夜景はなぜ美しいのでしょう?
ここは東京都庁。
「展望室」の看板を頼りに夜景をめざす。
もうこんな時間だし、この日はレストランのある北展望室が休みということもあり観光客の姿はまばらであった。
そんな中、私1人。
手荷物の検査を終えた後、南展望室へ向かうエレベーターに乗り込み55秒間。1組のカップルと一緒になってしまい、息が詰まる。
短いようで一生分の長さにも感じられた時間が過ぎ、鋼鉄の扉が開いた。
広めのホールのような空間に出ると、まわりは一面ガラス張りになっていて、まるで東京のパノラマ写真を映画館でみせられている気持になった。
-リアルではないのだ。
-東京は灰色。
最近はそんな風に思いながら、日々を過ごしていた。
私は、確かめたかった。
上から見渡すことで、東京は生きているのか、予想通り死んでしまっているのかを。
それをこの目で確かめると、私自身も東京の一部になってこのまま生きていけるかもしれない。
-もう少し、よく見てみよう。
微かな希望を頼りに、展望室の窓へ近付いた。
「···あれがパークハイアットだね。今度僕たちが宿泊するところ···。」
「···そうね、本当に楽しみだわ···!!。」
リア充達の会話も心地よいBGMに聴こえるほど。
-まぁ、なんと。なんと美しいのでしょう。
遠目で見た時は良く分からなかったが、一つ一つの灯りがまるで、瞬く星のようにちかちかと輝いている。
-Life of sparkle.
ずっと安定することはない、不規則な輝き。
その下には、今も様々な事を考えながら、毎日を過ごす人々の暮らしがあるのだ。
これこそが生命なんだろう。
きっといつか。私も輝ける時が来る。
それまでもう少し、素直になって頑張ってみようかな。
命を見せてくれてありがとう、東京。
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