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訴えかけてくる彫刻たち【ヴァンジ彫刻庭園美術館】

彫刻はどこか難しくて‥ずっと抱えていた不安を一気に取り払ってくれたのが、イタリアの現代具象彫刻家のジュリア―ノ・ヴァンジ(1931年~)の彫刻です。
先日、その彼の作品だけの為だけに作られた【ヴァンジ彫刻庭園美術館】へ行ってきました。

静岡県長泉町の「クレマチスの丘」にある【ヴァンジ彫刻庭園美術館】は、現代イタリアを代表する具象彫刻家と知られているジュリアーノ・ヴァンジの世界唯一の個人美術館として2002年に開館しました。
眺望に恵まれた庭園、スタイリッシュな大空間、それを結ぶ変化ある順路が、作品を生き生きと存在させるステージとなっています。

ジュリア―ノ・ヴァンジは1931年、イタリアのフィレンツェで生まれ育ちました。
古代~ルネサンス期の彫刻を身近に感じながら、フィレンツェで彫刻家を目指していました。やがてブラジルへ移り、人間の内側を表すものとして具象の可能性を見出しました。
極限状態の人間の姿を鋭くとらえた作品、伝統技法(象嵌)と木、石、金属などの異なる素材の特徴を生かしながら、神秘的で重厚な芸術性が宿る造形、色彩への表現を試みた作品。
常に新しい課題に取り組みながら、より深く具象表現と向き合い、様々な人間像を生み出しました。その挑戦は今も続けられています。

私達に生をきり開かせるこのエネルギーが
尽きることの無い情熱をかきたて
新しい形の探求を通して
世の移ろいを見定めることに
私の人生はささげられました

ジュリアーノ・ヴァンジ 2002年4月
(美術館パンフレットからの抜粋)

最初に出迎えてくれたのは、見出し画像の『壁をよじ登る男』1970年。
材料はブロンズ、アルミニウム、ポリクローム。

必死に壁をよじ登ったところのようです。
あなたは誰?どこから来た?逃げてるの?
何を言ってるの?何をしたいの?

矢継ぎ早に、言葉がでてきます。
まるで私が考えるより先に、『男』のほうから訴えかけられているように感じます。


次の『男』は、小さな箱の中から私に何かを訴えます。
そんなところに閉じ込められて、どうしたの?と私は問かけます。

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『立方体の中の男』2006年 白大理石

濃厚なキスシーンのこちらの『男』は、目を見開いて何かを言いたそうです。

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『2つの頭部』1973年 ブロンズ


目立つ色の服を着ているのに、どこか沈んでいるような『男』。

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『紫の服の男』1989年 木彫、ポリクローム


親子?『男』の笑みには、何か隠されているような気がします。

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『男と子供』1973‐74年 ニッケル、銀合金


どうしたの!今、出してあげるから!

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『チューブの中の女』1967-68年 ブロンズ


外から中を伺っている『男』。何も語らず、ただじっと中を見ている様子が少し不気味に感じます。

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『立っている男』2002年 ブロンズ


広々とした庭園の池の真ん中で、気持ちよさそうに寛ぐ『女』。

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『水を着る女』1994年 ブロンズ


夜に見たら木々と同化しそうな、穴の開いた木から顔を出している『男』。

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『穴のあいた木と男』1994年 スチレンスチール、ブロンズ


私達を見下ろしていた『男』。だれかを探している?

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『乗り出している男』2002年ブロンズ

作品の題名の大部分が『‥‥している男』『‥‥している女』。
形容詞が殆ど使われていないシンプルな題名と具象作品が、余分なことを考えないからなのか、作品に深く問いかけ、そして問いかけられているように感じられます。

大空間の室内に加え、庭園には四季折々にクレマチスとバラが咲き乱れ、気持ちが解放されるような、のびのびできる美術館となっています。
また、ミュージアムショップ、花屋、本屋、レストランも併設されており、子どもから大人まで誰にとっても心地良い空間が演出されています。

だれでもが、それぞれに感じ対話できる【ヴァンジ彫刻庭園美術館】。お時間があったら、是非!足を運んでみてください。

最後まで読んでいただき有難うございました。☆彡

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