子ども向け番組の中の「多文化共生」
米国の子ども向け教育番組に『セサミストリート』(Sesame Street)がある。1969年の放送開始以来、米国はもとより世界中の子どもたちに親しまれている番組だ。
エルモ、ビッグバード、クッキーモンスターなどのマペットは日本でも人気が高く、そのキャラクターを使用した商品も数多い。
また、番組では有名ミュージシャンによる演奏や、映画・テレビ番組のパロディなども織り交ぜているため、大人のファンも大勢いる。
現在、日本国内でのテレビ放送はなくなってしまったが、YouTubeの公式チャンネルで番組のコンテンツを視聴することが可能だ。
その中でも心に残るのが、「Spanish Me, English Me Song」という曲である。スパニッシュ系の少年だと思しきマペットが、ラテンのリズムに合わせて2か国語で、
「スペイン語を話す僕も、英語を話す僕も、両方あって完璧な僕なんだ」
と歌い上げる様子が印象的だ。
米国が「移民と多様性の国」であることを反映して、これまでにも『セサミストリート』には、人種、信条、障害などの面で多様な人物やキャラクターが登場してきた。
近年の米国ではメキシコやプエルトリコなどのスペイン語圏からの移民が増加し、4千万人以上が家庭内ではスペイン語を話していると言われている。
そうした事情を背景として、『セサミストリート』の番組内でもスペイン語が登場する頻度が高くなっている。この「Spanish Me, English Me Song」もその一環だと言えるだろう。
・・・翻って日本はどうだろうか。
我が国に在留する外国⼈は2021年末で約276万⼈に達し、公立学校に在籍する外国人や外国につながる児童生徒の数も増え続けている。
しかし、「NHK for School」のコンテンツなどを除けば、子ども向けの番組に外国人、それも子どもが登場する場面は多くない。
登場したとしても、アニメ『SPY×FAMILY』の主人公アーニャのような欧米系か中国人の子どもが主で、東南アジアや中南米の子どもが活躍する機会は皆無に等しいのではないかと思う。
私が知る範囲では、『とっとこハム太郎』に登場した、
「ブラジルから転校してきたロベルト」
ぐらいではないだろうか。
・・・子ども向けの番組を隈なくチェックしているわけではないので、ロベルト以外の例もあるのだろうとは思う。しかし、『セサミストリート』に比べると限定的であることは間違いないだろう。
日本も「多文化共生」を謳うのであれば、
「『プリキュア』のメンバーにベトナム出身やペルー出身の子が加わる」
というくらいのことを期待したいものだ。
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