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どこよりも早いNewJeans 2nd EP"Get Up"考察

2023年に25周年を迎えるWarner Bros. DiscoveryのPOWERPUFF GIRLSとのコラボレーションミュージックビデオのキャプチャー

はじめに

まことしやかに噂されていたNewJeansのカムバ情報がついに公式に解禁された。前作「Zero」から3ヶ月半ぶりとなる新曲のリリース日は7.22。これはNewJeansの最初のMV”ATTENTION"がYouTubeに公開された日からちょうど一年。また、プレリリース日が7.7に設定されている。デビュー曲の時と同様、リリースに先駆けてYouTubeにMVが公開される日だと考えられる。プレリリースからリリースの2週間の間に、BUNNIESはもちろん、TikTok等のSNSを通し、非BUNNIES層の楽曲への認知度及び関心を高めることができる。そして、リリース日である7.22には全世界がNewJeansのカムバへの期待度をマックスにして5人を待ち構えていることになる。

以下では、NewJeans公式サイトに記載の情報を元に今作"Get Up"の考察をしたい。

2nd EP 'Get Up' は全6曲で構成されており、NewJeansならではの音楽を印象深く見せてくれる作品で、作品全体に描かれている物語とともに、それぞれの曲に詰め込まれているストーリーの流れに沿って1曲目から6曲目まで曲順どおりに全曲を聴いていただくことをお勧めいたします。
1曲目「New Jeans」は作品全体のプロローグのような楽曲となっており、2023年に25周年を迎えるWarner Bros. DiscoveryのPOWERPUFF GIRLSとのコラボレーションミュージックビデオが公開される予定です。POWERPUFF GIRLSのエネルギーに似たNewJeansの姿にご期待ください。 1st EPとは対称的な概念の3つのタイトル曲「Super Shy」、「ETA」、「Cool With You」はそれぞれ異なるスタイルの楽曲となっており、多彩な魅力を放っております。 韓国ガールグループの新しい概念ともいえるインタールードトラック「Get Up」神秘的シンセサウンドが際立つ、今作のエピローグ曲「ASAP」まで、2nd EPの音楽と一緒に楽しめるミュージックビデオも制作されるのでご期待ください!

NewJeans公式サイト「NewJeans 2nd EP 'Get Up' 予約販売開始!」より

①1曲目から6曲目まで曲順どおりに全曲を聴いていただくことをお勧めいたします。

音楽のストリーミングがメインストリームとなってから、もはや音楽をアルバムという形式で提供する必要は無いのでは、という議論が盛んに行われてきた。LPやカセット、CDの時代は曲と曲とのつながり(或いはA面とB面の断絶)を生み出すこと、アルバム全体を通した雰囲気や世界観を構成することがアルバム制作の趣旨でもあった。しかし昨今は簡単にマイプレイリストを自身で作り、シャッフルリピートで聴くことが当たり前になっている。前の曲と次の曲が紡ぐ文脈など度外視し、聴きたい音楽を聴きたい時に聴く、縛りや制限のない音楽視聴が一般的になった。その潮流に対抗して、今こそフィジカルなんだ、コンセプトアルバムなんだ、という考えは音楽好きの間で高まっている機運だと感じる。山下達郎のEP・カセットの再販やceroのコンセプチュアルな新作アルバムが話題に昇ったのも記憶に新しい。

このストリーミングカルチャーが生んだ「縛りのない音楽視聴」を存分に利用してきたのはアイドルをはじめとした大衆音楽では無かろうか。キャッチーな曲や振り付けでファンの耳を掴み、SNSで広がりを見せながら、活動している生身の人間には避けられないものとして文脈が付与されていく。音楽を基点として、音楽以外の部分でファンとのコミュニケーションがより強く深く形成されていく。

しかし、NewJeansのプロデューサーであるミンヒジンは過去のインタビューで「私が披露しようとした新しいコンセプトは、音楽だった」と語っている。彼女のディレクションにはNewJeansの楽曲を聴かせる工夫がさまざまに凝らされている。"ATTENTIONの"MVを突如、メンバーの詳細を何も明らかにしないままリリースしたのは、メンバーの特徴を知ろうとしてファンが何度もMVを見ることを計算に入れてのことだったそうだ。

作品の発表時に、楽曲を6曲通して聴くことをを公式にお薦めするというのは新しい。それほどに楽曲への強いこだわりを持ち、カムバ活動やアーティストとしての成長の過程を物語とするよりも、とにかく楽曲に込めた物語で戦うという強い意志が見てとれる。本当に楽しみです。

②1曲目「New Jeans」は作品全体のプロローグのような楽曲・2023年に25周年を迎えるWarner Bros. DiscoveryのPOWERPUFF GIRLSとのコラボレーション

1st EP「New Jeans」はアーティストが一回しか使えないとされる「アルバム名=アーティスト名」で彼女の世界観を余すことなく全世界に届けた。2nd EPでは、彼女たちのこれからのアイドル生活のアンセムになるであろう"New Jeans"が1曲目に構えている。アルバムを通して聴くことを推奨していることからもこの楽曲を聴かせたい気持ちも相当なはずで、今作の再注目楽曲と言っても過言ではない。

そしてもう一つNewJeansを語る上で外せないキーワードがY2Kだろう。OMGのアウトフィットで見せたジーンズに短い丈のTシャツを着こなすスタイルは、1990年代後半から2000年代序盤までに流行した文化現象Y2Kの要素を取り入れた、どこか懐かしくも全く真新しいスタイルで話題を集めた。

POWERPUFF GIRLS、通称パワパフガールズは1998年から2005年まで放送されたアメリカのアニメだ。日本でもカートゥーンネットワークで放送されていた。00年代のアイコン的アメリカのアニメ(30周年を迎えたセーラームーンではなくて)と20年代のK-POPアイドルとのコラボは、近年のY2Kブームの一種の到達点とも言えるであろう。パワパフガールズのコスチュームを身に纏った5人がカラーのアクションゲームのプレイヤーとなっている映像は、僕たちのような、最初に触ったゲームがDSだった層にドンピシャで刺さる。そのブームを新しいものとして表現できているのは、その世代を生きていなかったNewJeansのメンバーにしかなし得ない。Z世代が新しく感じ、ミレニアル以前の世代が懐かしさを感じ、00世代は当事者としてワクワクしていた感覚を思い出させられる。現象としてではなく、目の前のワクワクとして存在していたあれこれを、20年経って年下のNewJeansが「現象」として目の前で再現してくれているのである。

③1st EPとは対称的な概念の3つのタイトル曲「Super Shy」、「ETA」、「Cool With You」

1st EPとは対称的な概念の3曲のタイトルも発表されている。1st EPに収録されていた「ATTENTION」「Hype Boy」「Cookie」「Hurt」では、どんな概念が打ち出されていたか?思春期の入り口に立つ「少女のあどけなさ」や「自然さ」であろう。「ATTENTION」のMVでは背伸びをして化粧をする少女や、友達とはしゃぐ少女の等身大な様子が描かれていた。楽曲面では、「爽快感」や「浮遊感」は4曲を貫くキーワードと言える。
そこで筆者は、2nd EPの上記の3曲を貫くのは、少女から女性へと移り変わる5人が持つ「力強さ」「打ち壊し」「傷心と立ち直り」のイメージだと予想する。

また、「ATTENTION」のBPMが105、「Hype Boy」の100、「Cookie」が157、「Hurt」が180。新曲ではBPMもアップテンポで、これから増えていくであろうコンサートで会場全体がノレるような楽曲になると予想。ハウスの要素が感じられるようなダンサブルな楽曲も入っていると予想。

「Super Shy」ではShy(恥ずかしがり)に思い悩む少女が、そこを打ち壊して突き進んでいくメッセージが込められると予想する。
「ETA」を調べてみると、電子旅行許可制のことらしく、「外国人がビザ無しでの入国をする際に訪問国のホームページに個人情報や旅行に関連する情報を入力し、国側から旅行の許可を受ける制度」だそうだ。
ここから半ば強引に楽曲の予想をしてみれば、「新しい国」に突入する過渡期にある少女たちが、その前段階として「自分」を把握する過程を描いているのではなかろうか。周囲(メンバーやファンを友達と見立てて)との関わりを整理することで見えてくる変えられようのない「自分」を歌うのでは?
P.S. ETAはEstimated Time of Arrivalの略でもあるらしい。「到着予定時刻」。
「Cool With You」では、1st EPと対称的な概念であるCool(=かっこいい)を最も打ち出す楽曲になるであろう。ここではバラード調で、ファンBUNNIESに対して(with youのyouはファン)どういう姿を見せていくかが、特定の"You"に向けて歌っているという構造で描かれると予想する。

④韓国ガールグループの新しい概念ともいえるインタールードトラック「Get Up」

韓国のアイドルグループは第四世代を終え、第五世代に入ったと報じられている。まさに時代の幕開けを想起するような”Get Up”には、1st EPで目を覚ましたNewJeansがここでGet Up(起きる)して、さらにここから飛躍していく意味が込められているように感じられる。デビューからの1年間の活動が、”目を覚ます”段階だったのかもしれない。(メンバー5人全員が超一流ブランドのアンバサダーを担い、マクドナルド、ナイキ、リーバイスといったブランドのキャラクターになった一年が、、もう本当に行く末が恐ろしいパワフルガールズグループだ。)

インタールードトラックとは音楽用語で、間奏を意味し、テーマの間に演奏される比較的短い楽曲を言う。アルバムの箸休め的な役割を果たすであろうインタールードトラックが「韓国ガールグループの新しい概念」というのはどういう意味であろうか?

LE SSERAFIMの1stアルバム”UNFORIGIVEN”では”The Hydra”というメンバーの語りで進行していく曲が四曲目に入っている。楽曲後半では"I'm antifragile"が繰り返され、五曲目のANTIFRAGILEへと続く。アルバムとしての構成をいかんなく発揮した流れと、彼女たちのイメージである強靭さが印象的に伝わるパートだ。

共にHYBE傘下であるLE SSERAFIMとNewJeansの異なる魅力が"The Hydra"と"Get Up"を通じてはっきりと現れそうである。

⑤神秘的シンセサウンドが際立つ、今作のエピローグ曲「ASAP」

ASAPはas soon as possible(できるだけ早く)を省略した語。エピローグとは詩歌・小説・演劇などの終わりの部分のこと。以上のことを踏まえると、それまで収録された5曲とは一線を画したサウンドで、次回以降の作品が待ちきれなくなる(ASAPカムバして!という気持ちになる)ような楽曲になると予想。
少女の急くような気持ちが投影されるASAPという言葉と、神秘的なシンセサウンドからは大人になりゆく「少女の儚さ」のエピローグ的な刹那が刻まれているように考える。大人になりたい少女が迎える瞬間を、音楽として引き伸ばしてイメージさせるような曲で、コンサートでは中盤から終盤へ向かうために会場の雰囲気を一旦クールダウンさせる曲になると予想。
直前に収録される”Get Up”と通して聴くことで、NewJeans、ひいては韓国ガールグループの全く新しいアイドル像がそこに広がっているのでは無かろうか。
P.S.今日公式が投稿したティーザー動画のBGMがどうやらこの曲らしい。ハニの「Just for a minitue(ちょっと待って)」の後ろにはキャラクターのようなボイスで「TikTok(?)」という声がループしている。確かにここからは神秘的かつ浮遊感が漂っている。

まとめ

2022年7月22日からのたった1年間で、K -POPの革命児の地位を築いたNewJeansの最新作のタイトルは"Get Up"になった。Wake Up(目を覚ます)時を経、全世界での認知度・カリスマ性を身につけた5人がついにGet Up(起き上がる)時を迎えた。NewJeansの本当の快進撃はここから始まるのかもしれないという予感さえ感じる。
Y2Kの到達点にもなるであろうPOWER PUFFGIRLSとのコラボレーションMVが予定されている「New Jeans」、1st EPとは対称的な概念を打ち出す「Super Shy」、「ETA」、「Cool With You」。韓国ガールグループの新しい概念ともいえるインタールードトラック「Get Up」。神秘的シンセサウンドが際立つ今作のエピローグ曲「ASAP」の6曲がBUNNIESを待ち受けている。
2nd EPの6曲を含めると、オリジナル楽曲が12曲となり、今後徐々にコンサート活動も増えてくることが予想される。日本では8月にサマーソニック東京への出演も決定しており、今後はステージ上に立つ彼女たちの活躍にも一層目が離せない。

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