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ガラスの天井

 間もなく、令和5年度の学校管理職や教職員の人事異動が行われる。注目をしたいことの一つは、女性管理職の割合である。
 文部科学省の調査によると、令和4年4月1日時点での全国の公立学校における女性管理職の状況は次のようになっている。

○女性の管理職(校長、副校長及び教頭)は、15,103人で、令和3年4月1日現在から746人増加。
○女性管理職の割合は22.3%(校長19.3%、副校長及び教頭25.0%)で、過去最高の割合。

文部科学省「令和3年度公立学校教職員の人事行政状況調査」より

 また、文部科学省の「令和4年度学校基本調査」と照らし合わせると、校種別に女性が占める校長、教員の割合は次のようになる。

 女性管理職の割合が「過去最高」になったとは言え、まだけっして高くはないのだ。
 女性教員の割合に比してその校長の割合が低い理由としては、次のようなことが考えられる。

〇出産や育児によってキャリアが中断するケースが多いこと。
〇一般的に男性よりも家事や介護などの負担が大きいこと。
〇依然として「男性優位」の考え方が根強い地域や学校があること。
〇上記のことが重なり合って、管理職になることを諦めたり遠慮したりする女性教員が少なくないと思われること。

 ・・・校長に占める割合の男女の不均衡は、ジェンダー・ギャップの問題であるとともに、教員の長時間労働の問題とも無縁ではないだろう。
 通常、校長になるためには、教務主任などのスクール・リーダーを何年間か経験した後に、昇任試験に合格して教頭(副校長)を務める必要がある。しかし、これらは学校内で最も時間外労働を求められる職種でもある。育児や家事、介護などと両立させることは簡単ではない。
 管理職やその候補者のハードな働き方を間近で見ることにより、「私には無理だ」と、そうした道を断念したり回避したりする女性教員は少なくないと思われる。
 こうした状況は、「女性管理職の割合を20xx年までに〇割へ引き上げる」といった数値目標を掲げるだけで改善できるものではないのだ。


 そして、この「校長に占める割合の男女の不均衡」は、学校にとって職員室の中だけに留まる問題ではないはずだ。
 先ほどの表で示したように、中学校や高等学校における女性校長の割合は全体の1割未満である。こうした状態が、そこで学ぶ生徒たちに「大人の世界では男性が優先される」ということを、知らず知らずのうちに「学習」させてしまっている可能性はないだろうか。

 ・・・学校が「ガラスの天井」を築くことに一役買っているのだとしたら、その責任は小さくない。

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