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『原料染め(先染め)』〜染色のタイミング❶〜

洋服がつくられる時にはほぼ必ず『染め』という工程が入りますが染め方や染めるタイミングはそれぞれです。

素材や企画デザインによって染め方も染料もタイミングも変わり、そういう細かいこと言えば『染め』だけでも無限の選択肢です。

今回はその中のタイミングのみの話です。

大っきくわけて『染め』には

1、原料染め(バラケ、トップ、トウ)
2、糸染め (チーズ、コーン、カセ)
3、反染め (浸染め、捺染)
4、製品染め

というタイミングがあります。
今回はまずは最初の

1、原料染め(分類上は先染め)

についてです。

◉原料染めとは

糸にする前のタイミングで染めてしまいます
バラケ・・・紡毛糸にする前(短繊維、ステーブル)
トップ ・・・梳毛糸にする前(スライバー、篠)
トウ ・・・ フィラメント糸にする前

糸にする前段階(繊維のかたまり、束の段階)で染色します。

特徴)

・一般的に染色性よい
・中までしっかり染まるので堅牢度も高い
・色に深みもでる
・原料段階で染めるので素材の風合いをいかせる
・繊維の段階で染めるので紡績、紡糸する時に色をミックスさせることが可能になり、ミックスの糸をつくることができまる。

このミックスの糸を使って布帛の生地にしたり、ニットを編んだりすると当然ミックスの生地やニットができあがります。独特の風合いになりウールなどでは高級感もでます。
(単色の糸染めや反染めだとベタッとした色になりがちなのか特にグレーでは多用されます)

原料もテキスタイルもアイテムもあんまり関係なくあらゆるものでつくられます。定番化しているので日常的に見かけると思います。

注:原料染めの単色使い(違う色を混ぜない)ももちろん可能です。繊維の状態で染めると染色性もよく深みがでますが、その後、糸にする際に撚りがかかりさらに織り上げたりすると“タテ糸““ヨコ糸“で見え方や光の反射の仕方が変わるので、そういった細かい凹凸で微妙に見え方がかわりさらに深みがでるのでこれはこれで価値があるといわれます。
正直、製品での区別はつき辛いですけど・・

ちなみにトップ(スライバー、繊維の束)の状態のウール

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伸ばしながら撚りがかかっていきます。

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◉原料ぞめの製品

下は原料染めによるミックスの糸を使った製品の具体例です。

(布帛)

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サマートロピカル、春夏ウール生地の大定番。
グレーはだいたいmixです。
スーツ、ジャッケット、パンツなんでも使われてます。
メンズだと杢グレーとかトップグレーとか言いがちです。

(ニット)

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黄色のシェットランドです。バラケ染め(紡毛の先染め)にあたるかと思います。イエローxグリーンかと思われます。
もともとシェットランドは典型的な天然草木染めセーターの代表で綺麗なシモフリミックスのカラーも特徴の一つです。
(このニットの発色は草木染めかどうか、、わかりません?)

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拡大図、色が混ざってるのがわかります。
(ラグラン袖で減らしが入ってます。ニットの特徴の復習です)

(カットソー)

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古着のスウェットです。これはブルーベースです。薄い色のスウェットは杢糸がやっぱりいいです。

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ラグラン袖付け部の拡大です。あんまりブルー感伝わらないです。ミックス具合は伝わります。
フラットシームミシンです、縫製も別の機会にやりたいと思います。


<まとめ>

・アパレル染色には大きくわけてタイミングが4回あります。
1、原料染め(バラケ、トップ、トウ)
2、糸染め (チーズ、コーン、カセ)
3、反染め (浸染め、捺染)
4、製品染め


・原料染めは糸にする前に染めます

・染色性がよく深みのある色がでます、色落ちもしにくいです。

・違う色の繊維どうしをまぜたミックスの糸が可能になるので独特の風合いの製品ができます。(単色もあります)

・ミックス調の製品は布帛、ニット、カット、またアイテムも関係なく、頻繁につくられます。

補足)
ミックス、杢、杢糸、霜降り、メランジ、トップという言葉が業界でよく使われますが、基本的には原料染めの糸や生地や製品のコトです。
お店で使ってる場合はほぼ一緒の意味で使われていると思われます。(正確な定義はあると思います)

次回は糸染めです。

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