【読書記録】お金2.0新しい経済のルールと生き方読んだ感想
「価値」という漠然としたものをやりとりするために誕生した「お金」。価値の保存・尺度・交換の役割を担うお金が、社会でプレゼンスを高めていったのは18世紀頃にさかのぼる。市民革命により身分の影響力が薄れる一方、お金を増やすこと自体が目的と化し、資本主義は発展を遂げていった。
国家が管理する中央銀行がお金を刷って、経済をコントロールするのが標準的になってきたのは、この100年ほどである。そうなると、仮想通貨やブロックチェーンなどの新たな仕組みが100年後の標準になっていてもおかしくはない。
ビットコインは、中央の管理者が不在でも成り立つバーチャル上の通貨だ。ビットコインをはじめとする仮想通貨は、法定通貨とは全く違うルールで動いている。仮想通貨を既存の金融業界の枠組みに当てはめようとすると、その本質を見出しにくくなってしまう。
【読書記録】お金2.0・要約
経済とは「人間が関わる活動をうまく回すための仕組み」と佐藤は語ります。今まで読み解く対象だったそれは、いまや「作り上げていく対象」となりました。それゆえに今の時代の経営者は、「よくできた経済システムをつくるプロ」であることが求められるようになっているというのです。その経済システムは、どのような要素で成り立っているのでしょうか。作者は、発展する経済システムの要素は以下の5つだと解説しています。
インセンテイプ
まず報酬が明確であること。生物的、社会的な欲望を満たされること。儲けたい、モテたい、認められたいの3Mが満たされること。
リアルタイム
その経済の参加者が、常に「状況は、時間によって変化する」ということを知っている、ということ。
不確実性
運と実力、両方の要素があるべきです。実力だけでも、運だけでもそれぞれの積極性が失われてしまいます。
ヒエラルキー
平等といわれても、実際には偏差値や年収、売上、その他さまざまな指標で、秩序の可視化がおこなわれています。そのポジションを守ろうとする力が必ず働くのです。
コミュニケーション
その経済の参加者同士が助け合ったり、議論する場が用意されていて、全体が1つの共同体であることを認識できるということ。
この5つで経済は発展していきますが、発展した後に、安定性と持続性をもたらす2要素というのが追加されます。それは「寿命による移動先」と「共同幻想」です。経済システムは必ず「淀み」が発生し、新しい環境が望まれます。システムが永遠に機能することはなく、完璧なものは最初から作れません。よって、そのものの寿命を最初から計算し、別のシステムに移っていける選択肢を用意しなければいけないのです。共同幻想は、いわば「理念」です。「理念」や「美学」に共感すれば、ついてくる人は必ずいます。こういった価値観の共有が重要になってくるのです。
お金や経済の世界において、今後10年という単位で最もインパクトのある変化の流れは「分散化」です。これまでの経済は、分散化とは真逆の「中央集権化」によって秩序を保ってきました。なぜなら、近代社会が「情報の非対称」を前提につくられていたから。情報の偏りがあり、リアルタイムで情報共有できない社会では、仲介者を「ハブ」として全体を機能させる必要があり、必然的に”力”は中央の「ハブ」に集まるようになります。しかし、誰もがスマホを持ち情報の非対称性がなくなった現代では「ハブ」に価値はありません。「企業⇔個人」が主流だったお金のやりとりが、「個人⇔個人」への流れがメインとなり、そこには今までと全く異なる経済が発展します。そうして分散化が進むと、独自に価値を発揮する経済システムそのものをつくれる存在が大きな力を持つようになります。
まとめ
発展する「経済システム」の5つの要素
①インセンティブ:報酬が明確である
②リアルタイム:時間によって変化する
③不確実性:運と実力の両方の要素がある
④ヒエラルキー:秩序の可視化
⑤コミュニケーション:参加者が交流する場がある
AlphaGoというAIが囲碁の世界チャンピオンに勝利し、人々は人工知能の発展を目の当たりにしました。膨大なデータを機械に学習させることで、知性さえも人間固有の強みではなくなる可能性が高いのです。ネットワーク型社会によって起こる分散化と膨大なデータが溢れることによって進む自動化。この2つが混ざったときに起こる「自律分散」が多くのビジネスモデルを覆すことになるかもしれません。
リーマンショックあたりから、現在の資本主義への懐疑的な流れが加速しつつあります。さまざまな金融スキームが考案され、つくっている本人さえも何を扱ってるかわからないような商品が増えてきました。その背景にあるのは「手段の目的化」であると著者は見ています。本来「お金」は、価値の交換・保存・測定のツールに過ぎませんでしたが、徐々に「お金を増やす」という部分だけが強調され、多くの人がそこしか見なくなりました。結果的に、実体経済と全く関係ないところでお金だけが動くようになっていったわけです。
お金だけがひとり歩きする中で、多くの人が感じていたのが、「お金にはならなくても価値のあるものって存在するよね?」という疑問。財務諸表で資産として認識されなくても、価値のあるものはたくさんあるということです。
・資本主義の中で価値のあるもの
・世の中が考える価値のあるもの
ふたつの間にある大きな溝に違和感を持つ人が増えてきてます。
つまり、「お金」が価値を媒介する唯一の手段という”独占”が終わりつつあるということ。価値を交換・保存・測定するツールが必ずしも「お金」である必要はないわけです。今後は、可視化された「資本」ではなく、資本に変換される前の「価値」を中心とした価値主義に世界が変わっていくと予想されています。資本主義では意味がないと考えられていた行為が、価値主義では重要な行為になるようなことが起こるわけです。「価値」とはとても曖昧な言葉ですが、本書では価値を以下3つに分類しています。
有用性としての価値
→「役に立つか?」という観点での価値
内面的な価値
→共感・興奮など、内面に効果を及ぼす価値
社会的な価値
→社会全体の持続性を高める価値