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無題3

忘れるというのもまた難しいものである。
忘れたと思っているうちは、本当の意味での忘れたと言えないのだと思う。
忘れたと言える状態というのは、忘れたわけでなくそう言える状態になったということだけしか意味しないのかもしれない。
少なくとも私は、もう忘れたという時には何かの拍子にふとこぼれてしまうかもしれない予感が胸の中に在って、ただそれをこぼさないようにできるくらいには記憶の整理ができたということなのだ。
意図的に忘れることも記憶することもうまくない私は、絶えず更新を続けていくしかない。更新するたびに何かを気づかないうちに忘れ、その地点を先の地点から思い出した時に知らない間に強く強く残っているものに気づく。
私にとって記憶とはそういった頭の中を入っては通り過ぎるものなのだ。
ただ私は待っている。ずっと私の頭の中に留まり居座ってくれるものの到来を。

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