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14(とき)

時間に対する価値観は人それぞれ。

例えば、チケ代5000円のライブでお目当てが持ち時間25分でも、それが良いライブだったら私の中ではその5000円は元が取れている。その25分だけで5000円の価値がある、なんならお釣りが来るぐらいの感覚。
基本的には、心からそう思える人のライブにしか行かない。そもそも芸術に対して元が取れる、という下世話な感覚があまり理解できないのだけれど。

でも、これはライブに行ったことない人には理解されない感覚らしい。たった25分の為に5000円も出して更に物販でお金も使うなんて無駄だ、みたいに言われることがある。
だが芸術に於いて、時間とお金はイコールではない。たった25分と鼻で笑われたその時間を創り出す為に、費やされた時間や努力を理解していないのだろう。そこには、お金という物差しでは計ることのできない価値があるというのに。

昔の恋人と美術館に行ったことがある。
何をするのかを決めずに街へ出かけた時に、たまたま通りかかった美術館の常設展示に私の好きなモネの絵画があったからだ。
私は全ての作品の解説を読むし、音声ガイドも聴きたい、好きな作品の前では時間の許す限りその筆致や痕跡を隅々まで堪能したい、美術館や博物館で1日を過ごすことが苦にならないタイプの人間だ。
私がモネの絵画を1枚堪能し終えた頃には、その人はそのフロアの絵画全てを見終わっていた。
きちんと解説は読んだ?と聞いたら、興味があるもの以外読む必要があるの?と言われて更にカルチャーショックを受けた。たった数秒見ただけで絵の意味も理解せずに素通りって、これを創り上げた芸術家達に失礼だと思わないのか?と感じた。
相手が悪いとかではなく、ここまで時間の感覚や価値観が違うことに驚いた。
両親以外と美術館に行ったのはこれが初めてだったので、それ以来は美術館には一人で行くことにしている。価値観の共有できる人間を探すのは、それなりの労力が要るからだ。

時間の感覚や、好きなものに対する価値観は性格の相性と同じくらい大切だと思う。
結果的に、その様な細かい価値観のズレが積み重なって別れることになった。あの時点で合わないことが分かっていながら、すり合わせる努力をせず、見て見ぬ振りを続けたお互いの怠惰が招いた結果だと思う。
もしも次があるのなら、その時は最初に美術館に行こう。長々と語り合うよりも分かり易い。

それではこの辺で。

本日の執筆BGM
四の喫茶館物語/メガマソ

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