45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(29)
「よそもん」の視点③
2日目の午前中には、4つの班に分かれてフィールドワークを行った。
私が参加した本郷地区での最初の活動は、森林の間伐体験である。密集化した立木を間引く作業を見学したり、実際にその活動の一端を体験させてもらったりした。
また、伐採した木の一部を、なめこを栽培するための原木として利用している様子も見学させてもらった。一般的になめこの栽培は困難だと言われているが、原木を利用して自然に近い条件で栽培をすることにより、良質のなめこを収穫することができるのだという。実際に、戸沢村産のなめこは消費者からも評判がいいらしい。
村の古老からは、「雷が落ちた木には、キノコがよく生える」という言い伝えがあることを教えてもらった。この言い伝えは迷信だと思われてきたが、近年、稲妻のような電気ショックをキノコに与えると成長が促進される、ということが科学的に証明されたのだという。
おそらく、こうした昔ながらのノウハウが、なめこの栽培も含めた様々なところに生かされているのだろう。
続いて散策道に茂っているススキなどの草刈りを行った後は、小川や沼に行って水辺の生き物の捕獲と調査である。
網と水槽を持って生き物探しをするのは、初任者として赴任したI小学校に勤めていたとき以来、約20年ぶりである。この小学校は、横浜市内でも珍しく学区内に専業農家があるところだった。けれども、そんな自然豊かな学区であっても、採集できる水辺の生き物といえば、せいぜいザリガニ、ドジョウ、カエル、タニシぐらいだった。
しかし、角川地区では違う。1時間半ほどの活動で、フナ、ヌマエビ、メダカ、サワガニ、タガメ、タイコウチ、ゲンゴロウ、カワゲラ、トビゲラなどを大量に捕まえることができた。
日本財団の職員として参加しているTさんは、帰国子女であり都会育ちである。当然のことながら、こういう活動は生まれて初めてだった。そんなTさんは、水槽の中でタガメがメダカを捕まえて体液を吸う様子を目撃してしまい、絶句をしていた。その表情が今でも印象に残っている。
きっと、こういう場所に来たら大興奮する子どもたちはたくさんいるに違いない。子ども時代のTさんにも、こんな活動をさせてあげたかったものだ。
草むらに目を移すと、様々な種類のトンボ、バッタ、チョウなどの姿を見ることができた。その周りには色とりどりの花も咲いている。
たぶん、夏以外の季節にこの土地を訪れたときには、また違った顔で「よそもん」たちを迎えてくれるに違いない。
(つづく)
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