45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(28)
「よそもん」の視点②
戸沢村は山形県の北部に位置し、村のほぼ中央を東西に最上川が流れる風光明媚なところだ。江戸時代の俳人・松尾芭蕉が「五月雨を集めて早し最上川」という句を詠んだのも、この戸沢村だったと言われている。
村内では山形県のブランド米である「はえぬき」が栽培されているほか、最上川の豊かな水を生かした野菜づくりが盛んである。そうした農産物を使った郷土料理には様々レパートリーがある。
それにもかかわらず、村の人々の口癖は、
「この村には何もない」
「だから、若い奴らはみんな村から出ていってしまう」
であり、この角川(つのかわ)地区もその例外ではなかった。
そんな集落に大きな変化が訪れたのは、このセミナーが開催される約2年前に、東北大学の大学院生だったDさんが、フィールドワークの一環として、たまたまこの角川地区を訪れたことがきっかけだ。
Dさんは、この土地の自然や伝承文化などにたちまち魅せられ、
「村の人々が見過ごしている魅力をもっと発掘し、発信するべきだ」
と考え、それを関係者に伝えたのだ。
最初のうちは半信半疑だった角川地区の人々も、大学院を休学して集落に移り住んできたDさんの熱意にほだされ、一人、また一人と協力者が増えていく。
そしてついには、観光客や学校向けに「民泊」のモデルプランをつくるまでに至ったのだ。
Dさんの情熱もさることながら、それを受け入れた関係者の柔軟性や包容力があったからこそ、こうした取り組みが可能になったのだろう。
セミナー初日の午後は、代表者によるパネルディスカッションや翌日の活動の説明会を行った後、いくつかの民家に分かれて分宿をさせてもらった。
そして2日目の午前中には、4つの班に分かれてフィールドワークを行うことになった。このフィールドワークが、今回のセミナーのメインイベントだとも言える。
各班の主な活動は次のとおりだ。
(つづく)
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