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「退職者」は「卒業生」

 1年ほど前に、こんな記事を書いた。

 記事の内容は、次のようなことである。

・「海外研修」や「教職大学院への派遣」などの「越境学習」を経験した教員が、
「国際交流関連のNPOで働きたい」
「大学院の博士課程に進学して研究者を目指す」
 などの理由で早期退職をするケースが少なくない。

・そうした挑戦を応援してあげたいものの、教育委員会や学校管理職の立場としては「『越境学習』の経験をもっと学校現場で生かしてほしかった」という気持ちもある。

 ・・・その後、10名以上の方から、
「あの記事は私のことですね」
 と、声をかけられたりコメントをいただいたりした。

 多文化共生関連のNPO職員に転職した1名を除くと、いずれも現職の大学教員の方々である。

 大学院や教職大学院への派遣後に学校現場へ戻ったものの、その後に博士課程へ進学して大学の研究者になったり、実務家教員として大学に勤務したりしている方たちだ。

 これらの方々に共通しているのは、学校現場を「裏切ってしまった」という「後ろめたさ」を感じていることだろう。

 見方を変えれば、私が前述したような
「『越境学習』の経験をもっと学校現場で生かしてほしかった」
 という教育委員会や学校関係者の気持ちが重荷となっているのかもしれない。


 株式会社リクルートホールディングスが、退職者のことを「卒業生」と呼んで大事にしていることはよく知られている。

 同社が退職者を大事にしているという姿勢は、たとえばこんなところに表れているらしい。
・退職者の会合に現役社長などが出席する
・退職者の会合に会社が資金を提供する
・退職者を積極的に再雇用する

 こうして「卒業生」たちと良好な関係を築いておくことにより、次のような効果が期待できるようだ。

・退職者を積極的に再雇用できる

・現役社員に「社員を大事にする会社」と感じさせることができる

・退職者が「伝道者」となって、会社の良さを外に広めてくれる

・信頼できる「ビジネスリソース」を社外に確保できる


 ・・・「越境学習」の経験者は、学校にとって「エース」や「4番バッター」のような存在だといえる。それでなくとも人手不足が深刻な今、彼らに去られることが痛手であることは間違いない。

 だが、中長期的にみればプラスになることも多いはずだ。

 たとえば一般の教員に対しては、「学校管理職になる」「指導主事などの教育委員会の職員になる」「教諭として道を極めたり、職務を全うしたりする」という以外のキャリアパスがあることを知らしめることができる。

 また、学校の外側によき理解者、パートナーをつくることにもなるだろう。

 ・・・少なくとも、新たな道を歩んでいる「卒業生」たちが「後ろめたさ」を感じることがないように努めていきたいものだ。

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