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今日の一冊vol.7《 鹿の王 水底の橋》

上橋菜穂子さんの著作は、精霊の守り人シリーズ・獣の奏者まで、ほぼハードカバーで揃えていた。

特に守り人シリーズは、おそらく小学校高学年あたりからほぼリアルタイムで最終巻まで追っていた記憶がある。

ハードカバーは当時の私にはなかなか手がのびない、ハードルが高いものであったが、ほかのきょうだいとともに母も読んでいたこともあり、お金に関しては補助をして貰えた。

今も本棚にきちんと並べて保管してあり、時折ホコリをはらいつつ読み返している。

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Twitterのほうでもちらりと触れたのだけど、上橋さんの作品は複数の主題級の題材を扱いつつも、そのいずれもを埋もれさせることなく、巧みに絡ませつつ、織り上げられた美しいものがたりを読者の前に広げてみせる。

同時に上橋さんの作品には、メッセージ性がありつつも、押し付けがましさがないのだ。

おそらく、上橋さんのあたたかみ溢れるまなざしがそう感じさせてくれるのだろう。

映画化も楽しみだが、個人的には「水底の橋」も、全6話くらいでアニメ化もしくはドラマcd化などしてくれないだろうかと思っている。

さいごに。

副題の「水底の橋」が持つ意味について、あれこれ考えてみた。

今は水底に沈む橋も、かつては川に隔てられた岸を結び、人々やものの往来を助けてきた。

私たちの目に触れぬ、存在すら忘れてしまったものたちも、朽ちて錆びついた今でも、橋となって物事を結びつけ、私たちを支えているのだと。

帯の言葉を改めて噛みしめる。

現在の状況にあって、その一文は、痛みを伴って私たちの背中に投げかけられている。


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