摂取の再開 。を検討して頂けると幸いです」と書かれてますね。
抗生剤治療によって感染が落ち着くあるいは消退する可能性が十分あったという申し送りじゃないんですか。
S)そういう申し送りだと思います。

原)「愛知医科大学病院にて肺炎治療していたが、症状落ち着いてきたため当院へ転院で肺炎治療とリハビリ目的にて入院となる」7月1 1日時点の記載と書かれてますね。
S)これはNS Tという栄養治療実施計画という、何人か担当医と看護師 さんと、あと栄養科の方と薬剤師で、週1 回ラウンドをしてます。そ の人の栄養状態がいかがなものかというのをラウンドして、主治医に こういうふうにしたらいいですよというものを検討する、そういうラウンドがあるんですが、そのときに多分書かれたものではないでしょうか。

原)「症状」というところで、 「廃用性萎縮」って書いてますね。これは、要するに、廃用性萎縮ということで、愛知医科大学病院で入院が長くなって、筋肉や関節の萎縮が生じてたと、そういうことですよね。
S)そういうことだと思います、はい。

原)先ほどの診療情報提供書には「入院中に廃用が進んだた め自宅での療養は困難です」 と書いてありますね。廃用性症候群、まあ、筋力とかが落ちて、それで自宅に戻ることができなくなる、そういうようなことが申し送りで書かれている、そういうこ とですよね。
S)はい。

原)「愛知医大Hp でも誤嚥性肺炎繰り返しており、RH 転院しても高齢ということもあり 、元の状態に戻らない可能性あることについて、了承されての転院です」と書かれてるところがあるね。
R H転院というのは、リハビリ転院のことですよね。
S)そういうことです。

原)元の状態に戻らないというのは、自宅で生活することができないだろうということですよね。
S)これは 、元の状態というのがどこを指してるのか曖昧で分からないんですが、例えば食事をする状態のことなのか、例えば立って歩く状態なのか、御自宅でトイレまで行けることを ゴールにしてたら、それができない状態、ちょっと曖昧な感じで分かりかねるんですけど。

原)当時は、こういう申し送りを愛知医大病院から受けて 、この元の状態に戻ら な い 可 能 性 が あ る 、 こ れ に つい て は ど ん な ふ うに 判 断 し て た ん で す か 。
S)要するに、状態が非常に悪くて、廃用性の萎縮も進んでおり、元のように歩けるようになったり、食事ができるようになったり、そ ういう 可能性はかなり低いというふうな向こうの病院からの申し送り内容だったというふうに理解していると思います。

原)自宅で生活することに戻ることができないということではない って判断したということですか。
S)まあ、それも含めてかもしれませんけど、究極に言えば、自宅に戻る のが一番最終目的であるかもしれませんけど、そういう状態に戻れる可能性はちょっと低いと。
原)そういう趣旨だってことですか。
S)そうですね。

原)この転院のときに、大体どのくらいの入院期間になるだろうというふうに推定されてましたか。
S)正直に申し上げますと 、3度の肺炎を繰り返しており、向こうからの 紹介状で、経口摂取はお楽しみ程度であり、御家族も末梢点滴のみを希望されておられるということです。基本的に3 回誤嚥性肺炎を起こされてると、通常はもう食事を食べるのは諦めて、胃瘻を作ったり、 C Vポートという、鎖骨の下に入れるポートを作って、そこから点満を入れたりするんですが 、そういうことの御希望がなかったものですから、末梢点滴で食事が取れない場合の予後というのは、いろいろ論文が出てると思いますけれども 、やはり1か月とか 、そのぐらいになってくる可能性は高かったかなというふうに認識しております。

原) 1か月ぐらいの入院であろうというふうに思ったってことですか。
S)はい。もし長引いた場合、長引いたというか、何も起こさなかった場合でも、食べれなくて、末梢点滴のみだと、やっぱりるい痩がどんど ん進ん でしまいますので、そのぐらい でお亡くなりになってしまう可能性は高いかなと思います。食事ができなくて、しかも末梢点滴のみ ということであれば、通常だとそのぐらいの予後になってくる可能性が高いかなと思います。

原)おりど病院カルテに 「推 定 入 院 4 週 間 以 上 」 と 書 か れ て ま す ね 。 ( うな ずく)
4 週間以 上の入院が推定 されると、 そういう状況だったんじゃないん ですか。
S)はい。もしも静さんが食事ができるようになった場合でも、愛知医大で2 か月間入院されており、非常に廃用が進んでおります。そのために、もしうまく行って食事が取れるようになった場合でも、少なく とも1 か月はリハビリに要するだろうというふうに判断はしたと思います。

原)でも、実際には1週間で亡くなられたわけですよね。静さんは経ロリハビリを目的にして転院されたというような御説明をされ てましたよね。
S)はい。

原) 愛 知 医 大 か ら の 看 護 サ マ リ ー で す 。
「 活 動/休息」のところに、「歩行器使用下でのトイレ介助を行い 、ADL拡大 傾向」というふうにありますよね。
S)はい。

原)それでも経ロリハビリだけなんですか。歩行についてのリハビリは一切予定 し ていなかったんですか 。
S)両方やっておりますし、両方依頼しております。S T とP T と両方の依頼と、実際には行っております。
(*実際はリハビリとは名ばかりで両手、胴体の拘束を外さず拘束していない足が動くかの確認だけだった)

原)あとは、誤嚥性肺炎を繰り返してというふうにおっしゃっていたんですが、 看護サマリーの「栄養」というところに、「スクリーニ ングテストでは誤嚥している様子なし」というふうに書かれてるんですが、 これはどう理解したらよろしいんでしょうか。
S)これは、飽くまでテストであります。実際に、3 回愛知医大で食事を開始 して、 3 回 と も 誤 嚥 性 肺 炎 を 起 こ さ れ て ま す 。 こ れ は 飽 く ま で テ ストで、これが百パーセントではないですね。で、初めて実際に試してみて、誤嚥を起こすか起こさないか、これはそのための飽くまでも試していいかどうかの通り門というか、入るところのテストになります。 で、 実際に3 回起こされてるので、実際には嚥下機能はこのテス トよりも悪かった可能性はあるかなと考えます。

原)身体拘束を開始した後に妥当性を確認をされたということなんですが、先ほ ど カ ル テ と 担 当 看 護 師 か ら の 申 し 送 り で確 認 を し ま し た と い う こ と を お っ しや っ てま し た よ ね。
S)はい。

原) T看護師の尋問では、飽くまでカルテを医師が事後的に確認するだけで、日頭での報告はしていないとはっきりおっしゃられていたんですが、そ れはどちらが正しいかというのは断言できますか。
S)私も5 年前のことなのでは っきりした記憶ではないもんですから、T看護師さんが自信を持 ってそうおっしゃっているのであれば、そう かもしれません。

裁判長  ) 今回の静子さんに対する上肢拘束や体幹拘束は、先ほどあなたがおっしゃった考え、どういった理由で相当であったというふうに思われたということで したか。
S)まず、点滴がこの方は必要であったことです。抗生剤の投与も必要でありました。このために、まず肺炎の治療で水分補給、その他に関して絶食状態でありましたので、点滴が必ず必要であったこと 、点滴を抜かれてしまうと死に直結してしまうこと、これらがありましたので、 少なくとも点滴の確保が必要であること。転院の後はどうしても不穏 状態に強くなることがよくあって、実際に静さんも、入院してすぐは落ち着いてらっしゃったんですが、数時間後、5 時過ぎてから不穏状態が強くなり、柵を外されたり、転倒・転落の危険が非常にありま した。病院にしばらくいていただくと、そういう不穏状態が改善する こともありますが、少なくともその時点ではかなり危険な状態があっ た と 考 え ま す の で 、 そ うい う意 味 で は 緊 急 性 も あ り ま し た し 、 非 代 替性もあって、一時的な意味での抑制というのは必要性があったと私は 考えております。

裁判官)体幹抑制のほうは、どちらの目的になりますか。
S)体幹抑制は、転落の防止になります。ベッド柵から転落を予防するのが体幹抑制になります。飽くまでも、ひもが少し緩めに取ってありまして、上体は起こせる状態になっておりますので、少なくとも肺炎の 状態を悪化させるような状態にはならないと考えますし、実際に側臥位にはなれますので、そういうことからすると、治療に関して特にデメリットになるようなことはないと考えました。逆に、転倒 ・転落し て、そうい うことによって患者さんに不利益が被ることのほうがより 高いと考えました。

裁判官) 静さ ん の よ う に 高 齢 の 方 に つ い ては 、 1 度 転 倒 ・転 落 を 起 こ す と ど う い っ た事態が生じると予想されますか。
S)その受傷した部位にもよるんですが、一番多いのが大腿骨の頚部骨折 と い う の が よ く 起 き ま す 。 そ の 場 合 は す ぐ に 手 術 を し て、 人 工 骨 頭 と いう手術を受けなければならなくなるので、本人にとっても非常にデメリットですし、侵襲も大きいことになってきます。それを契機に寝たきりになることが非常に多いので、デメリットが多いと考えます。

裁判官) 今回の静子さんのような年齢あるいは栄養状態等のことを踏まえると、人工骨頭等を置換する手術等は できた ということですか。
S)入院時の状態からすると、まず食事が食べれていないことですね。で、 アルブミンが1. 5 ということからすると、まず整形外科にコンサルテーシ ョンしても、手術の適用にはならずに、そのまま保存的にとなる可能性も高いと思います。

裁判官)  上肢の抑制は、先ほどの目的で言うと、何のために行われることにな るんでしょう。
S)この場合、上肢の抑制は、ベッド柵に多分手を縛り付けてたと思うんですが、これは飽くまで点滴を抜かれないようにするためであります。
先ほど申し上げましたけども、愛知医大から抗生剤の継続の指示が出 てましたし、禁食ということで、点滴をしないと脱水状態になってし まうこと、ゾシンの抗生物質をしないと肺炎の更なる悪化の可能性が あることから、点滴は必須であったと考えますので、上肢の抑制をさせていただきました。

裁判官) それでは、ミトン等の策ではなくて、今回のような上肢の抑制が必要だった というのはどういうふうに思われますか。
S)ミトンは擦り抜けてしまったりとか、うまく行かない可能性がちょっと高いものですから、上肢の抑制ということになったとは考えております。

裁判官) 擦り抜けるとか、うまく行かないというのは 、もう少し分かりやすく言うと。
S)手袋を擦り抜けて、細い方なので、ミトンの中から手がするっと抜けてしま ったりとかいう可能性がかなりあります、ミトンだと。普通の上肢の抑制に比べると、ミトンというのは弱い印象がありますので、 そ れ で こ れ を 選 択 さ れ た の で は な い か と 考 え ま す。

裁判官) 仮に自己技針をしてしまったとしても、その都度対処するということはでき なかったんでしょうか。
S)その都度対処するという方法もあると思います。ただ、頻回に抜かれ てしまうと、もう本当に入れたら抜く入れたら抜くだと、ほとんど水分とか抗生剤が入らない状況になってしまいます。そうすると 、逆に治療のデメリットになってしまいますので、やっぱりある程度抑制はさせていただいて、必要な抗生剤とか点滴は入れていきたいと思うのが印象であります。

裁判官)水分とか抗生剤を、あるいは栄養を入れると考えたときに、今回の静さんの場合で言うと、その入れるスピードあるいはそのために必要な時間というのはどれくらい掛かるということになるんですか。
S)ま ず、 最 低 一日 に 1 リ ッ ト ル は 点 滴 と し て 必 要 に な っ て く る と 考 え ま す。非常に細い方でありますが、それでも基礎代謝というのがありま して、やっぱり1 リットルぐらいは点滴としては必要になるかなと考えます。あとは 、電解質と言って、一日に必要なナトリウムとかカリウムというのが必要になってきます。それらを投与しないと、要するに電解質という、そういうナトリウムとカリウムのバランスが狂ってくると、心臓が止まってしまったり、非常にひどい浮腫になったりと か、いろんなことが起きてきますので、 一日に必要なナトリウムとかカ リ ウ ム と か 、 そ う い う 電 解 質 と、 あ と 、 必 要 最 低 限 の 糖 分 、 大 体 一日に4 0 0 カロリーぐらいは必要だと言われてますけど、それを補う ために、糖分、ブドウ糖が入った点滴、これらをやはり最低でも1 リットルぐらいはする必要があったのかなと考えます。

裁判官)その必要な量を今回考えられる投与のスピードを前提にしたときには、どれくらい時間が掛かるんですか。
S)基本的には2 4時間で入れるのが基本になってます。急速に入れてし まうと、高齢者でありますし、心臓に負担が掛かってしまいます。あと、ブドウ糖とかは、急速に入れてしまうと血糖値が上がるだけで、 分解させずに、そのままおしっこに出てしまうんです。そのためにブドウ糖とかもゆっくり点滴する必要がありますし、カリウムという電解質も非常にゆっくり入れる必要があって、カリウムを急速に入れると心停止してしまいます。そのために、これらの電解質はなるべくゆっくり入れる必要があります。 

原)転落の危険があるからということで体幹を抑制したというお話がありましたよね。
転落を防止するために、体幹抑制以外に低床のベッドにすることがあるでしょう。
それは、おたくの病院でもベッドを低床化することができるんだそうですね。
S)ちょっと申し訳ないですけど、私、その辺について知らないです。
原)先ほど師長さんはそう言っておられたんですが。
S)ああ、そうなんですか。

原)それから、不穏状態の激しい人の場合は 一時的にベッドをナースステ ーショ ンのすぐ近くに移動させて様子を見るということもやりますよね。
こういう方法によって、転院直後の不穏状態のときについては、その不穏状 態から危険を回避する方法というのは考えられなかったんですか。
S)それは、 マンパワーの問題もあると思います、正直に言うと。大学病 院 と か 、 非 常 に マン パ ワ ー が あ る と こ 、 7 対 1 看 護 だ と か 、 看 護 師 の 数が十分に充足している場合は、その患者さんにある程度付き添った看護は可能だと思います。残念ながら、おりど病院の場合は1 0 対1 看護で、夜間の看護師体制、2 人になってしまいます。実際に静さ んに1 人が付き添ってしまうと、ほかの患者さんの回診ができなくな ってしまったり、病棟が回っていかないということもあります。そのために 、 例えば ナ ー ス ス テ ー シ ョン に 連 れ て き て も 、 ナ ー ス ス テ ー シ ョンに誰もいないと 、全く意味がないと思うんですよね。
ナースステーシ ョンに誰もいないこともあります。 

原)実際、そういう問題を検討されたかどうかを聞きたいんですけど、ナースステ ーションに連れてくるとか、あるいは低床ベッドにする。まあ、低床ベッ ドは御存じなかったんだから検討してないでしょうが、そういうことは余り検討はされないもんですか。
S)私の記憶では検討はしなかったと思いますね。

原)先ほど、体幹抑制して、上肢の抑制も必要だったとおっしゃるんだけど、体幹抑制をしても側臥位になれるから大丈夫なんだとい うふうにおっしゃった
けど、上肢抑制もしちゃったら、腕が柵に縛られてるから側臥位にはなれないんじゃないですか。
S)(抑制帯は)ある程度伸びるのと、実際には側臥位にはなれてるという(看護師の)記載もあるし、なれてると思います。

原)なれてるというのは、カルテ記載のことをおっしゃってるんですね。柵をつかんで側臥位になれてるという。
S)実際に当院でのシミュレーション、体幹抑制をして上肢抑制をした状 態 で ど の く ら い 動 か せ るか とい うの が 証 拠の再現ビデオ と し て出 て る と 思 う ん で すけど、かなり動かせると思います。 

原)実際、娘さんに見ていただいたら 、あの動画の様子と縛られていたときの様子とは随分違うんじゃないかとおっしゃってて、7 月1 3 日の1 8 時2 3 分、亡くなられた頃ですね。 (うなずく)
そのときの様子を写真に撮られたものなんですが、これを見ると、腕は柵の と こ ろ に 抑 制 さ れ て、 ほ ぼ 腕 が 伸 び た 状 態 で す よ ね 。
S)はい。

原)この状態だと、腕が伸びて、柵に固定されてれば、動かしようがないんじゃ ないですか。
S)私は、この状態でも動かせると思います

原)側臥位になれるんですか。
S)はい、なれると思います。

原)先生、カルテ読まれて、“側臥位になってる"と書いてあるときには、"柵を つかんで側臥位になってる"と書いてあるのも知っておられますか。
S)はい。

原)これは柵をつかめないですよね、この状態では。
S)はい。柵をつかめなくても横になれると思います。

原)おりど病院が提出した身体拘束の再現ビデオについて、"両手を抑制されて 、胴体も抑制されたモデルが寝返りを打ってるものが出してあります''というふうにおっしゃったんですが、私が見る限り、"寝返りを打っているモデルは両手の拘束はない"と思います。その 点は御確認いただいてますか。
S)その辺は、確認、もう一度しておきます。


以上がS医師の証人尋問の回答でした。

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