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「カリスマ校長」が去ったあと(上)

 今から数年前、東京都千代田区立麹町中学校の学校改革が全国的な話題となった。

 2014年に就任した工藤勇一校長(当時)が、公立中学校にとって「当たり前」だと考えられていた「宿題」「定期テスト」「頭髪・服装指導」「学級担任制」をすべて廃止したのだ。

 また、制服(標準服)や体操着も「着用自由」として一部に私服を導入するなど、生徒の自主性や主体性を重んじる方向に大きく舵を切ったのである。

 公立の小学校長だった私自身の肌感覚でいうと、中学校は小学校や高等学校に比べて改革をすることが難しいのではないかという印象があった。

 高校入試、部活動、生徒指導などに代表される「目の前の課題」へ対応することに忙殺されて、中長期的なことにまで手が回らないだろうという思い込みがあったのだ。

 それだけに、当時の麹町中学校の改革には目を見張ったし、「生徒の自主性や主体性」を尊重しようとする姿勢にはエールを送りたいような気持ちになった。

 しかしながら、
「きっと、近隣にある中学校の校長先生たちは、やりにくいだろうな〜」
 と思ったりもしたものだ。


 様々な学校改革を行った工藤校長は、2020年3月で同校を去り、同年4月に横浜創英中学・高等学校の校長へ就任した。同校でも数々の改革に取り組んで志願者を大幅に増やすことに成功し、2024年3月に退職をしている。

 一方で工藤校長の後任である長田校長は、3年間の在任期間中、前任者の改革路線をほぼ踏襲したようだ。

 ところが、2023年に着任した堀越勉校長は、麹町中学校を「課題のある学校」だとして、元校長が改革してきたことを次々と従前のように戻し始めたのである。

 こうした記事を読むと、
「元校長の取組を面白く思っていない人たちが、『工藤カラー』を一掃しようとしているのだろう」
 と思いがちである。

 だが、麹町中学校のPTAが行った堀越校長へのインタビュー記事を読むと、そうした印象はいささか変わってくるのだ。

(つづく)

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