噂の「MacBook Air廉価版」

ちかごろ何度も噂が出ている「MacBook Air廉価版」について検証しておきましょう。2015年に登場した超薄型の「MacBook」が期待されたほど低価格にならず、Macのラインナップのエントリー機にはMacBook Airが位置付けられてきました。

MacBook Airは2017年に日本国内で一番売れたノートPCであり、当然のことながらAppleで一番売れているノートでもあります。Appleからぞんざいな扱いを受けているにもかかわらず、「事実上の主力機種」といってもよいでしょう。

誰が流した? この噂

この「MacBook Air廉価版」の噂は誰が流したものか、ということを考えると……「そういうものが欲しい」と思っているユーザーが自発的に流したり、「MacBook Airが廃止されるのであればMacを使うのをやめよう」と考えるユーザーを思いとどまらせるために、メーカー側が故意にリークした情報である可能性もあります。どちらであるかはわかりません。

Appleにとって一番負担が少ないのは、現行機種を現行の価格で販売し続けることです。CPUがモデルチェンジして採用している部品が入手しづらくなってきたら、仕方なくアップデートを考えるぐらいでしょうか。

そうはいっても、MacBook AirのACアダプタやUSBまわりなどが古くなりすぎており、いまひとつ現行ラインナップと仕様が合っていません。

55%の確率で現行のMacBook AirにCPUまわりだけアップデートした機体、45%の確率で、部分的に再設計した廉価版(?)というものがありえます。

まずは、MacBook Airとは何なのか? おさらいしておきましょう。

・すでに存在していたが使い道のなかったCore 2 Duoの小型版
パッケージを搭載することで2008年に製品化された、薄型ノート

・iPhoneなどの製造によって身につけた小型化技術がいかんなく
発揮された製品

・初代機はとくに省電力でもなく普通に「パッケージの小さいCore 2 Duo」
を採用しただけだった(TDP35W)

・当初は高価な贅沢品だった。最初期モデルこそ1.8インチHDD
採用モデルもあったが、SSD搭載機は20万円以上した。2代目
以降はすべてSSDを採用しつつも、価格低下を実現。カッコよくて
薄くて低価格という前代未聞の「ありえない」構成で大ヒット

・より薄く、より強い筐体を採用し、バッテリー寿命も伸ばし
つつ価格を下げた稀有な製品

・「アルミの板をジェット水流で削り出して作る」という試作品
まがいの作り方で量産品の製造が行われた最初のマシン

・現在のApple製ノートに共通する「キーボード側にメインボード
を収納し、底面は単なるフタ」という構造を最初に採用したマシン
(それまでは、キーボード部分がフタだった)

・本機のデザインは大成功を収め、多くのメーカーが真似をした
(マネキントッシュ現象)

・現在では、Apple製品ラインナップ中において廉価版ノートPC
と位置付けられている

・2011年の製品ではdGPUを搭載したが、以降はIntel CPU内蔵
GPUを採用

・新製品はかならずしもパワーアップ版ではなく、よりバッテリー
が保つことが重視されてきた

・2011年モデルまではシステム・バスに2.5T/秒のとても遅いもの
を使っていたが、2012年モデルからはMacBook Proと同じく
8.0GT/秒のものにあらためられた

この偉大な製品(の成れの果て)のどこをどういじくれば廉価版を作れるのでしょうか?


廉価版Airは部品をアップデートした「価格据え置き」マシン

「安さ」を実現しつつ、これから4〜5年ぐらいはモデルチェンジしないで使い続けられる程度の最低限の刷新を行うことをテーマとしてみましょう。

筐体デザインはいまでも「さすが」とうならせるものがあります。Appleロゴが光る筐体は現行製品に存在しないので、変更しましょう。また、他の製品とのデザインの整合性を持たせるために、ディスプレイ周りを黒く塗装。

ディスプレイは、もう少しグレードの低いものを使うことは不可能ではありませんが、初期の白いポリカーボネイトMacBookの「擬似階調表示」液晶まで落とすのはどうかと思います。macOSの内部設計で、アンチエイリアスをやめてRetina Displayを前提とした表示に切り替えるようなので、しぶしぶRetina Displayを採用。

macOS 10.13からM.2の安価なSSDをサポートするようになったので、これを廉価版Airへの布石と見てM.2 SSDを採用。容量は128GB。Amazon.comでM.2のSSDをMacBook Airに搭載するための変換アダプタが安価に売られています。これを採用してもよいでしょう。いまのApple製品は、両面テープで筐体を止めようが、マウスの裏側に充電端子をつけようが、なんでもアリなので変換アタプタごと採用してしまいましょう。従来機種用のSSDもM.2 SSDも両方使えてユーザーが大喜びです。

RAM。MacBook AirはCPU内蔵のGPUを利用しているため、V-RAMはメインメモリと共用です。そのため、Retina Displayを搭載するとメモリー消費が大きくなって(V-RAM用に1.5GB)、8GB標準搭載。オプションで16GBの構成にすることもできますが、上位機種の差別化のために32GBの構成にはできません(Core Mが認識する最大容量が16GB)。

iMacの超廉価版モデルが出たときにもFaceTimeカメラは省略されませんでした。省略するとすれば、CPUパワー。Core Mを積んでも誰も文句は言わないはずです。消費電力が減った分だけバッテリー容量を削りましょう。

Core Mを積むことで放熱に余裕が出るかどうか? でも放熱機構はそのまま、筐体の素材もアルミでそのままにしてみましょう。キーボードもわざわざ変える必要はありません。トラックパッドも現行の製品を踏襲。TouchBarなどという贅沢品は非搭載。指紋認証もTouchBarも積まないので、T1とかT2といった贅沢品の周辺チップも積みません。

USBまわりは、変更すると再設計のために手間がかかるので、現状のまま変更せず。

ACアダプタにMagSafe2を採用している現行機種がないので、Apple的にはMacBook Airのためだけに調達し続けるのはやめたいでしょう。Tim Cookは意外と感情的な意思決定をするようなので、日本の島野製作所から訴えられてミソのついたMagSafeを使い続けたくないでしょう。GPUにnVIDIA製品を使わない理由も一時期不良品を出して彼の「感情」を害したからだと分析しています。ACアダプタの接続の専用にUSB-C端子を搭載。Apple製品初の「周辺機器を接続できないUSB-C端子」に。

EUからの圧力によって、ごく近い将来にiPhoneの電源端子がUSB-Cに変わるようなので、いっそ「ポータブル製品のAC電源端子はすべてUSB-Cに統一しました」という売り文句を言えてよいのではないでしょうか。

「廉価版Air」全体を見回すと、価格を削れた部分もあれば、逆にコストが増加した部分もあります。従来機種と同程度の価格帯で販売できれば十分に「廉価版」といえるでしょう。従来製品のMacBook Airよりも大幅に安くなる可能性はほぼありません。

そして、新製品よりもパワーがあることを再評価された旧製品のMacBook Airが地道に売れ続けるという様子も容易に想像できるのです。

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