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「AIタレント」は芸能界に革命を起こすのか⁉︎

 伊藤園の「おーいお茶」のCMに「AIタレント」が登場し、話題を呼んでいる。

 私もこのCMを見たことがある。しかし、この記事を読むまでは、出演していたのが「AIタレント」だとは気がつかなかった。

 こうした「AIタレント」の起用に関しては、当然のように賛否両論がある。

 肯定的な意見としては、
「出演料が不要なのでコストカットができる」
「タレント本人や所属事務所の不祥事などに影響されることがない」
「実写では困難な表現をすることが可能」
 などが挙げられる。

 2点目については、最近も旧ジャニーズ事務所の一件があったばかりだ。「AIタレント」の場合は生身の人間と違い、予期せぬスキャンダルによって企業のイメージが損なわれるリスクが極めて低い。

 また、今回の「おーいお茶」のCMに関しては、3点目が最大の理由だといえそうだ。
 このCMでは、「現在の自分」と「約30年後の自分」の両方を別人に見えないかたちで登場させる必要があった。それには、AIで生成したタレントを起用することが最適だったのだ。


 その一方で、否定的あるいは懐疑的なものとしては、
「認知度の高いタレントではないため、発信する際のインパクトが弱い」「AIで生成したタレントの顔は著作権侵害などのリスクに懸念がある」
 などの意見がある。しかし、その最大のものは、
「AIがタレントの仕事を奪ってしまうのではないか」
 という意見だ。

 この最後の意見については、CMにかぎらずドラマや映画などにも共通の課題だ。すでに米国のハリウッドでは、
「AIに役を奪われるのではないか」
 と危惧する俳優組合によってストライキが起きているのだ。

 こうした批判的な意見を意識してか、伊藤園は、「企画の目的に合致するのであればメリットとデメリットを精査したうえで起用を検討する」ものの、AIタレントの効果検証に時間がかかることから、「現状、継続的に起用することを含め、起用の予定はない」としている。


 たしかに、生身のタレントがすべてAIに置き換わってしまっては、映画もドラマも味気ないものになってしまうだろう。

 しかし、テクノロジーの進歩によって、それまであった仕事が奪われるのは世の常である。
 映画の世界にしても、初期のサイレント(無声)映画の時代には、セリフやナレーションを肉声で伝える活弁士が俳優以上に花形の仕事だった。しかし、映像と音声が同期したトーキー映画が登場すると、活弁士は主役の座を追われてしまうのだ。

 また、AIについては拒否反応を示す一方で、ハリウッドの実写版映画では、CGなどのテクノロジーを活用することが一般的になっている。


 作曲用ソフトやボーカロイドの登場によって音楽づくりが身近なものになり、それによって世に出た才能もたくさんある。「AIタレント」の出現によって、長編映画の制作が身近なものになれば、音楽界と同じようなイノベーションが起きるのかもしれない。

 たぶん、こうした「AIタレント」のような動きは誰にも止められない。
 おそらく、そうした動きの中でAIと生身の人間とが棲み分けを図っていくことになるのだろう。

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