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最後の日もサプライズ


 わたしは、小学校の教室で、放課後の数時間、小学校の低学年の子どもたちを見守るパートをしている。

 今年度、最後の日。1、3年生。

 春休みが近づいて、みんな浮かれている。この雰囲気、冬休み前にも感じたなぁ。子どもたちは素直だ。ただ、そうすると、諍いも多くなる。今日は、要注意だ。

 1年生の子たち、最後ってことを意識している子と、あまりピンときていない子がいるみたい。けれど、3年生の子たちは、とても意識しているようだ。預かりは、3年生までだから、本当に今日が最後になる。

 わたしは9月からパートを始めたから、子どもたちとは約半年のお付き合い。回数が少ない3年生の子たち、名前を呼び間違えることが、よくあった。失礼だったね。ごめんね。

 自由時間になり、3年生の女の子たちが集まって、何やらしている。ひとりの子が、「先生、サンキューって、英語でどう書くの?」ときくので、紙に書いて渡した。近づくと、「見ちゃダメ!」と。そうか。何をしているのか、すぐにわかったけれど、素知らぬふりをしておく。

 やっぱり、みんないつもより、そわそわしている。ランドセルの蓋が閉まらないからと、男の子が3人、団子みたいに重なっているのが見えた。いや、3人乗っても、ランドセルって閉まらない気がするんだけど。そう思いながら話をきいて、閉めるのを見守る。

 それから、オセロで揉めている子たちの仲裁に入りしばらく勝負を見守った。どちらの子も、ひっくり返せる駒を真剣に探してる。次に、女の子たちから、自由帳に描いた絵を見せてもらう。色鮮やかで可愛らしい女の子がかいてある。おしゃれだ。

 自由時間が終わり、ほぼ片付けが終わったタイミングで、3年生の女の子たちから呼ばれた。相棒の先生も一緒だ。

 「せーの!」
 「先生!一年間、ありがとうございました!」

 6人の女の子たちが笑顔でそう言いながら、A4サイズを二つ折りにしたカードを手渡してくれた。中を見ると、小さい紙が貼ってあって、それぞれの子のメッセージが書いてある。サンキューがいっぱい!

「ありがとう!うれしいよ」わたしが言うと、ひとりの子が、「これが最後のサプライズだよ!」と笑う。

 あっ、そうそう。わたし、たくさん驚かせてもらったよ。1番驚いたのは、なくなった将棋の駒を、みんなで探し出してくれたこと。見つけた駒をティッシュで包み、「はい、先生、プレゼント!」って、くれたよね。

 あの時は、余裕がなくて、「ありがと」って、プレゼントをそのまま、ポーチに入れようとして、みんなを焦らせたっけ。

 「今、開けて!」そう言われて、開けてみて、びっくり。うれしかったし、助かったよ。将棋、あなたたちが遊んでたわけじゃないのに、見つけてくれてありがとう。

 わたしたちも、子どもたちにプレゼントを贈る。「一年間お疲れさま、ありがとう」の気持ちを込めて、折り紙で花束を作ったのだ。それを相棒の先生が、ひとりひとりに手渡してゆく。子どもたち、とても喜んだ。うれしそうな顔をみて、わたしもうれしくなる。

 帰る時間になった。

 並んで帰る子どもたちを、手を振りながら、笑顔で見送る。気がついた1年生の男の子が、後ろ歩きしながら、手を振り返してくれた。

 みんなみんな、これからも、元気に楽しく、自分らしく過ごせますように!



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