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ロサンゼルス・タイムズ: CIA は以前にもウクライナの武装勢力を支援したことがある。それらの過ちから学べ(2022年2月25日付)

寄稿者 JEFF ROGG 米国諜報史家、シタデル大学情報安全保障学部助教授
翻訳元 https://archive.ph/dHCgu#selection-1717.0-1729.3



ウクライナが燃え、CIAは冷え込んだようだ。冷戦時代に戻ってしまったかのように。

木曜日、ロシアは陸、空、海からウクライナに侵攻したが、CIAはもう何年も前から、先を見越した情報収集や分析だけでなく、ロシアの占領に対して反乱を起こすウクライナ人の準備を整え、この瞬間のために備えてきた。

先月のニュースで、同機関が2015年から米国内の秘密施設でウクライナの特殊部隊や情報将校を訓練していることが明らかになった。一部の米政府関係者は、CIAは単にウクライナ人に情報収集の訓練をしているだけだと主張し、この報道を誤魔化した。このプログラムには別の秘密の目的があり、それはロシアに占領された場合の暴動のためにウクライナ人を準備することだという。

Yahoo Newsの報道で、ある元情報機関高官は「エージェンシーのプログラムは重大なインパクトを与える可能性がある」と説明した。同様に、米国が支援する暴動の結果について希望を表明する論者もいた

これらの楽観主義者は、1949年、ソビエトに対するウクライナの暴動を支援したCIAの最初の試みを含む、過去の米国の取り組みからの教訓を忘れている。これは失敗に終わり、数十年後にCIAはこの取り組みを「不運と悲劇」と判断している

ウクライナの暴動は、今日も同じ困難に直面する。

ロシアの諜報活動は、介入するCIAにとって深刻な脅威となる。ソ連情報部は当初の失敗を経て、ウクライナのレジスタンスに浸透し、1950年代初頭の反乱軍の崩壊につながった。

もしロシアが、CIAがウクライナ人に暴動の準備をさせていたことを知らなかったとしても、今は確実にそのプログラムについて知っている。メディアで報道され、ジャーナリストが耳にしたのなら、ロシア諜報機関も同様に知っている。おそらくCIAのプログラムのリークは、ロシアがウクライナに侵攻すればCIAの支援を受けた暴動に直面するということを「知らせる」ためのものだったろうが、ロシア情報部はすでに抵抗軍のリーダーを妥協させたり無力化する準備をしていたはずだ。ロシアが軍事占領の際に作成すると言われている「殺害リスト」の上位に彼らが位置することは間違いないだろう。

CIAは最近、外国人諜報員の保護に苦慮している。2021年10月には、数十人の情報源が捕らえられ、殺され、あるいは二重スパイにされていると警告する極秘電報を世界各地の局や基地に送ったCIAのネットワークを解体し、CIA職員の身元を吹聴してきた中国は、ロシアの狩りに協力する可能性がある。

暴動は民間人の莫大な苦しみをもたらすだろう。CIAの関与は、ロシアに一般市民を標的にしうる良い口実を与える。冷戦初期、ソ連は反乱鎮圧作戦の一環として、何十万人ものウクライナ人を、投獄し、処刑し、国外追放した。CIAの訓練プログラムは今や公に知られているので、ロシアはウクライナの反政府勢力がCIAの代理人であることを説得力を持って主張できる。これは、ウクライナ東部の親ロシア分離主義者に宣伝として奏功し、また破壊工作員を「根絶」するためにウクライナ市民に対して取る厳しい措置の正当化に使える言明だ。

CIAはウクライナの暴動の見通しについて現実的でなければならない。1950 年、CIA がウクライナで初めて作戦を開始してからわずか 1 年後、この作戦に携わった米軍将校は、自分たちが負け戦を演じていることを認識した。今日、ウクライナ人が暴動を持続できるということにも、またそのような抵抗に直面した場合、ロシアが撤退するであろうということにも、明確な根拠はない。

CIAはウクライナ人に対して、そしてCIA自身に対しても、本当の意図について正直になる必要がある。後に機密扱いとなった最高機密文書によれば、米国が支援した最初の暴動では、米国当局はソ連から搾取するための代理勢力としてウクライナ人を利用するつもりであった。今回、準軍事プログラムの第一の目的とは、はたして、ウクライナ人の祖国解放を助けることか、それとも、ロシア人の命と同じくらい、いやそれ以上に多くのウクライナ人の命を犠牲にするに違いない長い暴動の末に、ロシアを弱体化させることか?

ウクライナの暴動が何年もかけてロシアを血祭りに上げたとしても、この紛争が原因で中・東欧に紛争が広がる可能性がある。これは、冷戦時代から今日のアフガニスタンやイラクに至るまで、米国の準軍事活動の歴史に見られるパターンなのだ。米国や外部の人間が代理戦闘員に武器を流した場合、そのリスクは飛躍的に高まる。なぜなら、そうした武器は今後数十年にわたってテロリストや民兵、その他の派閥の手に渡ってしまうからだ。また、ウクライナでの代理戦争が、意図せずして米ロ間の実際の戦争につながる危険性もある。

米国は、ウクライナ人に自国のコミットメントの限界を明確に伝えるべきである。1949 年、米国はそうしなかった。CIAの諜報史家であるジョン・ラネラーグは、このプログラムが「冷酷無情を示している」と主張した。なぜなら、ウクライナのレジスタンスは、アメリカの軍事的関与が拡大しなければ成功する見込みがなく、「アメリカは事実上、ウクライナ人に死にに行くよう奨励していた」のである。バイデン大統領は木曜日に、米軍は「ウクライナで戦うためにヨーロッパに行くのではない 」と述べた。それが本当なら、CIAの支援はウクライナを救うのに十分ではないだろう。

関連事項を学ぶのに何十年と遡る必要はないのである。ほんの半年前、タリバンがアフガニスタンを支配したとき、CIAは自分がアフガンの同盟国を救うため駆けずり回っていることに気が付いた。ウクライナでも意図したように暴動をサポートする代わりに、CIAは自分が救出作戦を打ち上げることになると気付くかもしれない。


写真:2月初旬にキエフで行われたレジスタンス訓練に参加した市民たち
   (Efrem Lukatsky / Associated Press)


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