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駅が印象的な映画 | MAY | 12Months Movie

その月に合わせたモチーフが印象的な映画を、映画好きのイラストレーター3人が12ヶ月間に渡ってご紹介する12Months Movieです。

2回目の5月は、気候が良くおでかけが楽しい季節に合わせて駅が印象的な作品をご紹介します。残念ながら今年は旅行や移動が難しいのですが、おうちで映画という旅を楽しみましょう。

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君の名前で僕を呼んで (2017) 
監督 / ルカ・グァダニーノ

Eika  : 1980年代のイタリアのとある避暑地。ティモシー・シャラメ演じるエリオットの家族の元に、大学教授であるエリオットの父親に招待されたアーミー・ハマー演じるオリヴァーがアメリカからやってきます。お互いに惹かれ合い、心を重ねる一夏のエピソードを美しく描いたラブストーリーです。

水面に映るきらきらの夏の日差し、緑が生い茂る庭(庭なのか?どこからどこまでが家の敷地なんだ?と、とにかくゆったりとした空間)、ピアノの音色が響く静かな夜、ぜひ招待してもらいたい並ぶ野外食卓… アーミー・ハマーの超短パン… とにかく眼に映る全ての情景が美しく、見てるだけで心が潤います…

初めての経験に戸惑うエリオットを、神様のように全てを見透かしいい感じにアドバイスをする母親の達観した対応が面白い。全体的にこの家族は実に高貴で、私からするとちょっと思いつかないような時間の過ごし方を覗き見するかんじが面白いです。大学教授の父がエリオットに行う人生のレッスンは、多くのひとが信じていることを言語化するようなものだったのではないでしょうか。忘れがたいシーンです。

駅というと、旅の始まりというイメージです。しかしとっても楽しい時間を過ごしたあとに、それを決定的に終わらせる場所になるのも、駅ですよね。それが痛いほど伝わるシーンで、「私もこの気持ちを知ってる」となりました。

丸ゐまん丸 : 生きている限り、ティモシー・シャラメを観続けることが確定した作品。これほど終わらないでほしいと思う作品も中々ない。ラストの長回しの表情は、永遠に忘れないでしょう。
yuki : ポスターを見ると鮮やかなブルーだけど、映画は胸がキューッとなる色味を感じていたので、この配色、すごくピッタリだと思った!


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ガメラ3 邪神<イリス>覚醒(1999) 
監督 /  金子修介

丸ゐまん丸  
: 『ガメラ 大怪獣空中決戦』(95)、『ガメラ2 レギオン襲来』(96)に続く、平成ガメラ3作目。怪獣映画が持つ「正義の怪獣でも、戦いに巻き込まれた市民の犠牲は許されるのか?」という問題提起に挑戦した意欲作だ。

(大雑把に言うと)人類を守ってきたガメラは1〜2に比べ、凶悪なデザインに変貌していて、当時中学生だった僕は驚愕した。1に登場し、3では大量発生した殺戮生物「ギャオス」との戦いで、開始20分で渋谷が壊滅。1万人以上の死傷を出す未曾有の大災害に。前半は特に「人の死」をリアルに描いていて、ガメラは正義の怪獣であるという固定概念を丁寧に崩してくれる。

ギャオスの変異体「イリス」との最終決戦は「京都駅」。その後ブレイクする前田愛さんが演ずる綾奈を体内に取り込まんとするためだけに京都に来てしてしまうし、ついでにガメラも来る。なんて迷惑な話だ!格子状の美しい京都駅が再現されたミニチュアはまさに芸術。これがドカンドカンと破壊されていく様は圧巻。今ではなかなか出来ない撮り方だけれど、3作すべての特技監督を担った樋口真嗣監督は後に『シン・ゴジラ』(16)で大いにその技術を活かしているため、特撮映画史の重要な1本だったことは間違いない。

その他に、主演の中山忍さん(中山美穂さんの妹)はじめ、今でも活躍中の役者陣の若かりし姿にあっ!と驚いたり、98〜99年の日本描写(渋谷のKENWOOD看板やドリームキャストが出てくる)は歴史映像としても楽しめる。GYAO!で5/31まで誰でも観れるので、ぜひ観てみてください。
しかしながら、作品選定。ほかのメンバーとの振れ幅がすごい。これも12MMの楽しみかたの一つですね。

ガメラ3邪神<イリス>覚醒 (GYAO!)

yuki : ゴジラすらシンゴジラしか見たことない私。でもイラストの迫力に駅がどうなってしまうのか気になる!
Eika : 平成ガメラだ!私、空中決戦しか観たことないと思う…自分の知ってる場所が破壊されまくる映画って不思議な高揚感あるよね。イラストがすごく良くて、送ってもらったときテンションあがった!



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ビフォア・サンライズ (1995) 
監督 / リチャード・リンクレイター

yuki  :  
列車の中で熟年夫婦のうるさい喧嘩が響き渡る。うるささに耐えきれず女性は席を移動し、移動先で隣に座っていた男性と他愛もない会話がはじまる。2人はすぐに意気投合し男性の目的地のウィーンにあっという間に着いてしまうが、男性はこの出会いを終わらせて後悔したくないと「ウィーンで降りて観光しないか?」と誘い、勢いで2人はウィーンの駅へと降り立つのだった。そして、今まで話に夢中でお互いの名前も聞いてなかったことに気づき、フランス人の女性のセリーヌ(ジュリー・デルピー)とアメリカ人の男性のジェシー(イーサン・ホーク)は、駅で改めて自己紹介して、2人の一夜限りのウィーン旅行が始まる。

映画的でロマンチックな題材なのに、とてもリアルな会話劇。というギャップのある映画ですが、会話の中から2人のいいところも嫌なところも見えてきて、実際にいるカップルのデートを覗き見しているような感覚がとても面白い!2人が「非日常」として一夜限りの関係を楽しもうとしつつも、他にはない「運命」と思えてやまないジレンマがもどかしくって、映画自体は山も谷もないのにドキドキが止まりません!

2人にとって「駅」は出会いの場所であり、別れを意味する場所でもある。距離が近づくに連れて、残りの時間は減っていく。そこへどうやって向かうのか。旅できない今だからこそ、感情移入して楽しみたい1本です。

Eika : 「映画自体は山も谷もないのにドキドキが止まらない」、まさにそれ!ビフォアシリーズの二人のおしゃべり、1日中聞いていられる気分。私は最後のビフォア・ミッドナイトもだいすき。
丸ゐまん丸 : これを機に鑑賞して、大悶絶。2人の高レベルすぎる会話・長回しカットの連続で瞬時に取り込まれました。観終えたあとに邦題が『恋人までの距離』と知ってまた戦慄。続編もすぐに観ます!

来月は傘がモチーフの映画をご紹介します!毎月12日の更新です。お楽しみに!

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