耐性領域について 〜ギリギリの精神状態で生き抜いているロスさん〜
本能レベルで生き延びている
今回の話は、自分に何が起きているのかあれこれ模索していた私にとって、非常に衝撃的な学びの一つでした。
「耐性領域」
という言葉は耳慣れない方が多いと思いますが、
「耐えられるストレスの範囲」
のことを言います。
人間は通常、負担のない範囲で緊張と弛緩を繰り返し生きています。
ではその範囲を超えるとどうなるのでしょう?
今回は
このような内容をまとめた記事になります。
ぜひご自分の状況や知見の一つとしてお読み頂けると幸いです。
ではまず、野生動物を例に考えてみましょう。
言わずもがな弱肉強食の世界です。
例えばサバンナで、肉食動物に狙われているのを草食動物が気づいた時。
草食動物はどのような反応をするでしょうか?
圧倒的恐怖の前に草食動物が取る行動は3つあります。
①逃げる
②戦う
③硬直する
これをもう少し噛み砕いていうと、
①逃げられる時は逃げる
②逃げ場がなければ戦うこともある
でも、①も②もうまく行かなかった時に、
③硬直する
という選択をします。
硬直する=死んだふりをする
捕獲した獲物が死んだと思った肉食動物の隙をついて逃げることがあります。
また、肉食動物によっては動いている獲物しか狙わない場合もあります。
それで敵が立ち去れば、草食動物は危機を脱したことになります。
この3つの行動はどれも、身体中の神経経路がものすごい速さで回転し、膨大なエネルギーが作られています。
「硬直している時は動いていないけど?」
と思われるかもしれませんが、体は硬直していても体内では逃げたり戦ったりするのと同じように極度の緊張状態で、膨大なエネルギーが作り出されています。
凍りついた時の膨大なエネルギーは体に溜め込まれます。
動物は身震いし、余分なエネルギーを振り落とし、少しずつフラットな状態に回復していきます。
余分なエネルギーを解放する
作り出されてた膨大なエネルギーは、解放される必要があります。
これは人間も含め本来動物が持っている本能的な反応です。
動物はそれを自然に行っています。
しかし高度に発達してしまった人間の脳は、起こったことに対しての意味づけや抑圧を行ってしまい、エネルギーの解放がされません。
解放されず行き場を失ったエネルギーはどうなるでしょう?
蓄積されたエネルギーはトラウマとなり、不眠やフラッシュバック、パニック障害などの症状を引き起こすと言われています。
暴力のある状態というのは、その圧倒的な脅威に対して日々これらの反応が体の中で起こっていることです。
マズローの欲求ではどの段階?
「マズローの欲求5段階説」は有名なのでご存知の方も多いかもしれません。
人間の欲求をピラミッドのように表現し、下の階層にある欲求が満たされると順に上の階層の欲求段階にあがっていくというものです。
逆に言えば、下の階層が満たされていないのに上の階級に上がることはありません。
現在は企業のマーケティングやコーチングなどでも多く使われている理論ですが、ロスさんの状況を理解する上でもわかりやすいと思うので引用します。
欲求の段階はまず一番下に、生命を維持するための基本的欲求があります。
「生理的欲求」と言われ、食欲・性欲・睡眠欲を指します。
野生動物はこの段階にいて、これより上の段階にいくことはないとされています。
その次にあるのが「安全の欲求」です。
身体的な安全や経済的な安全の段階で、先の生理的欲求とあわせて人間にとって基本的な欲求の段階だと言えます。
次に「社会的欲求」があります。
家族や友人など、自分が属している場所から愛情を受けたいという欲求です。
これも、先の2つの欲求が満たされて初めて出てくる欲求になります。
満たされないと、不安や孤独感を感じてしまいます。
その上が「承認の欲求」で、周りから認められたいと出世やステータスを追求する段階。
細かいことをいうとこの中でも2つのレベルにわかれています。
低いレベル:地位や名声で満たされる
高いレベル:自己肯定感や自己信頼感で満たされる
これらの段階が全て満たされて、最後にくるのが「自己実現」です。
自分の可能性を実現したいと思う欲求で、精神的に健康であり、自分がなりたいものややりたいことを具現化していきます。
以上が5段階の各階層説明ですが、この上に実は6段階目として「自己超越」もあるとのちに発表されています。
ピラミッドの説明が長くなってしまいましたが、ロスさんはどの段階にいるでしょう。
一概にいうのは乱暴かもしれませんが、私は「安全の欲求」か、場合によっては「生理的欲求」にいるのではないかと考えています。
人間として生まれたからには、上の段階へ登っていきたいと思うことは自然なことです。
しかし家庭内や閉鎖的なパートナーシップで安全性を感じられない場合は、その上の人間的な喜びを得ることはできません。
その日を生き延びることで精一杯になるからです。
生理的欲求が満たされなかった話
夫は理由とも呼べない理不尽な理由でいつも私に罵声を浴びせていました。
仕事で嫌なことがあったのかもしれませんが、毎日帰宅するとまるでサンドバッグに八つ当たりをするかのように、仕事の愚痴やいかに私が何もできないかなどを罵ります。
「私を人間だと思っているのかな」
「何言っても何も感じないと思っているのかな」
「ミジンコ以下の扱いだ」
と、眠くて朦朧とする頭で思っていたものでした。
もう、反論する力もありません。
言われたことをあとから考えてもさっぱり的を得ていなかったのですが、「寝るな」と座らされて真夜中まで延々と説教されていました。
子供の夜泣きでようやく解放され、泥のように意識をなくすのでした。
子育て中はどうしても子供中心の生活になるため、睡眠不足になったりゆっくり食事が取れないこともあると思いますが、あとから考えると私は夫からも生理的欲求を阻害されていたのだなと気づきました。
家庭は社会の基盤です。
その大事な場所が安心できないと、更に上の段階を目指すどころか毎日を生き延びることだけでいっぱいいっぱいになってしまいます。
人間は良くも悪くも順応性があり、また「自分の居場所はここしかない」と視野が狭まっていると、理不尽な出来事があっても
「このくらい大したことない」
と自分に言い聞かせてしまいます。
自分に起こっていることを過小評価してしまいます。
でも、自覚がないだけであなたの心身は極限状態で生き延びていることを覚えておいてください。
そして本能レベルで一生懸命生きようとしている自分を大事にしてあげてください。
危険な環境から安全な環境に身を移してほしいという思いはありますが、そんな簡単に環境は変えられないということもあると思います。
これを読まれて自分の心身状況を客観的に把握できたことで、少しでも自分を労ってくれたら嬉しいです。
対策例
ただそれだけでは何の解決提案にもならないので、その場から離れる以外でできることとしては
「耐性領域の幅を広げる」
というのもひとつの対応策になります。
幅が広がれば、体が逃走や凍りつきという極限状態になりにくくなります。
幅を広げるには「人との関わりを増やす」ことが効果的だそうです。
信頼できる第三者に話を打ち明けて少しずつ溜まっていた感情を出すことは心の平静にとても効果的です。
もし信頼できる第三者が思い当たらなければ、心療内科で話を聞いてもらうこともいいと思います。
色んな先生がいるので、可能であれば波長が合うと感じる先生に出会えるまで、何件かまわってみることをお勧めします。
また、トラウマの治療として
「ソマティックエクスペリエンス」
という療法もあります。
私は受けたことがないので詳しいことはお伝えできませんが、気になる方はぜひ調べてみてください。
心の傷はすぐに癒えるものではありませんが、ちゃんと手当をしてあげると必ず快方に向かいますので^^
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