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『ONE PIECE』のルフィに学ぶ「校長としての資質能力」

校長に必要な資質能力

 去る10月5日、中央教育審議会の「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会が、今後の教師の養成・採用・研修等の在り方についての「中間まとめ」を公表しました。
 《「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の構築》という副題がつけられた「中間まとめ」の37・38ページには、「校長等の管理職の育成及び求められる資質能力の明確化」として、次の内容が示されています。

(4)校長等の管理職の育成及び求められる資質能力の明確化
 校長に求められる基本的な役割は、大別して、学校経営方針の提示、組織づくり及び学校外とのコミュニケーションの3つに整理される。
 これらの基本的な役割を果たす上で、従前より求められている教育者としての資質や的確な判断力、決断力、交渉力、危機管理等のマネジメント能力に加え、これからの時代においては、特に、様々なデータや学校が置かれた内外環境に関する情報について収集・整理・分析し共有すること(アセスメント)や、学校内外の関係者の相互作用により学校の教育力を最大化していくこと(ファシリテーション)が求められる。
 また、校長のマネジメントについても、学校で働く人材の多様化が進む中で、職場の心理的な安全を確保し、教職員それぞれの強みを活かすことが一層求められる。
 他方、校務をつかさどる校長は、学校組織のリーダーとして、教員の人材育成について、大きな責任と役割を担っており、教師の自律的な成長を促すべき存在である。今回の教育公務員特例法の改正により、新たに、研修等に関する記録を活用した資質の向上に関する仕組みが導入されたが、校長は、指導助言者である教育委員会の服務監督の下、実質的な指導助言者としての役割を担い、一義的な責任を負うことになる。

文部科学省Webページより

 判断力、決断力、交渉力、マネジメント能力に加えて、アセスメントやファシリテーションの能力…。
 もちろん、予測困難なこの時代に、課題が山積する学校経営を担っていく校長には、こうした力が必要なのでしょう。
 しかし、こんな疑問も浮かんできます。
「こんなに一人で何でもこなせる万能の校長が、本当に実在するのだろうか?」と。
 校長にリーダーシップが求められるのは当然ですが、あまりにも多くのことが求められすぎているようにも思えます。

ルフィの「リーダーシップ」

 漫画『ONE PIECE』の主人公・ルフィには、こんな名場面と名台詞があります。

 …仲間のナミを魚人海賊たちから解放するため、アーロンパークに乗り込んだルフィは、船長であるアーロンとの一騎打ちになります。
 ルフィの自信満々な態度に苛立ったアーロンは、
「一人で海から上がることもできないお前に一体何ができる!!」
 と怒鳴りますが、ルフィは、
「何もできねェから助けてもらうんだ!!!」
 と言い返します。
 そして剣を手に取り、不格好に振り回しながらこう叫ぶのです。

「おれは剣術を使えねェんだコノヤロー!!!」
「航海術も持ってねェし!!!」
「料理も作れねェし!!」
「ウソもつけねェ!!」
「おれは助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある!!!」

 ルフィは船長ですが、ゾロのように剣を使うことはできず、ナミのような航海術も持ち合わせていません。
 そればかりか、サンジのように料理をすることもできなければ、ウソップのようにウソもつけません。けれども、それぞれに得意なことがある仲間が一緒にいるから、海賊として冒険をすることができているのです。
 不甲斐ない自分自身を否定しないルフィに対し、アーロンは、

「そんなプライドもクソもねェてめェが一船の船長の器か?
 てめェに一体何ができる!!!」

 と詰め寄ります。しかし、ルフィは自信に満ちた表情でこう答えます。

「お前に勝てる」

 …新型コロナウイルス感染症への対応をはじめ、今の学校教育には簡単には正解が見つからない問題が目白押しです。そうしたなかで最適解や納得解を見つけ出していくためには、「わからないものは、わからない」「できないものは、できない」と素直に認め、教職員や専門家などの声に耳を傾けること、そして、「上から目線」のファシリテーションではなく、謙虚な気持ちで周囲に助けを求めていく、ルフィのような「リーダーシップ」「資質能力」が必要であると思うのです。

 もちろん、これからの校長にとって、前述したような様々な力を身につけるための努力は必要でしょう。
 しかし少なくとも、ルフィとは真逆に「おれは何でも知っている」「私は何でもできる」と勘違いした「自称・カリスマ校長」を生まないようにしていきたいものです。

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